“生原秀将、見参!” 622日ぶりのホームコート復帰を会場が祝福
青森ワッツとのホーム開幕戦を迎えた信州ブレイブウォリアーズの本拠地・ホワイトリングは19日、大きな歓声に包まれた。第2クォーター(Q)残り8分11秒。「生原秀将、見参!」のアナウンスとともに、622日ぶりに背番号46番がホームコートに舞い戻った。ホーム復帰となった2試合を、試合後のコメントを交えながら振り返る。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
復帰戦のアクシデントにヒヤリ
後半で再びコートに戻って奮闘
「緊張はしなかったけど、不思議な感覚の中でバスケットをやっていた」
第2戦を終え、生原秀将はそう振り返った。
第1戦の第2Q残り8分11秒からコートに立つ。青森の司令塔・池田祐一を激しくディフェンスし、早速持ち味を披露する。しかし攻撃面では停滞感が否めない。ケガからの復帰直後のふわふわした感覚は、スポーツを経験した者には容易に理解できる。ましてやプロ選手なのだから、そのレベルは比ではないだろう。
PROFILE
生原 秀将(いくはら・しゅうすけ) 1994年5月24日生まれ、徳島県出身。徳島市立高ではウインターカップ、インターハイを経験したほか、U18トップエンデバーに選出。卒業後は筑波大に進み、満田丈太郎や馬場雄大らとプレーした。その後は栃木ブレックスで同ポジションの田臥勇太から多くを学び、シーホース三河と横浜ビー・コルセアーズを経て2022年に信州へ加入。PGとして攻守に高水準のプレーを見せるが、脳震盪やケガなどで出場機会は限られていた。182cm、80kg。
ポゼッションのラリーを数回行った第2Q残り5分33秒、会場は一斉に息をのんだ。相手に得点を決められた後のリスタートの場面で、ボールを運んでいる際に転倒。左の足首付近を抑えて立ち上がれない――。
復帰を待ち望んでいたキャプテン石川海斗も「正直ヒヤッとした」。トレーナーの肩を借りて立ち上がり、コートを後にする。不穏な空気が会場を包み込んだ。
しかし、後半が始まる頃にはベンチに合流。会場を安堵させただけでなく、見せ場もつくった。
第3Q残り4分37秒に再びコートに入ると、アシストを立て続けに記録。3分23秒の場面では、チームディフェンスをけん引。最後は相手のトラベリングを誘い、手をポンと叩くなどケガの影響を見せなかった。
負傷してコートから下がった場面について尋ねると、「アクシデントみたいな形だった。トレーナーの方にいろいろチェックをしてもらったけれど、問題ないと言ってもらえた」。大事には至っていないという。
3ポイントに指揮官も握り拳
落ち着きを取り戻した第2戦
翌20日の第2戦でも生原はロスターに名を連ねた。この日は第2Q開始から出場すると、残り時間7分56秒の場面で魅せた。ペイントエリアに侵入し、相手を引きつけたペリン・ビュフォードからパスを受けると、3ポイントシュートを見事ヒット。
「キレイに入って会場のエナジーもそれによって盛り上がって、うれしかった」と、勝久マイケル・ヘッドコーチも右手を強く握りしめた。
第2Q残り6分でベンチに下がったが、わずか4分間で12ー5と点差を広げる貢献。後半は第4Q残り6分52秒から再びコートに立つと、5分32秒の場面では青森の激しいダブルチームを巧みにかわす。そしてウェイン・マーシャルへのアシストを記録するなど、今季3試合目にして徐々に落ち着きを取り戻していた。
「今日(第2戦・20日)は比較的昨日(第1戦・19日)に比べると、シーズンとして3試合目ということもあって、落ち着きながら多少はプレーできていたと思う」
生原と同じPGの石川は昨季、「シュウがいないのはキツい」と本音を吐露することもあった。待望の復帰について尋ねると「彼はすごく一生懸命ケガと向き合っているのを分かっているし、僕らが思っている以上につらい部分はあったと思う。彼は軽い気持ちでバスケットに向き合っているわけではないし、だからこそ復帰した時はすごくうれしかった」と目を細めた。
そして生原の復帰は間違いなく、チームに厚みを持たせる。だからこそ、ケガなく長丁場のシーズンを完遂することは、チームにとっても大きな意味を帯びる。
「コーチのディフェンスのシステムをまだまだ全員が学んでいる段階の中で、彼が持つディフェンスの脅威さやタフさは、僕にはないのかなと思う。(PGのタイプが)2種類あるのはすごく強み」
「自分の身体をもっと知ることも必要。僕の方が歳は上なので、ケアの仕方だったり少なからずアドバイスできるところがあると思う。一緒に戦っていけたらいい」
コンディションは体感50%未満
実戦を通じて「全開」の状態へ
まだ全開にはほど遠い。
2試合のプレータイムは
第1戦:5分36秒
第2戦:5分58秒
となっている。自身としても、体感で50%にも到達していないという。
「長い間試合に絡んでいなかったので、ゲーム感覚を取り戻すことが一番(の課題)。まだ長い時間プレーできる身体にできていない状況だし、頭的にもまだゲーム感覚を取り戻している段階」
基本的に練習試合はなく、試合の感覚は本番のコートで取り戻すしかない。
とはいえホーム開幕戦での復帰はうれしいニュースであり、待ち望んでいた瞬間だった。たとえ本調子にはまだ遠くとも、限られたプレータイムの中で相手に食らい付いて持ち味を発揮。46番の背中は、無上の勇気を吹き込んでくれる。
2試合とも白星を挙げ、チームは4連勝。そして23日にはすぐ、ライジングゼファー福岡とのホームゲームが待ち受ける。
「チームディフェンスとか、チームオフェンスの部分をもう少しゲームプラン通りやれるようにしたい。今はゲームプランと少し異なった中でも勝ててはいるけれど、まずはコーチ陣が出してくれたゲームプランをしっかりと全員で遂行できる力を身に付けながら、話し合って伸ばしていく必要があると思う」
生原は自分の身体だけでなく、チーム全体の成長も見据える。
ピースがそろい、徐々にチームケミストリーも構築されつつある信州。2026年から始まるBプレミアへの参入が決定したほか、この2試合でのべ9,281人が詰めかけた。紺と黄色のうねりは確実に大きくなっている。
その中で、今シーズンこそ真価を発揮したい生原。コンディションと向き合って実戦で調子を上げていくのは、決して容易なことではないだろう。
それでもなお、期待に胸を膨らませて待ちたい。
背番号46が満足にプレーできる、そのときを。
B2リーグ第4節 ライジングゼファー福岡戦 試合情報
https://www.b-warriors.net/lp/game_20241023/
Bリーグ 選手個人成績 生原 秀将
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=10822
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