【Farewell-column】 WD名古屋に旅立つシンデレラボーイ VC長野・早坂心之介

バレーボールの季節が去り、長野県内のSVリーグ男子/Vリーグ男女の計3チームからも退団者が発表された。本企画はチームを去る選手・スタッフに敬意を表し、その働きぶりやチームに遺した財産などを改めて記録するもの。第7回は、VC長野トライデンツから強豪・ウルフドッグス名古屋への移籍が発表されたセッター(S)早坂心之介にスポットを当てる。

文:大枝 史/編集:大枝 令

新天地に素早く適応した司令塔
知らない世界を学んで急成長

スターダムへの階段を、猛スピードで駆け上がった。

2024年8月末、チーム始動からワンテンポ置いてVC長野に加入。中島健斗の故障離脱に伴い、急きょセッターを補強する必要性に迫られていた。

大同特殊鋼知多レッドスターから途中加入。SVリーグ開幕となるSTINGS愛知戦で先発に抜擢されると、その後も安定してコートに立って44試合116セットに出場した。

司令塔としてチームを牽引。スパイカー陣に的確でリズミカルなトスを供給し、VC長野の10勝に欠かせない役割を果たした。

アウトサイドヒッター(OH)の樋口裕希は、加入当初の早坂についてこう振り返る。

「僕らの高さやスピード。知らない世界が多すぎて、できていないことが多かった」

しかし、積極的なコミュニケーションと周囲のアドバイスもあり、驚異的なスピードで順応する。

特にオポジット(OP)ウルリック・ダールとの息の合った連係は見事だった。

「日々の練習からコミュニケーションを取ってやっているので、よくなってきている」。そう話していたように、言語の壁を超え、シーズンを追うごとに精度を高めた。

試合中にも二人の良好な関係が見受けられるシーンが数多くあった。

原石は経験に磨かれて輝き増す
対戦相手も認める、その存在感

シーズンが進むにつれて、早坂のセッターとしての真価を示す。

試合経験を積むことでSVリーグに慣れ、持ち前の高い技術力を安定して発揮。その成長ぶりは、チームメイトだけでなく対戦相手からも高く評価されていた。

チームメイトの樋口は「彼は知ることが大事で、知れば勝手に技術もついてくる。経験しないと難しいので時間はかかると思うけど、能力は高い選手」と振り返る。

そして第13節のWD名古屋戦GAME2の試合後会見では、対戦相手のS深津英臣もそのポテンシャルに言及した。

「僕とは違って口数が多くないと思うし、スタイルとしては少し違うかもしれないけれど、技術はすごく高い。うちのベンチもこっちのブロックもちゃんと見ているセッターだと感じている」

そのWD名古屋から声がかかった早坂。複数クラブに興味を示されていた中、6月2日にWD名古屋の加入が発表された。

「人生は一回しかない。現実的な問題はいったん置いて、今やれることを今やりたいという思いが自分の中で一番だと感じた。そこを妥協するという選択肢は全くなかった」

これは大同特殊鋼からVC長野に移籍した際の心境を明かしていた言葉だ。今回もおそらくは、内なる声に従った結果。とはいえVC長野で過ごした1シーズンは、早坂にとって大きな財産となっただろう。

V3からSVリーグへの挑戦、途中加入からの先発の定着。そして対戦相手からも認められる技術力――。未知の世界に飛び込み、適応しながら確かな存在感を示した。

VC長野での1年で鮮やかに花開いた、早坂心之介のシンデレラストーリー。登ってきた階段はずいぶんと長いが、この先もまだ続いている。WD名古屋という新たなステージでだ。

PROFILE
早坂 心之介(はやさか しんのすけ) 2000年4月22日生まれ、宮城県出身。仙台商業高から大東文化大学を経て、22年に大同特殊鋼レッドスターの内定選手となる。そして23-24シーズン、当時V3の同チームに正式入団。しかし2シーズン目の24-25、VC長野からオファーが舞い込んで8月28日に加入が発表された。新天地に素早く適応し、セッターとして開幕から先発した。177cm、71kg。



早坂心之介 2024-25 SVリーグ男子 個人成績
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/player/detail/4743
「初舞台で堂々のトスワーク 急きょ加入した早坂心之介の“決意”とは」(2024.10.18公開)
https://shinshu-sports.jp/articles/9893

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