ダブルキャプテンで新シーズンへ 工藤とスミスが束ねる新生トライデンツ

SVリーグ男子で3年目のシーズンへ臨む信州松本トライデンツのキャプテンに、工藤有史とデイビッド・スミスの2人が就任した。チームで最も長くSVリーグのコートに立ってきた24歳の工藤と、世界トップレベルの経験を持つ41歳のスミス。それぞれの持ち味を出し、互いの足りない部分を補完し合いながら、プレーオフ進出(12チーム中6位以内)の目標へ向かうチームを引っ張っていく。3人の補佐役を加えた5人の“リーダー”が、選手・スタッフ合わせて30人を超える大所帯をまとめていく。

文:大枝 史

足りない経験と実績を補完
多様な文化の違いを強みへ

トーマス・ラーナー新監督を迎え、新体制となった信州松本トライデンツ。SVリーグ男子2026-27シーズンの新キャプテンにはアウトサイドヒッター(OH)工藤有史とミドルブロッカー(MB)デイビッド・スミスの2人が就任した。

「1人ではできないことがあるけれど、2人ならできるようになることもある。しっかり連係してリーダーシップを取ってほしい」と指揮官は期待を寄せる。

新戦力のスミスは世界トップレベルで多彩な経験を積んできた一方、日本のバレーボールや文化については知見が浅い。工藤はスミスのような国際経験は持ち合わせていないが、SVリーグが始まってからの2年間は誰よりも長い時間、コートに立ってきた。

足りない部分を互いに補完し合う関係を作り、チームの団結力を高めていくことが指揮官の狙いだ。

今季は、ドイツ出身の指揮官を含め海外出身者が増えた。ダブルキャプテン体制にした狙いは、そこにもある。

「異なる文化的背景を持つ選手たちが集まると、違いがはっきりと目に留まる。こうした違いこそが私たちの強みであり、そこを認識することが重要」と指揮官は強調する。

例えば得点を決めた時の喜び方だったり、試合に向けた準備の仕方だったり、練習への取り組み方だったり。そうした違いを受け入れ、場合によっては取り入れることで新たな視点を得られる可能性がある。

そうした多様性をまとめていくことは「1人の人間が担うにはあまりにも大きすぎる」(ラーナー監督)からこそのダブルキャプテン体制だ。

キャプテン就任に驚きはなし
練習開始時から固めていた覚悟

大卒3年目となるシーズンを迎える中で新キャプテン就任を告げられた工藤は「前々から『中心になってやってほしい』と言われていたので、あまり驚きはなかった」と振り返る。

キャプテンに就任したからといって、特別な変化はない。それもそのはず、新シーズンに向けた練習を重ねていく上で「今シーズンは、自分が中心になって引っ張っていかないといけないと思っていた」と腹をくくっていたからだ。

「最終的な目標はプレーオフに行くこと。その大きな目標を達成するために、良い時も悪い時もチームがバラバラにならないようにしたい」

工藤は現在のSVリーグ開幕に向けた練習期間よりも、開幕後を強く意識する。それは5勝39敗と苦しんだ昨季の経験を決して無駄にはしないという思いだ。

「試合に出られていない人のモチベーションのコントロールは自分とデイビッドでやらないといけない。誰かが外れてしまうと崩れてしまうと思うので、そこはすごく大事だと思う」

長いシーズンを同じメンバーで戦い抜くことは難しいし、2日間連続で試合を行うサイクルは外国籍選手にとって初めての体験となる。いつ、誰が試合に出場しても強いチームを作っていく上で全員が団結していくことが大切だ。

加えてチーム内での競争が活発であれば緊張感が生まれ、日頃から質の高い練習が可能になる。

プレーオフ進出という目標を掲げ、工藤は新キャプテンとしてチームを束ねていく。

自然体で示すリーダーシップ
若い選手たちの精神的支柱に

同じくキャプテンに就任したスミスは、あくまでも自然体だ。

「自分が果たしたい責任や役割の延長線上にキャプテンという肩書きがあるだけで、チーム内での立ち位置が大きく変わるとは考えていない」と話す。

長きにわたってアメリカ代表でプレーしてきたスミス。その豊富な経験をチームに還元することが、そもそも自らの使命だと考える。

「コート上であらゆる状況を経験してきたから、何が起きても動じることはない。これから成長していく選手たちにとって見本になる役割は肩書きの有無で変わらないと思う」

他の海外組であるオポジット(OP)フィリップ・ジョンは25歳、MBマックレヴィン・ディアリス平は24歳、OHザカリー・ラマは22歳と若い選手が多い。

日本のSVリーグに初挑戦する選手たちの精神的支柱となり、コート内で落ち着きを与えていく。

「そんなにシャイじゃないから、どんどんしゃべって試合を楽しむこととか、楽しそうにやることとか。自分が引っ張っていけたらいいと思う」と話すように、練習から積極的に声を出してチームを盛り上げる。

MB安部翔大は「自分がすごいと思ったことは、身体能力よりもそのメンタリティ。どんなことでも絶対に言う。チームが少し緩んでいる時も、最初に声を出すのはやはりスミス」と明かす。

自然体のままでチームを引っ張っていけるという指揮官の信頼を受けて、工藤と共にチームを導いていく。

より強固な団結へ
5人で挑む新体制

ダブルキャプテン体制に加えて、指揮官はOH藤原奨太、安部、リベロ(L)松尾敬介の3人を補佐役に選出した。その意図について「スタッフを含めて30人を超える大所帯をまとめ上げていくためには、リーダーの立場にいる人間が2人では足りない。グループとして問題解決に取り組んでいきたい」と明かす。

SVリーグ初年度から2シーズンにわたってキャプテンを務めてきた藤原は「人数が多い中で、1人で周りを見るのはやはり難しかった。その経験を無駄にしないように、今まで通りサポートしていきたい」と決意を口にする。

藤原が特に意識するのは監督と選手間のコミュニケーション。

「外国人監督なので、練習メニューの説明でどうしても止まってしまう。それをキャプテンと補佐役の5人がいち早く理解して分からない人に伝えるなど、補佐なりにチームを見ないといけない」と話す。

指揮官はフェイクセットやリバウンドの取り方など、さまざまな新しい練習メニューを組み込んでいる。一度の説明で選手たちが練習内容を理解できていなければ、改めて説明するために練習を中断することがある。

質の高い練習をスムーズに行い、レベルアップに繋げていくための潤滑油となる役割。藤原は立場が変わっても継続していく。

在籍3年目のシーズンを迎える安部は「ボブ(ラーナー監督)が求めているのは練習の量ではなく質なので、そこを追求していくために『全員が全員を支えられるようなチームを目指す』ということだった。そこのきっかけを自分が作って、みんなが真似してくれるようになればもっといいと思う」と話す。

「誰かがやる」ではなく「全員でやる」。

10月24日の開幕戦まで6週間余。キャプテンと補佐役の“リーダー”5人が中心となり、生まれ変わろうとしているチームを強くしていく。


クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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