故郷・石川へ届ける思い 波佐間泰平はオールスターで”爪痕”を残す
「能登とともに。」をスローガンに掲げるSVリーグオールスターゲーム2024-25石川(1月25日-26日)に、VC長野トライデンツのミドルブロッカー(MB)波佐間泰平が選ばれた。リベロ(L)備一真とともに、リーグ推薦での出場。バレーボール人生の原点である故郷への思いを胸に、その舞台に臨む。
文:大枝 史/編集:大枝 令
「緊張」と「誇り」を胸に臨む
故郷でオールスターの舞台へ
故郷で“ハレ”の舞台に立つ。
2年ぶり開催のSVリーグオールスターゲームは、能登半島地震・能登豪雨で被災した石川県への復興支援として、同県かほく市で行われる。
リーグ推薦で出場する波佐間にとっては故郷への凱旋。実家は金沢市で「少し揺れた程度だった」とはいうが、被災地への思いも乗せて華やかなコートに向かう。
「(石川県出身は)少ないので、誇りを持って楽しんできたい」
PROFILE
波佐間 泰平(はざま たいへい) 1997年4月8日生まれ、石川県出身。石川工業高3年時に国体少年男子で3位を経験。その後は富山大を経て、2019年にVC長野トライデンツの内定選手となった。20-21シーズンに正式加入。機動力を武器とするミドルブロッカーとして存在感を示す。現在はチーム最古参でもある。183cm、80kg、最高到達点332cm。
同県出身で今季のSVリーグ男子に登録されているのは新貴裕(東レ静岡)と道井淳平(STINGS愛知)と波佐間の3人。いずれも石川工業高出身で新は波佐間の先輩、道井は同期にあたる。このうち今回は新と波佐間の2人が選出された。
華やかなエンターテイメントでもあるオールスター。自身は小川智大(STINGS愛知)が率いる「TEAM TOMO」の一員で、次期日本代表監督のロラン・ティリ(大阪ブルテオン)が指揮官。選手もそうそうたる顔ぶれが並ぶ。
「代表クラスの中に、何にも選ばれたことがない自分がポンと入る。緊張するし、何をすればいいか分からないけど、元気で盛り上げたい」
波佐間泰平はそう言って、口角を上げる。
先輩の背中に学んだ日々
国立大で教員志望から一転
石川県のバレーボール一家で育った。
バレーを始めた時期は記憶にないほど。兄も両親もバレーボールをやっていたので、物心ついた頃にはバレーに親しんでいたという。
国体少年男子では3位に入ったものの、年代別の代表に呼ばれるなどの経験はない。3年時の春高バレーも3回戦で山田航旗のいる鎮西(熊本)に敗れた。
その中で、影響を受けた先輩がいる。高校と大学で2学年上の角大樹さんがいる。
高校の体育教員を志望し、国立の富山大に進学。その2年時に、角大樹さんが富士通カワサキレッドスピリッツに入った。
「そういう道もあるのか」――。
急に視界が開けた。
そしておのずと、行動も変わる。
「いろんなことをできるようになろうと思った。一人で走り込みをしたり、いろんなことをしていた」
大学3年時。前衛にいる時はブロードを打つライト、後衛に下がったらオポジットのようにバックアタックを打つ。マルチロールの器用さを磨いた。
するとその年、人生の大きな転機が訪れた。
国体成年男子のメンバーに選ばれると、北信越国体の1回戦で富山を相手に好パフォーマンスを発揮。その試合を見ていたVC長野の関係者から声をかけてもらい、バレー選手への道が拓けた。
「その試合を見てもらっていなかったらここにはいない。ラッキーの重なりでここに来られた」と縁に感謝する。
夏はビーチバレーを楽しむ
“バレー愛”で残したい爪痕
物心ついた時から、呼吸をするようにそばにあったバレーボール。改めて口にするまでもないほど血肉に溶けており、こよなく愛しているのだろう。
大学1年の時から、毎年夏にはビーチバレーに汗を流す。それも角さんの影響で、見よう見まねで始めたら「休みに何もしないよりも、ビーチバレーをしていた方が楽しかった」。今後もエンジョイのスタンスで取り組むつもりだという。
オフシーズンの趣味がビーチバレー。1チーム2人でプレーするため、スパイクもトスもレシーブも全部をこなす。「ボールを触る機会が多いから楽しい」。そうしたスタンスもあるいは、万能性につながっているのかもしれない。
そもそも、身長183cmのMBはSVリーグの中でも小柄だ。「この身長だとなんでもできないとキツい。器用さでうまいことできたらいい」という生存戦略がベースにある。
加入5年目の最古参。今シーズンはリリーフサーバーでの起用に止まっており、前衛でのプレーには至っていない。それでも他チームの選手らを参考にしながら武器を磨き、存在価値を模索する。
試行錯誤のシチュエーションで望外に巡ってきた、オールスターの舞台。被災地支援だけでなく、故郷のバレー熱に対しても思いを寄せる。
「石川県には(SV/Vリーグに加盟する)男子のチームがないので、どうしてもチームがあるサッカーかバスケの方に関心が集まってしまう」
「せっかくこんな機会を設けてくれたので、これがきっかけになって石川県で少しでもバレーが盛んになってくれたら」
オールスターはともすると、気後れしかねないきらびやかな場。
しかし、そこで見て聞いて感じるもの全てが、無上の刺激となるかもしれない。自身のアクションが子どもたちに魅力を伝えられるかもしれないし、故郷・石川から始まったバレーボール人生に彩りを添える可能性もある。
「何か一つでも爪痕を残したい。普段見せていないプレーも見せられれば」
その爪痕こそ故郷への恩返しであり、新たな飛躍への足掛かりにもなるだろう。
MUFG SVリーグ オールスターゲーム2024-25石川
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クラブ公式サイト
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