「走る長野」へ変貌したチーム 意識改革の成果示す最終節へ

走れナガノ――。J3のAC長野パルセイロが、この2カ月で走るチームに変貌した。シーズン途中の2026年3月末に就任した小林伸二監督は、週1回の走り込みと筋力トレーニングを徹底。選手たちは鍛錬の成果を試合で発揮するようになり、J2のチームが混在する百年構想リーグで格上の藤枝MYFCとRB大宮アルディージャを撃破した。EAST-Bグループ首位のJ2ヴァンフォーレ甲府をホームに迎える5月23日の地域リーグラウンド最終節を前に、強くたくましくなったチームの変化に光を当てる。

文:田中 紘夢


大宮を打ち破った逆転劇
強度を落とさず走り勝つ

アウェイで大宮に挑んだ5月17日の第17節。昨季のJ3で19位に沈んだAC長野が、昨季J2で6位に入ってJ1昇格プレーオフに進んだ大宮を相手に2-1の逆転劇を演じた。

当日は気温33.7℃の真夏日。前後半の途中に飲水タイムが設けられた。9,828人が集った敵地の熱量も相まって前半は押される展開に。それでも「後半に僕たちが落ちるのか、大宮が落ちるのか。そこはやれる自信があったし、『チャンスだな』というくらいの感覚だった」とDF田中康介は振り返る。

61分にセットプレーから先制されながらも、71分にMF藤川虎太朗、85分にMF樋口叶と交代選手がゴールを決めて逆転。後半に足がつる選手が続出した大宮に対し、長野は誰一人としてつらなかった。チームとして走り勝った印象が強い。

本橋孝則フィジカルコーチによると、選手の走行距離だけを見れば大宮の方が上だったという。それでも長野が走り勝ったように見えたのは、マイボール時のDPM(Distance Per Minute=1分間あたりの選手移動距離)が高かったからだ。

とりわけ後半はマイボール時のDPMが激減した大宮に対し、長野はむしろ増加。交代選手の助けも得ながら、最後まで強度を落とさなかった。対する大宮は相手ボール時のBPMが激増し、守備に追われて攻撃でパワーを発揮できなかったとも読み取れる。

マイボール時のDPMが高いということは、それだけ攻撃でアクションを起こせているということだ。「ボールを持ったときに走れているのはすごく成長した」と小林監督。本橋フィジカルコーチも「特にカウンターの時に『ここで前に出るんだ』というのは、体で覚えてきたと思う」と手応えを話す。

「ここぞ」で加速
大卒コンビもハイプレスの核に

小林監督によるチームづくりがスタートした3月末以降は、週1回の素走りに加え、より広いコートでの練習を重ねてきた。藤本主税前監督体制と比べ、走行距離やスプリント回数に大きな差はないが、量をこなした上で質を高めてきた印象だ。

本橋フィジカルコーチは「時速7km以下のジョギングの割合が増えている」と明かす。それは運動量が減ったわけではなく、「動きのメリハリが見えるようになってきた」から。単純に持久力が上がったこともそうだが、守備でもボールの奪いどころが明確化しており、「ここぞ」という場面で加速してアプローチができている。

今季はキャンプから若手主体で筋力増強にも励んできた。重量系のトレーニングで速筋を鍛え上げ、アプローチの速度の向上にもつなげている。

それが顕著に現れているのが、右サイドハーフの野嶋圭人と右サイドバックの渡邊禅の大卒新人コンビ。若さゆえの思い切りも備えた2人が、ハイプレスを支える核となっている。加入当初と比べて体つきも一回り大きくなった印象がある。

監督交代後は若手に限らず、チームとして週1回の筋力トレーニングにも励んでいる。当初は時速15km前後で行っていたペース走も、1カ月が経過してから時速20km以上のシャトルランへ。持久系から瞬発系に変わってきた。今は段階を追って強化に励んでいる最中だ。

チーム全体で進む意識改革
首位相手の最終節でも成果を

フィジカルベースを高める中で、個々の意識も変わりつつある。毎週のオフ明けに素走りが待っており、身構える選手も増えた模様。それは選手だけでなくスタッフも同じ――と本橋フィジカルコーチは言う。

「アウェイの試合で用意する弁当は、それまでバスで食べていたものをロッカーに用意して、ダウンが終わったらすぐに補給できるようにした。特にゴールデンウィークは連戦だったので、1分、1秒でも早く回復させるためにスタッフの意識も変えた」

普段のトレーニングでも補食用の弁当を持参する選手が増えてきた。ベテランの附木雄也が習慣にしていた取り組みを見習って始めた選手もいる。

本橋フィジカルコーチが「一番変化がある」と太鼓判を押すのは、34歳でチーム最年長のMF近藤貴司だ。衰え知らずのスピードスターについて、「GPSのデータを見ても運動能力の高さはあるし、今季はスプリントをより高い次元で繰り返せるようになった」と強調する。

近藤と左サイドでコンビを組む27歳の田中は、「自分が良いプレーをしても、(近藤)貴司くんがもっと良いプレーをしているので…」と感嘆する。近藤の存在はチームの指標となっており、ミーティングでもプレスの見本として映像が流されているという。

5月23日に対戦する甲府は、高い走力と堅固な守備ブロックをベースにグループ最少失点を誇る強敵だ。

2月の前回対戦では0-2で敗れたが、本橋フィジカルコーチは「あれから自分たちは積み上げてきて良い方向に向かっている。どれくらい通用するかは楽しみ」と力を込める。

勝てばグループ最下位を脱して地域リーグラウンドを終えられる可能性もある一戦。“走る長野”の成果を示すことができれば、PK勝利を含め今季4度目の格上撃破も不可能ではないはずだ。


5/23(土) AC長野パルセイロ vs ヴァンフォーレ甲府 ホームゲーム情報
https://parceiro.co.jp/info/detail/5T0BdNmeSRWIz1VYqznQCXdTOGFOMFdNRTJzNU1ZYXh2Z2JMWFRhTkprTjBoSG1iS2tlbTRObkFrNjQ

クラブ公式サイト
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