AC長野レディース新指揮官が手がける“飴とムチ” 開幕戦で「出し切る」強さを

WEリーグ開幕戦を前に「完成度は6割」と控えめに語ったAC長野パルセイロ・レディースの中村敦新監督。一方で、準備段階でやれることはやりきったという手応えも見せる。連日の2部練習で量をこなし、質を高めるために1週間のルーティーンも工夫してきた。昨季のWEリーグで最下位に沈んだチームを、目標とする8位以上に引き上げられるか。2026年8月23日、アウェイで行われるマイナビ仙台との開幕戦で今季のチームがベールを脱ぐ。
文:田中 紘夢
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ジムとグラウンドで2部練習
腕立て伏せをさせる“趣味”も
「『どこまで行けるか』という線引きとか塩梅は早くつかみたい。それさえつかんでしまえば、あとは同じサッカーだから」

女子チームを初めて率いることになった中村敦監督。当初は様子を伺うような口ぶりだったが、いざ練習が始まれば容赦はしない。
プロ契約の選手は午前にジムで筋力トレーニングを行い、午後はグラウンドで全体練習へ。仕事とサッカーを両立するアマチュア契約の選手も、全体練習後にジムで体を鍛える。例年にないハードなスケジュールだ。

ボールを使った練習の合間にも、ちょっとした筋トレが挟まる。ゲーム形式の練習で負けたチームは腕立て伏せの罰ゲーム。サッカー界ではよくある光景だが、中村監督の基準は一段と高い。地面にアゴをつけるのがマストなのだ。
「あれは趣味。サッカー選手は腕立て伏せに弱いので…。1年後にはみんな強くなっているんじゃないか」
冗談なのか本気なのかは分からない。“悪趣味”と受け止める人もいるかもしれない。ただ、何事も妥協しない姿勢は見て取れる。

選手たちも必ずしも苦にはしていない。
「最初は毎日体がバキバキだったけれど、だんだん慣れてきた。筋トレもできることが増えているので、成長を感じられる」とキャプテンのDF筬島彩佳。自分に返ってくると信じて、前のめりに取り組んでいる。
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1週間で手がける“飴とムチ”
出し切るための仕組みづくり
“飴とムチ”のバランスにも配慮している。
例えば開幕戦を迎える今週は、月曜日にチームを立ち上げ、火曜日に強度を上げて水曜日のオフへ。木曜日から3日間で試合に向けて調整し、日曜日にアウェイへ乗り込む流れだ。

週半ばにオフを入れるチームは多くないため、“中村流”と言えるのかもしれない。
「強度を上げた次の日に普通の練習をやっても、人間なので走れないところはある。次の日は完全にオフにするか、リカバリーくらいにしてあげないと。みんな休みがあったらうれしいだろうし…」
選手によって感じ方は異なるだろうが、筬島は「強度が高い日の次にオフがあると頑張りやすい」と前向きに捉えている。今週の水曜日の練習では、3対3のゲームで白熱した攻防が繰り広げられた。

ただし、無条件でオフを与えるわけではない。そもそも水曜日をオフにしているのは、火曜日に「すべてを出し切れ」というメッセージでもある。指揮官が出し切っていないと判断すれば、オフを返上してトレーニングに充てるつもりだ。
ここで「つもり」と書いたのは、始動日から1カ月半の間で、実際にオフが返上されたことがないから。中村監督は「優しいからね」と笑ったが、「本当はもっとやりたいんだけど…」という本音も。まだまだ手探りで、塩梅を見極めている。
手探り状態のまま開幕戦へ
最後まで出し切る好ゲームを
「完成度は6割。まだまだ理想には遠いけれど、自分が何を求めているのか、選手たちはちょっとずつ分かってきていると思う」

指揮官が求める強度を体現しようと、選手たちから「行け」「球際!」という声が飛び交うようになってきた。「監督が言うよりも選手同士で言ったほうが聞き入れやすい」と中村監督。その人数が1人でも増えていけば、自ずとトレーニングの質も上がってくるだろう。
6割という完成度が示すように、順調な仕上がりとは言いがたい。選手とスタッフが全員そろうまでに1カ月以上かかり、同格のアルビレックス新潟レディースとのテストマッチも雷雨で中止となった。

「どこまで通用するかは手探り」と中村監督が言えば、エース格のFW吉野真央も「チャレンジしたかった思いはあるけれど、それはもう終わったこと。なるべく100%に近い状態に持っていくしかない」と腹をくくる。蓋を開けてみなければ分からないのが現状だ。
とはいえ、昨季の最下位という順位を踏まえても、チャレンジャーであることに変わりはない。開幕戦の相手は昨季5位に躍進したマイナビ仙台。U-20女子ワールドカップの日本代表に選出されたFW津田愛乃音を筆頭に、若いタレントがそろっている。

「個人の能力は相手のほうが上。4:6くらいかな」と中村監督。2021-22シーズンまで5年間マイナビ仙台に在籍していた奥川も、「勢いに乗せると怖い相手」と警戒する。ましてや相手のホームとなれば、厳しい戦いが予想される。
それでも最後の1分、1秒まで出し切れるよう鍛錬を積んできた。中村監督は初陣に向けて、「『あいつらはしっかり頑張ったな』『言ったことをやってくれたな』と。そういうゲームを見せてほしい」と期待を込める。

生まれ変わった女獅子たちは、東北の地で反逆の狼煙を上げられるか。
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