「夢を見て、夢を叶えて、夢になる」 “金髪のシンデレラ”山崎玲緒

練習生から契約を勝ち取った山崎玲緒が、その存在価値を示した。1月4-5日に行われたB2リーグ第16節・福島ファイヤーボンズ戦。石川海斗、生原秀将、ペリン・ビュフォードらゲームメイカーを欠く中、スタメンガードとして目覚ましい活躍を見せた。シーズン当初はエントリー外だった山崎だが、急きょ訪れた緊急事態をチャンスと捉えて連勝に貢献。その道筋をたどる。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

練習生からスタメンに昇格
夢見たチャンスを掴んだ4試合

「シーズン終盤には試合に絡めるようになりたいと思って、準備していた。(この時期に)スタートで出ることまでは正直想像していなかった」

2025年1月4日。
福島戦GAME1の試合後会見で、山崎はそう口にした。信州に来て自身2度目の会見場。その表情からは以前よりも自信が垣間見えた。

主力ガード陣の欠場に伴い、2024年12月28日の前節・バンビシャス奈良戦からスタメン起用。ここまで4試合連続で先発ガードとしてコートに立った。

奈良戦のGAME1は20分23秒出場して9アシスト。福島戦GAME1では12得点だった。いずれもキャリアハイの数字を記録し、チームの5連勝にも大きな役割を担った。

PROFILE
山崎 玲緒(やまざき れお)1999年11月4日生まれ、茨城県出身。つくば秀英高から新潟経営大に進み、卒業後の2021-22シーズンはアルティーリ千葉の特別指定選手となった。22-23シーズンは練習生としてスタートしたが、22年12月に双方合意で活動終了。23-24シーズンはB3さいたまブロンコスでプレーし、リーグ戦39試合に出場した。今季は練習生から信州の契約を勝ち取り、B2デビューを果たした。スピード豊かなドライブなどを武器とするPG。179cm、80kg。

ポイントガード(PG)は相手ディフェンスに合わせてプレーコールをしたり、ディフェンスでは最前線からプレッシャーをかけたり。ゲームを作る重要なポジションだ。

そして先発メンバーに求められるのは試合のトーンをセットすること。勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)の信頼を勝ち得る必要があり、遂行力、強度、緊張感なども求められる。スターティングファイブはその責任を背負ってコートに立つ。

その重責を急きょ、担うこととなった山崎。それでも特に先発3試合目となった福島戦のGAME1では、持ち味を存分に発揮した。

「スタートで自分が出ている以上、負けるわけにはいかない。奈良戦から福島戦にかけてスタートで使っていただいているので、その期待に応えなければいけない」

素早いドリブルからゴールにアタックするプレーを中心としつつ、アシストや外角のシュートも併せ持つ。ここ数試合ではミスも減少傾向にある。

実際、福島戦のGAME1ではターンオーバー(TO)がゼロ。前節奈良戦のGAME2では5つのTOを犯していたものの、次の試合で見事に修正してみせた。

「奈良戦の2日目はTOがすごく多かった。チームのTOを増やさないのもガードの任務。今日(福島戦GAME1)は最初に3ポイントシュートが連続で決まったので、気持ち的にも楽に、試合を通してプレーができた」

この山崎のパフォーマンスには会場も大いに盛り上がる。指揮官も「徐々に理解を深めており、それによってチームもより動きやすくなってきた。まだまだ経験を積んでほしいが、良い方向に向かっている」と賛辞を送った。

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ヒーローとして脚光を浴びる
愚直な練習から夢を叶えた瞬間

福島戦GAME1で活躍を見せた山崎は、その試合のヒーローアワードに選出。以前も自身の誕生日に関連してブースターの前でマイクを握った経験はあったが、今回は”ヒーローインタビュー”として初めて声を届けた。

「チャンスをもらってる以上、いずれかはあそこに行きたかった。それが実現できてうれしかった」。感無量の表情でそのシーンを振り返る。

練習生から選手契約を勝ち取った背景を鑑みると、その喜びは想像に難くない。

契約が発表されたのは開幕前日の2024年10月4日。最後尾からのスタートであることなど、十分すぎるほど自覚していた。

「練習生から上がったのもあるし、最初はエントリー外だと分かっていた。でもいずれは自分がベンチにエントリーする目標もあったから、ベンチ外だと分かっていながらも毎試合毎試合、準備はしていた」

©️星智徳

選手契約を勝ち取っても、ロスターの人数制限の関係でベンチ裏で過ごす期間も長かった。それでも毎回、試合に出る準備を怠らない。日々の練習を大切にして手を抜かず、その存在を叫び続けた。

「準備はしていたので、ベンチ外になることは悔しかった。だからと言って、練習をサボるとかは絶対にできない。練習でどれだけ自分の力を証明できるか――という気持ちで練習に取り組んでいた」

©️星智徳

そして今回、日々の愚直な取り組みが裏付けとなってチャンスをグリップ。練習生からヒーローへの躍進するフェーズの進化はまさに、山崎が大切にする「夢を見て、夢を叶えて、夢になる」という言葉を地で行く。

実力を磨いてロスター定着を狙う
「夢になる」ための疾走は続く

しかし指揮官と山崎自身も言及するように、伸びしろも大きい。福島戦のGAME2では簡単なシュートを落とす場面も散見された。だがそうした経験も含め、やっとつかんだコート上での貴重な時間が、山崎をさらに成長させる糧となる。

©️星智徳

「(負傷離脱しているガード陣)全員が戻ってきた時に、前みたいにすぐにベンチ外になるのではなく、コーチが『誰にしようかな…』と迷うプレーヤーになりたい」

大切なのはフルメンバーが戻ってきた時、再びチーム内競争でポジションを勝ち取れるかどうか。その可能性を広げるためにも今、目の前に訪れた機会を逃さず、存在感をさらに盤石のものにしなければならない。

さらにチームにはタッカー・ヘイモンドが加入。頼もしい味方であると同時に、プレータイムを奪い合うライバルでもある。

「『練習生だからムリ』とか、『(石川)海斗さんやP(ビュフォードの愛称)がいなくて大丈夫なのか?』と思っている人もいると思う。それは自分にとって、とても悔しい」

「まだまだだけど、『玲緒でも大丈夫だ』と思ってくれる人たちが増えたらいいと思う」

充実感の中に悔しさも入り混じる率直な思いを語りながら、力強く誓いを立てる山崎。石川、生原、ビュフォードの復帰は未定だが、まずは1月11-12日のベルテックス静岡戦で、どんな活躍を見せられるか。

©️星智徳

ホームゲーム情報(1月11-12日、ベルテックス静岡戦)
https://www.b-warriors.net/lp/game_20250111_20250112/
Bリーグ 選手紹介 山崎玲緒
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=39518
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/roster/?year=2024&club=716&p=&c=&o=random&tab=2
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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