終焉を迎えた一つの時代 勝久マイケルが残した愛と感謝と成長と

2026年5月22日午後3時。そのニュースは瞬く間に拡散され、受け止めた人たちの間に驚きと悲しみ、そして感謝の思いが広がった。信州ブレイブウォリアーズを2018-19シーズンから8シーズンにわたって率いた勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)と、チームの大黒柱として通算9シーズンを信州でプレーしたウェイン・マーシャルとの契約満了を伝えるリリース。来季からのBプレミア参入を前に、一つの時代が幕を閉じることになる。
文:芋川 史貴
KINGDOM パートナー
追求した成績とカルチャー
“伝説トリオ”が成長を後押し
2025年11月1日にクラブ設立15周年を迎えた信州ブレイブウォリアーズ。前身のbjリーグ時代を含めて6人のヘッドコーチがチームの指揮を取ったが、勝久HCが率いた8シーズンという年月は突出して長い。勝久HCが追求し、選手やブースターと共に築き上げてきたカルチャーは、クラブの歴史において大きな意味を帯びることは間違いないだろう。

千曲市戸倉体育館から始まった歩みは、ことぶきアリーナ千曲、ホワイトリングと大きな舞台にステップアップ。20-21シーズンには初のB1昇格を果たし、4シーズンにわたって国内最高峰での戦いも経験した。壁にぶつかる時もあったが、常に成長を続けたチームの中心には勝久HCとマーシャルの存在があった。
横浜ビー・コルセアーズと島根スサノオマジックでヘッドコーチを務め、栃木ブレックス(当時)のアシスタントコーチを経て信州の指揮官に就いた勝久HC。信州からのオファーを受諾した最大の理由は、アンソニー・マクヘンリーとマーシャルのコンビを作りたかったからという逸話は信州ブースターの間では有名な話だ。
17-18シーズンから在籍していたマクヘンリーと、勝久HC就任と同じタイミングでチームに加わったマーシャル。2人の大黒柱を中心に規律正しいディフェンスチームを構築しながら日々成長の精神を根付かせ、就任1年目でB2優勝を達成した。

1年目から成功を収めることができた背景には、勝久HCの手腕だけでなく、プロアスリートとして優れたメンタリティを持つマクヘンリーとマーシャルの存在が大きかった。彼らの姿勢は伸び盛りの若手選手の手本にも刺激にもなり、栗原ルイスや飯田遼、大崎裕太、三ツ井利也らの成長を後押し。日本代表を背負うまでになったジョシュ・ホーキンソンや熊谷航ら多くの選手たちが精神を受け継ぎ、より高みへと飛躍していった。

「『信州に行ったら成長できる』『信州のバスケを学びたい』というレピュテーション(評価)を得て、日本代表に選ばれるような若い選手が来て成長してくれた」
勝久HCは信州での8年間をそう振り返り、自分自身が果たした役割に光を当てた。
KINGDOM パートナー
心を込めた短いハグ
2人が語る12年間の愛と感謝
今季最終戦となった5月17日のプレーオフ3位決定戦、横浜エクセレンス(EX)とのGAME2。敗色濃厚となった試合終盤、勝久HCとマーシャルが短くハグをするシーンがあった。これまでのゲームでは見ることのない印象的な場面だった。

「大きなシーンでもなく、本当にささいに愛していることを伝えた」
試合後の記者会見では真意を語らなかった勝久HC。今になって思えば、その光景はこの日のリリースの伏線になっていたのかもしれない。
勝久HCとマーシャルの出会いは2010-11シーズン。その時は大阪エヴェッサでチームメートだった。先に現役引退した勝久HCが指導者に転じた後も多くのシーズンを同じチームで過ごし、マーシャルのバスケットボールIQや遂行力の高さ、優れた人間性を挙げて「世界一のお気に入り選手」と信頼を寄せた。

「素晴らしいコーチだと思っているし、だからこそ彼の下でやりたいと思い続けてきた。一緒にサクセスできたことは素晴らしいと思う」
マーシャルは、勝久HCとの歩みをそう振り返る。横浜EX戦でハグをしながら「素晴らしい年だった。チームとしてすごくよく進んだ」と会話を交わしたことを明らかにし、苦楽を共にした仲間との絆をかみ締めた。

勝久HCは、契約満了を伝えるリリースの中で「この節目はWayne(ウェイン)と一緒の時間の締めくくりでもあります」とコメント。2人の進路は明らかでないが、2人の特別な関係が終わりを迎えることを示唆した。
「昨シーズンが終わった後、彼(マーシャル)と『たぶんこれ(翌シーズン)がラストダンス』と話した。(今シーズンは)その話を考えるだけで泣いてしまった。ずっと話したかったことを話すことすらできないほどの感情があった」
8年間の歴史踏まえて
クラブが描く未来図は
今季在籍した14選手のうち9選手が契約満了などでチームを去ることが発表されている(5月22日現在)。勝久HCに加え、多くのスタッフ陣も今季限りでチームを離れることになり、チームを刷新して来季のBプレミアに臨もうとするフロントの意向が伝わってくる。
勝久HCやマクヘンリー、マーシャルといった中心選手たちが築き上げきたカルチャーが継続されるのか。これまでと違う風を吹かせる指導陣や選手たちによって新たなチームとして生まれ変わるのか。その未来図は、まだ茫として見えてこない。

「8年間の中でウォリアーズをさらに根付かせることができたと思うし、ファンの人数も、スポンサーも増えて認知度も高まった。B2でも編成費や予算が真ん中かその下ぐらいだったチームが(来季は)プレミアにいる。8年前とは全然違う場所にチームはいる」
勝久HCは誇らしげにそう語る。

新しいチームがどのような道を進もうと、その道は勝久HCらが築いた歴史の先につながっていることは間違いない。
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/club_detail/?TeamID=716&tab=1
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

















