サイドバックながら2戦連発 AC長野の田中康介が見せた復活劇

決して点を取るタイプではない。むしろクロスを上げてアシストする役割だ。サイドバックながら2試合連続ゴールを決めたJ3のAC長野パルセイロDF田中康介は、「1年に1点取ればいいほうなので…」と驚きを隠せなかった。今季は開幕から先発の座をつかんだが、その後は“負の連鎖”から抜け出せずメンバー外も経験。そこからどう立ち直って今に至るのか――。

文:田中 紘夢

度重なる「試練」を乗り越え
好相性の相手に一矢報いる

「今までも苦い思いをした時に、自分なりにもがいて、乗り越えることで成長してきた。今回もまた一つ成長するための試練だと思っている」

田中康介がそう捉えたのは、第2節のFC大阪戦だ。62分、78分と立て続けに失点に関与し、83分に途中交代。チームは2-4で敗れた。

27歳の彼にとって、三本の指に入るほどの「ひどい」試合だった。それでも成長の糧にしようと励んできたが、そううまくはいかない。第4節のザスパ群馬戦でも自身の左サイドから2失点。FC大阪戦の「試練」から3試合で4失点に関与する形となった。

その後は先発落ちはおろか、メンバー外も経験。負の連鎖が止まらなかった。「オフの時も体は休まっても、心は休まらない感覚があった」と心境を明かす。

捲土重来のきっかけとなったのは、第13節のギラヴァンツ北九州戦だ。

3点を先取される苦しい展開の中、途中出場から試合終了間際に一矢報いる。右サイドから左サイドにパスが流れてくると、田中は左45度の位置で右足一閃。ボールは鮮やかな弧を描いてゴール右隅に吸い込まれた。

「あれはクロスの練習から来ているのかなと思う。左右両方蹴りまくっていて、最近は本当にフィーリングが良い。しっかりボールに力が乗って良いところに入った」

出番に恵まれない中でも、毎日のようにクロスを自主練習。その成果がシュートという形であらわれた。北九州戦では出場した直近4試合で3ゴール目となり、「また力をくれたのかな…」と不思議な縁も感じている。

安藤のアシストから2戦連発
「自分のゴールよりも…」

続く第14節のレイラック滋賀戦で、主力組では10試合ぶりの先発。この日もチームメイトが力をくれた。

1-1の同点で迎えた80分。途中出場のMF安藤一哉が右サイドで仕掛けてクロスを上げる。左サイドバックの位置から大外に走り込んできた田中が、ヘディングでゴール右隅に叩き込んだ。これが決勝点となり、チームは3-1で勝利した。

サイドバックながら2戦連発。「最後まで諦めないとか、手を抜かないところがゴールに繋がった」と振り返ったが、それだけではない。「カズ(安藤)なら絶対に上げてくれる」と味方を信じていた。

アシストした安藤も今季は出番に恵まれず、これが2試合目の出場。田中は自分以上にもがき苦しむ彼の姿を見てきた。

サイドハーフに求められる役割の変化に応じて、安藤はドリブルという特徴を出せずにいた。それに気づいていた田中は、前日に温泉で鉢合わせた際に、こう声をかけたという。

「やっぱり仕掛けてほしい」

「どんどんやってほしい」

その言葉が彼の背中を押したのかもしれない。

投入早々からドリブルで仕掛けた安藤。クロスを上げる際に田中のことは見えていなかったが、「逆サイドから入ってきてくれるだろうなと思っていた」。互いの意思が通じ合ったゴールに、田中はこう価値を見出す。

「アシストがカズなのはめちゃくちゃ意味があると思う。あの言葉を覚えてくれていたかどうかは分からないけれど、僕はやってくれると思っていた。自分のゴールよりもカズのアシストが嬉しいと思うくらい、良いゴールだった」

「仲間や家族の支えは大きい」
妻に課された“ノルマ”も力に

田中も試練を乗り越え、ようやく復活を遂げた。

「やっぱり『人生はこうじゃなきゃな』というか…。人間はマイナスな感情を持ったときに、その状況を変えようともがいて成長する。そうやってもがいた結果が、今に繋がっていると思う」

2024年に加入して以降の5得点には、共通項がある。いずれも逆サイドから走り込んでのワンタッチゴール。「サイドバックだけどあそこに入っていくことで点が取れている」と言うように、大胆な攻撃参加が功を奏している。

田中が安藤の背中を押したように、彼自身も周囲に背中を押されている。出番に恵まれない間も、左サイドでコンビを組んできたMF近藤貴司から「最近調子上がってきたんじゃない?」「もうそろそろだね」と励まされたという。

妻からは「ジムに行きなさい」と助言を受けた。3月に小林伸二監督が就任して以降はチームでの筋トレがあるため、ジムに通わなくなっていた。それでも妻から“ノルマ”を課され、北九州戦の前から実践。筋肉をつけるだけでなく、2戦連発と結果がついてきたのだ。

ともに暮らす犬と猫も、心の支えになっている。「毎日きつい練習から帰ってきた時にも、気を楽にしてくれる」という2匹。普段は犬が猫を追いかけ回しているが、寄り添って寝ることもあるそうだ。そんな姿からも癒しを得て、戦う活力をみなぎらせている。

「仲間や家族の支えは大きかった」と話す田中だが、それを力に変えられたのは、彼のメンタルの強さがあってこそだろう。ここから“闘将”の雄叫びを上げる場面が増えてきそうだ。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/

たくさんの方に
「いいね」されている記事です!
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数