I神戸の優勝を見届けた女獅子たち 屈辱を胸にホーム最終戦へ

手の届かない場所から見上げた景色に、冷酷な現実を突きつけられた。2026年5月3日にノエビアスタジアム神戸で行われたWEリーグ第20節、INAC神戸レオネッサ-AC長野パルセイロ・レディース。最下位のAC長野は首位のI神戸に1-5と圧倒され、目の前でI神戸に4シーズンぶりの優勝を決められた。歓喜と屈辱――。そのコントラストを目に焼き付けたAC長野の選手たちは、何を胸に刻んだか。5月10日は今季ホーム最終戦。このままシーズンを終えるわけにはいかない。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
開始早々から順位の差を痛感
最後は戦意さえも失って5失点
首位と最下位という決定的な立ち位置の違いに加え、試合会場のノエビアスタジアム神戸はAC長野にとって「なでしこリーグ」時代から未勝利の鬼門。この日は引き分け以上で優勝決定の可能性があった相手にチャレンジャーとして臨んだはずだったが、結果は1-5での大敗だった。
鬼門は鬼門のまま。現在の順位が示す差を痛感するしかなかった。

開始わずか2分で先制点を献上。山なりのクロスに対してGK垣内愛菜の手が届かず、落下点で待ち構える相手に押し込まれた。
19分にもロングボールで一気に攻め込まれ、サイドでの1対1も簡単に突破される。折り返しからのシュートはDF岩下胡桃が決死のゴールカバーで阻むも、こぼれ球への反応で上回られて失点。序盤で0-2とリードを広げられた。

「個人のミスから失点まで繋がっていて、周りからしたら安い失点に捉えられがちだと思う。INACさんはそれを点にしてしまうのが、優勝できる要因でもあると思う」
隙を見せるAC長野と、それを見逃さないI神戸――。古巣対決となったMF菊池まりあが言うように、それこそが首位と最下位の差なのだろう。

自陣でパスミスをかっさらわれて3失点目を喫し、5失点目に至っては戦意さえも失なっているように見えた。クロッサーに対して体も寄せず、ただ足を出すだけの無抵抗ぶり。チャレンジャーにふさわしくない姿で、引き立て役に回るかのようだった。
KINGDOM パートナー
髙橋が復帰弾、攻撃は手応えも
最多失点記録更新の守備に課題
90分間を総じて見れば、手も足も出なかったわけではない。0-3で迎えた61分には、DF知久奈菜穂の左クロスからFW髙橋雛が右足で一矢報いるボレーシュート。左膝前十字靭帯損傷の大ケガから復帰して6試合目で今季初ゴールを決めた。

「クロスへの入り方は苦手としていたので、カツさん(勝又慶典コーチ)に教えてもらっていた。回数をやっていくうちにつかんできたところはある」と明かす髙橋。コンディションが万全ではない中でも課題に注力してきた成果が実った形だ。
チームとしても攻撃で見せ場は作れていた。4-3-3の布陣を敷くI神戸に対し、アンカー脇のスペースを活用しながらテンポよく前進。2トップの一角を担った髙橋は「試合を重ねるごとに自分たちのリズムの時間は増えてきている」と手応えを話す。

コンディション不良で欠場が続いていたキャプテンのMF稲村雪乃も72分からプレー。得意のドリブルで局面を打開しようと試みたが、すでに1-4と差が開いており、流れを変えるのは困難だった。
前節のサンフレッチェ広島レジーナ戦と同じ1-5のスコアで2試合連続の大敗。第20節終了時点で53失点を喫し、リーグ最多失点記録を更新した。どれだけ攻撃面で成長しても、守備の隙をなくさないことには勝機は遠のくばかりだ。
「自分たちに矢印向けて」
悔しさ胸にホーム最終戦へ
I神戸は、リーグ発足1年目以来となる4シーズンぶり2度目の優勝。ホームで歓喜の輪を広げた。その傍らで選手たちを集め、小さな輪を作ったAC長野の廣瀬龍監督は、「INACの優勝した姿をよく見ておくように」と選手たちに伝えたという。

古巣の戴冠を見届けた菊池は、「めちゃくちゃ悔しかった」と唇を噛む。歓喜に酔いしれるホームチームを横目に、かつて苦楽を共にしたI神戸サポーターのもとに挨拶へ向かった。
「自分自身もそうだけれど、ミスが多くなったときに人に矢印が向いてしまうことが多々あった。このメンバーで戦えるのも残り2試合なので、こういうときこそ自分に矢印を向けたい」

24年8月に行われた第3節から16試合未勝利。勝利の喜びから見放されて半年が経つ。I神戸戦のように安易なミスが命取りとなった試合も多く、チームメイトに矢印を向けたくもなるだろう。
それでも菊池の言うとおり、このメンバーで戦えるのもあと2試合しかない。
12チーム中最下位。残り2試合で11位のちふれASエルフェン埼玉とは勝ち点差6で、得失点差も21と大きく開いている。最下位でのフィニッシュは避けられない状況だが、復帰後初ゴールを決めた髙橋は「最下位にいるのは理由があると思う。それをしっかり受け止めて、悔しさをぶつけたい」と力を込める。

5月10日は5位のマイナビ仙台を迎えてホーム最終戦。23-24シーズンから3年間指揮した廣瀬監督を筆頭に、コーチ陣もそろって退任が発表された中で、最後くらいは笑って終わりたい。
「ホームでも全然勝てていないし、本当にこれが最後のチャンス。相手どうこうよりも自分たちがしっかり気持ちを出して、勝利を持ってこられるように頑張りたい」と髙橋。苦しみ抜いたシーズンをどう締めくくるか。女獅子たちの覚悟が試されている。
5/10(日)2025/26 SOMPO WEリーグ 第21節 マイナビ仙台戦https://parceiro.co.jp/info/detail/f1zw6Rp8unkx_K-WpZaVhjQyVno0R2NoUndOdldBM09VQklOVnZhX3Y3bG1RNWFiY3JDdDYyUHdnQTg
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