ダービーでの悲劇から復活 伊藤恵亮は“ライバル”にも励まされて再びピッチへ

“ゴラッソメーカー”が帰ってきた。左膝の大ケガを負っていたAC長野パルセイロのMF伊藤恵亮が、7カ月ぶりに全体練習へ合流。加入1年目の大ケガに涙をのみながら、周囲の励ましも支えにして乗り越えた。その軌跡をたどるとともに、2026年3月14日のJ2・J3百年構想リーグ第6節、松本山雅FCとの「THE DERBY」に向けたエールを送ってもらった。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
ホームでダービー勝利も苦い結末
10分間のチャンスがピンチに
昨季のJ3第21節、松本山雅との信州ダービー。ホームで宿敵を1-0と下した一方、伊藤恵亮には苦い結末が待っていた。
終了間際にタッチライン際で相手と接触して倒れ込み、そのまま担架に運ばれてロッカールームへ。チームの勝利を見届けることすらできず、痛みにもだえるしかなかった。

「あの痛みは初めての経験だったけど、『これは結構かかるんだろうな』と思った。ロッカールームでドクターに診てもらったときも、『覚悟したほうがいい』と言われた。頭が真っ白じゃないけど、受け入れられない感覚はあった」
左膝前十字靭帯損傷、左膝内側側副靭帯損傷――。長期離脱は言わずもがなだが、状況も相まって余計に痛手だ。
当時はSC相模原から加入して1年目。開幕スタメンには入れたものの、1トップ起用に苦戦したり、あと一歩のところで得点できなかったり。波に乗れない時期を過ごしていた。

松本戦は82分から7試合ぶりの出場を果たしたものの、10分後に負傷。チャンスが一転してピンチに変わり、「ここでやっちゃったか…」と肩を落とした。
それでも診断結果を聞いた際は、思いのほか「落ち着いていた」とも明かす。
「考えていなかったわけではないけど、ケガの重大さを理解していなかったのかもしれない。『ケガしちゃったんだ』という思いと、『夢であってくれ』という思いと…。感覚的によくわからなかった」
KINGDOM パートナー
「あの日も『大丈夫だから』と」
ライバルチームの元同僚も支えに
手術を経て、再起への日々が始まった。
周囲の支えが、ことのほか大きかった。
相模原時代も同僚だったFW浮田健誠(現VONDS市原FC)らと食事に行き、「頑張ってこいよ」とエールを受ける。術後にチームに合流した際も温かく迎え入れられ、「心に来るものがあった」。

ライバルチームの仲間にも励まされた。当時松本山雅に所属していたFW安藤翼(現相模原)だ。
浮田と同じく相模原時代の同僚。右膝の手術から復帰を目指しており、リハビリのタイミングが重なった。
「あの日もロッカールームまで来て、『大丈夫だから』と声をかけてくれた。それからも手術の相談をしたり、リハビリ中も連絡を取ったり。チームとしてはライバル関係だったけど、元チームメイトとしていろいろ助けてもらった」

安藤はシーズン終盤に復帰し、8試合で2ゴール3アシストと活躍。試練を乗り越える姿に、伊藤も心を動かされた。
リハビリの期間は再発防止に努めつつ、プレーのイメージも膨らませた。フィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)、フロリアン・ヴィルツ(リバプール)ら“王道”のトップ下のポジショニングに着目。「こうやって立つんだ」と学びを得たという。

自身は豊富な運動量でラインブレイクを狙いつつ、ライン間でもボールを引き出せるタイプ。右足から放たれる強烈なシュートも特長だ。軸足となる左脚を手術したが、今のところ大きな不安はない。
復帰後のシュート練習ではボールの置きどころを変えてみたものの、「あまりしっくりこなかった」と明かす。本来の蹴り方に戻したところ、「これで行けるんだ」と納得。パンチの効いたシュートに、藤本主税監督も「あの切れ味は久しぶりに見た」と声を弾ませる。
ダービー控えるチームにエール
苦い思い出も塗り替える勝利を
指揮官も、伊藤の復帰を待ち望んでいた。
「監督というよりは、いちサッカー人として。8カ月、9カ月のケガは俺もしたことがないし、想像を絶するものを乗り越えてきたと思う」
「その中でも浮き沈みはあったけど、それを間近で見てきた立場で言うと、喜ばしいの一言。あとは焦らず慎重に、と思っている」

2月末には7カ月ぶりの全体練習へ。部分合流ではあるものの、本人は「みんなとボールを蹴ることができて楽しい」と笑みを浮かべる。
今季は2月-5月までの百年構想リーグで、シーズン中の公式戦復帰を目指すことになりそうだ。引き続きコンディションを高めつつ、チームをサポートする役割も担う。

3月14日にはJ2・J3百年構想リーグ第6節で、松本山雅と戦う。ホームでの信州ダービーには苦い思い出もあるが、それもチームが会心の勝利で塗り替えてくれるはず。伊藤は仲間たちに向けてエールを送る。
「あのときも少ししかプレーできなかったけど、『ダービーだな』という雰囲気は感じられた。両チームともサポーターが本当に熱いし、その中でプレーできるのは選手として嬉しいことだと思う」

「このダービーはパルセイロと山雅だけのものじゃない。地域の方々も注目してくれる試合なので、絶対に負けられない思いがある。練習からメラメラしている雰囲気は伝わってくるので、それをピッチで表現してほしい」
ホームゲーム情報(3月14日、松本山雅FC戦“THE DERBY”)
https://parceiro.co.jp/info/detail/0oRm1yQOt9ViCOTMJrAIN2ZvTzlGUG5KZkhfcklMeTItV0dEMEZBSjFpcDZiTXpkVURKbUEyZGZ1Zzg
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