衝撃の“胸ぐら開幕”から1カ月余 狩野富成は大きく、高く翔ぶ
“トヨ”の愛称で親しまれる、信州ブレイブウォリアーズの日本人ビッグマン・狩野富成。チーム最年少の23歳は昨季のケガから復帰し、徐々にプレータイムを獲得している。2024年10月5日の開幕戦でペリン・ビュフォードに胸ぐらをつかまれてから、1カ月余。渡邉飛勇が日本代表の活動で不在となる次節は、心技体とも成長した姿を見せる舞台となりそうだ。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
日本代表・渡邉が不在の期間
若きビッグマンに期待が集まる
「進化」と「真価」を示す時が来た。
人懐っこい笑顔が印象的で、チーム内でも弟分として定着している狩野。ただ、「弟」と呼ぶにはいささかオーバーサイズかもしれない。身長は自身の公式記録である206cmを超え、日本人ビッグマンとしての存在感は一級品だ。
そんなトヨが、一身に期待を集める。
同じ日本人ビッグマンの渡邉飛勇が、FIBAアジアカップ2025予選Window2の直前合宿に招集され、チームを離れたからだ。不在の期間は流動的。21日にホーム・モンゴル戦、24日にはアウェイ・グアム戦が予定されており、選ばれればもちろん渡邉は帯同する。
B1と違ってB2はバイウィーク(中断期間)にはならない。さらに、大黒柱のウェイン・マーシャルは前節のGAME1で足を傷めた。
出番が来るかもしれない――。
屋台骨を支える覚悟は済んでいる。
「練習でやったことを試合でできてナンボ。ウェインさんが出られるかは分からないし、飛勇さんはいない。でも、やることは分かっている。インサイドを守って、決めるところは決める」
そう言えるだけの積み重ねを、開幕からの1カ月でしてきた。
開幕戦でいきなり受けた「喝!」
実戦経験を積みながら信頼を得る
昨季は右前十字靭帯断裂の大ケガ。復帰に向けてリハビリをしていた開幕前のプレシーズンゲームは、ベンチ外からチームを鼓舞していた。
PROFILE
狩野 富成(かの・とよしげ)2001年10月6日生まれ、東京都出身。幼少期を日本で過ごした後はアメリカで育つ。スカイラインカレッジ出身で、2023年にサンロッカーズ渋谷と契約締結。同年にB3の徳島ガンバロウズへ期限付き移籍した。23年12月、公式戦で右前十字靭帯断裂。信州に期限付き移籍した今季、9月17日に練習に完全合流した。高さと機動力が魅力の日本人ビッグマン。「トヨ」の愛称で親しまれ、快活な性格でチームを盛り上げもする。206cm、105kg。
そして迎えた10月5日、福井ブローウィンズとの開幕戦。いきなりオーバータイムにもつれた試合の佳境で、狩野はペリン・ビュフォードに胸ぐらをグイッとつかまれた。
「俺を落ち着かせるためにやってくれた。喝もそうだし、『こうしろ』という指示。いろんな意味が含まれていた。そこからは落ち着いてプレーをすることができた」
以降も徐々にコートに立つ機会をつかむ。ただし、もう胸ぐらはつかまれない。これまで全13試合のうち11試合に出場し、平均プレータイムは8分27秒。平均得点も2.3点となっている。
「徐々に連係が良くなってきていると思うし、(勝久)マイケル・へッドコーチ(HC)が僕に求めていること、リムプロテクションやゴールを守ることなどが少しずつ分かってきた。成長も自覚している」
それは決して自分だけの実感ではない。指揮官もその変貌を口にする。富山グラウジーズを破った前節の第2戦を振り返り、狩野についてコメントした。
「ダンクやブロックなどの会場が沸くプレーをしている時はもちろん、ポジショニングとか角度とかタイミングとか、遂行力の部分で成長を見せていたと思う」
貢献度のスタッツのうち、プレータイム中の得失点差を示す「+/-」は+9。それだけが全てではないにせよ、指揮官も「確かにチームに貢献していたので、そこはうれしかった」と目を細める。
そして最近の試合では、ビュフォードを中心に褒められるシーンを目にすることも増えてきた。
「P(ペリン・ビュフォードの愛称)は怒る時には怒って、褒める時には褒めてくれる。本当に感謝している」と笑顔を見せる。
先輩・渡邉飛勇の背中を追って
まず試金石の次節でハードに戦う
日本代表合宿に行った先輩・渡邉からも、しっかり激励をもらった。「頑張れ」「期待してる」「できるよ」「ちゃんと試合も観る」。それらの言葉を胸に刻みながら、コート内で信州のバスケットを遂行していくつもりだ。
そして、冗談交じりに“宿題”も出された。
「40分間出場して、8ブロック、9オフェンスリバウンドという課題も与えられたので、たどり着けるように頑張る」と笑う。
ブロックはB1記録に並ぶ数字。10日に三遠ネオフェニックスのヤンテ・メイテンがマークしたばかりで、その数字に到達したのは外国籍選手4人だけだ。異次元の記録を本当にマークすれば、それこそ「日の丸」も絵空事ではないだろう。
笑いながらそう話を振ると、力強い言葉が返ってきた。
「代表はもちろん行きたいし、やっぱり世界を体験したい。(住んでいた)アメリカだけではなく、フランスとかドイツとかとも戦いたい。簡単じゃないけれど、行きたい。飛勇さんと一緒に行けたら、なおさら楽しいと思う」
ただもちろん、そのストーリーは始まったばかりだ。
実際に勝久HCも「彼のチャンスだと思うとワクワクする部分があるので、頑張ってほしい」と期待を寄せる半面、「彼はまだルーキーだと考えている。頭がいっぱいいっぱいになってしまうのは当然だけど、考えすぎず、自信を持ってハードにプレーしてほしい」と話す。
心身とも着実に日々成長を続ける狩野富成。11月16-17日のアウェイ青森ワッツ戦ではマックス・ヒサタケを筆頭に、強力なビッグマンとの対戦が待っている。試練をくぐり抜けるほど、さらなる成長を手にできるだろう。
Bリーグ 選手個人成績 狩野富成
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=42616
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/roster/?year=2024&club=716&p=&c=&o=random&tab=2
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/