初陣で見えたAC長野レディースの光と影 「挑戦者」の姿勢でホーム開幕戦へ

新戦力の特長も、新指揮官の特色も見せたが、あと一歩及ばず――。AC長野パルセイロ・レディースは2026年8月24日、アウェイでのWEリーグ開幕戦でマイナビ仙台と対戦し、1-2で敗れた。最下位(12位)に沈んだ昨季からの逆襲に向けた一歩目で、昨季の5位を相手に奮闘。初陣で見えた光と影を紐解きつつ、8月29日に控える日テレ・東京ヴェルディベレーザとのホーム開幕戦を展望する。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
ビルドアップから理想的な崩し
「練習でやっていた形が出た」
「思った以上にやれていた。もう少しビビるかなと思っていたけれど…」
WEリーグ初采配となった中村敦監督。戦前は「どこまで通用するかは手探り」と一抹の不安を抱いていたが、試合後は誇らしげな表情もうかがえた。

立ち上がりにビルドアップのミスから先制を許すも、その後は落ち着いてボールを保持しながら前進できた。スコアラーの塩谷瑠南は「練習でやっていた形が何回も出せた」と手応えを話す。
41分にはセンターバックの奥川千沙から、タッチライン際に開いた左サイドハーフの塩谷へ。ボランチの筬島彩佳がワンタッチパスを引き出し、その間に抜け出した左サイドバックの塚崎優璃菜へスルーパスを送る。クロスは相手GKにキャッチされるも、理想的な崩しだった。

2トップのマイナビ仙台レディースに対し、4バックから3バックに可変して数的優位を作る動きはスムーズだ。サイドバックとサイドハーフも内側と外側を使い分けるなどしてローテーション。プレシーズンから培ってきた連動性が垣間見えた。
中村監督は「センターバックとボランチのベテランを中心に、選手たちがしっかりと盛り返して、自分たちがやろうとしていることを体現してくれた」とも評する。

センターバックは31歳の奥川と33歳の橘麗衣、ボランチは29歳の筬島と31歳の三谷沙也加。センターラインに経験者たちが揃い、チームの屋台骨を担っている。20代前半やWEリーグ初出場の選手も多い中で、彼女たちが落ち着きをもたらした。
KINGDOM パートナー
新戦力が見せたそれぞれの武器
常田麻友は双子の妹から連絡も
なでしこリーグ1部から加わった新戦力たちも躍動した。
45+2分には吉野真央のクロスから知久奈菜穂がフィニッシュ。GKが弾いたこぼれ球を塩谷が左足で決めた。

「練習から最後まで詰めるということは言われている。その形が得点に繋がった」と塩谷。岡山湯郷Belleから加わった左サイドハーフは、ストライカーとしてゴール前に飛び込む迫力がある。利き足は右足だが、左足にも苦手意識はない。彼女の特長があらわれたWEリーグ初出場初ゴールだ。
朝日インテック・ラブリッジ名古屋から加わった橘は、センターバックとしてビルドアップに彩りを添えた。20分には右サイドバックにパスを出す体の向きを取りながら、中央に入ってきた右サイドハーフの常田麻友に鋭いクサビ。一気に局面を打開した。

「ボールを持った方が自分たちの時間は作れる。相手も前から来なかったので時間は作れた」と橘。5シーズンぶりのWEリーグ復帰で、守備では強度やスピード感に不安もあったようだ。それでも「前からしっかり限定してくれたので、取りどころが分かってバチっといけた」と好感触を示す。
伊賀FCくノ一三重から加わった常田麻友は、橘ら味方から果敢にボールを引き出した。「自分はスピードや身体能力があるわけではないので、立ち位置や技術のところを意識している」と常田。マイ仙台のブロックの間を突き、右サイドバックの鈴木こなつの攻撃参加を促した。

加入後は本職のボランチから1列上がってサイドハーフへ。360度包囲されるプレッシャーから解放され、より自由に動けるようになった。試合後には伊賀FCくノ一三重で同僚だった双子の妹の菜那から、「できてたね」と連絡が届いたという。WEリーグデビュー戦で堂々たるプレーを見せた。
昨季からの課題も抱えながら
挑戦者の姿勢でホーム開幕戦へ
「よくやったよ」
中村監督はそう選手たちを称えた一方、「もっと高いレベルを経験しないといけない。ちょっとした甘さが失点に繋がることを分かっていない人たちも多い」と厳しい言葉も並べた。

前後半とも立ち上がりに失点。前半は開幕戦特有の硬さが見られ、後半は相手の交代による変化についていけなかった。
「最初は(ロングボールを)蹴ろうと統一していたつもりだったけれど、どこかで『ちょっと繋げるな』という選手もいたりして、バタバタしてしまった」と橘は明かす。意思疎通を図りきれなかった結果、スリッピーなピッチにも苦しんでミスが頻発した。

最下位に沈んだ昨季も、立ち上がりに失点して崩れた試合は多々あった。新加入の橘は「もっと落ち着いてやればいいのに…」と嘆いたが、経験の浅い選手も多いゆえに、試合を重ねながら改善していくしかないだろう。
次節は8月29日のホーム開幕戦。長野Uスタジアムに迎えるのは、“3強”の一角を担う日テレ・東京ヴェルディベレーザだ。力の差があるのは明白で、失うものは何もない。選手も指揮官も「自分たちは挑戦者」と口を揃えている。

「相手をリスペクトしすぎて受け身に回るのではなく、自分たちがやるべきことをしっかりやれるか。長野の皆さんに戦っている姿を見せたい」と中村監督。ここから女獅子たちは千尋の谷を駆け上がる。
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