五里霧中に陥ったチーム WEリーグ5年目を最下位で終えたAC長野の課題

最後まで深い霧の中から抜け出せなかった。2026年5月16日に閉幕したWEリーグ。AC長野パルセイロ・レディースは、5年目のシーズンを最下位で終えたばかりか、リーグ歴代最低タイの勝ち点10、歴代最多の55失点と不名誉な記録ずくめの屈辱的な1年間だった。最後の白星は25年8月の第4節。それ以降の18試合は、一度もサポーターに勝利を届けられなかった。低迷の要因を探ると、日々のチームマネジメントのまずさに行き着く。今季の戦いを繰り返さないために課題の本質に迫った。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
追求したスタイルに揺らぎ
ボール保持が手段から目的に
生命線はハイプレスからのショートカウンター。ボールを奪って縦に速く攻め、FW川船暁海やMF稲村雪乃、MF菊地まりあらの個人技を生かして仕留める。その好循環が回った序盤戦は第3節から2連勝。12チーム中4位と好スタートを切った。

就任3年目を迎えた廣瀬龍監督の下で追い求めてきた不変的なスタイル。しかし、それを貫けない弱さがチームの歯車を狂わせた。
第5節の日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦は1-6で大敗。昨季のリーグ王者に力の差を見せつけられた。その後も下位相手に勝ち点を取りこぼし、スタイルが揺らいでいった。
「チームとしてどう点を取るかはずっともがいていた」とMF三谷沙也加。第7節からの5試合はいずれも無得点で連敗。縦に速い攻撃を身上としつつ、よりボールを保持して再現性を高めようとしたが、安易なミスから失点を繰り返した。

ボール保持が「手段」ではなく「目的」になっていた印象が拭えない。GKを交えたり、システムを可変したりしながら保持はできても、前進するという目的を果たせなければ本末転倒だ。そのための技術や判断が伴わず、かえってミスから相手のカウンターを助長した。
自陣で過ごす時間が長くなるほど、ハイプレスからショートカウンターという好循環も回らなくなる。押し込まれる中でクロスやカウンター、セットプレーへの対応といった守備面での脆さが目立つようになり、悪循環に歯止めがかからなかった。

廣瀬監督は「土台ができていないところにいろいろ積み重ねても、やはり崩れてしまう」と振り返り、チームの土台が不完全だったと認めた。
第11節からは10試合連続で複数失点。4失点や5失点といった大量失点も珍しくなかった。失点する形や時間帯に共通点があるわけではなく、「(失点が)同じようなシチュエーションではないことが問題」とベテランのDF奥川千沙。選手たちは明確な課題さえ見つけられず途方に暮れた。
KINGDOM パートナー
主力の流出と離脱で戦力ダウン
若手の成長も促せないまま
そもそも台所事情が芳しくなかったのは明白だ。
前キャプテンのMF伊藤めぐみと元日本代表のDF坂井優紀がシーズン前に退団。シーズン中も主力のDF橋谷優里が海外移籍し、精神的支柱を相次いで失った。

開幕前にはDF久保田明未が左膝に大ケガを負い、貴重な左利きのサイドバックを欠くことに。キャプテンの稲村は慢性的な腰痛に苦しんで出場時間を伸ばせず、コンディションが整わないままピッチに立つ機会も多かった。
移籍やケガは避けられない側面もあるが、問題は補強や底上げによって穴を埋められなかったことだ。リーダー格の不在や選手層の薄さを言い訳にする空気も現場に広がり、チームの成長を阻害した。

近年のWEリーグは若年層の台頭が目覚ましい。第21節のAC長野戦で優勝を決めたINAC神戸レオネッサも、その試合のスタメン11人の平均年齢は24.9歳の若さだった。
「INACのセンターバックの選手(太田美月/19歳)もそうだし、ほかのチームの若手を見ると、『自分がやらなきゃ』という責任感が強いと思う。そこで『やらされている』となったらきついだけなので、そういう方向にどう持っていくかはずっと考えていた」
チーム最年長の三谷が言うように、若手の「やらされている」感は練習から見て取れた。それは、指導陣のマネジメント不足も大きな要因だろう。リーグ戦の連敗が止まらないため、カップ戦で若手を起用して経験を積ませる余裕もなかった。

今季は固定化されたメンバーの中で配置転換が繰り返された。それは、若手を含む出場機会の少ない選手たちへの信頼度が低いことの裏返しでもある。出番を与えられてもパフォーマンスが悪ければすぐに交代させられ、翌節はベンチやメンバー外に――。選手たちのモチベーションを上げ、チームの成長を促すマネジメントだったのか疑問符が付く。
監督の役割が減って迷走
植え付けられなかった厳しさ
現場の指導態勢にも問題があった。
廣瀬監督は就任当初こそ自ら指揮を取っていたが、1年目の途中からコーチ陣に主導権を委ね始めた。東京・帝京高時代の教え子である諸町光彦コーチらに経験を積ませ、指導者の成長にも目を向けてきたのだ。
その割合は年々増え、3年目の今季は監督としての役割を失いつつあった。その割合に比例するかのようにスタイルの揺らぎが大きくなり、志向と現実がかけ離れていった。

「私の役割が1、2年目に比べて減ったのは事実。選手たちに厳しく言うこともあったけれど、(課題に)気が付いていても(直接指導は)少なくなっていた」
「私が言った方が選手の成長が見えたかなという気持ちもあった。(コーチ陣に)任せた以上、途中から変えることができなかったのは私自身の反省」
今年4月に70歳を迎えた指揮官。帝京高では高校サッカーの名将・古沼貞雄監督の後を継ぎ、厳しくも愛ある指導でJリーガーを輩出してきた。J1名古屋グランパスのMF稲垣祥はその筆頭株で、34歳となった今でも第一線で活躍している。

当時の指導法がそのまま通用するとは限らない。時代の潮流の変化もあれば、男子と女子の違いもある。
廣瀬監督は女子選手を指導する上で厳しさの塩梅には細心の注意を払ってきた。ただ、今季の成績や内容を見る限り、厳しさが足りなかったと言わざるを得ない。
「ワールドカップのメンバー発表で長友(佑都)選手が選ばれた。森保(一)監督はチームを引っ張る経験者として入れたんだと思うけれど、うちにはそういう選手が欠乏していた。チームを愛して、何か足りないものがあれば指摘し合うというのは少なかったと思う」

来季は廣瀬監督を始め指導陣が総入れ替えとなる。今季の成績と課題を正面から受け止め、一から出直さなければチームは生まれ変われないだろう。
悔しさにまみれて応援を続けたサポーターに何を届けるか。クラブの姿勢が問われている。
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