「飯綱を“サッカーの菅平”に」 高まる避暑地需要を背景にU-12の国際大会が開催

人口約10,000人の小さな町が大盛況となった。2025年7月29日-31日の3日間、上水内郡飯綱町などで「IIZUNA International Junior CUP 2025」が開催。国内外から計16チームの小学生チームが集い、大会アンバサダーの福西崇史氏ら元日本代表も健闘を後押しした。飯綱高原を夏の少年サッカーの“メッカ”にすべく、今後も継続的に場を設ける構えだ。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

飯綱の名を冠し、初の国際大会
長野県ゆかりのレジェンドも集結

「地球温暖化によって、子どもたちのサッカーの環境が規制されてきている。長野県は地形的に気温の低い環境だけど、菅平はラグビーの聖地ということもあって飽和状態。サッカー関係者からは『ほかにないの?』という声があった」

大会を主催したマナテックホールディングス株式会社・代表取締役の堀江三定氏が明かす。

一昨年の「イニエスタ・アカデミーカップ」が先駆けとなり、昨年は「LALIGA NAGANO CUP」を開催。スペインのトップリーグである「LALIGA(ラ・リーガ)」の名を冠し、同リーグのアンバサダーを担うルイス・ガルシア氏を招へいした。

いずれも拠点となったのは、長野市の北に隣接する飯綱町だ。

標高500メートルを超える町は、飯綱町サッカー場(いいづなパルセイロフィールド)、飯綱高原南グラウンドと2つのグラウンドを備える。前者は人工芝のピッチを備え、後者はJ3リーグのAC長野パルセイロも活用する天然芝だ。

3年目の開催となる今年は、「IIZUNA International Junior CUP 2025」と題した。初めて飯綱の名を冠し、海外からもチームを招へい。「子どもたちに国際経験を積んでもらいたかった」と堀江氏は話す。

その思いに元日本代表たちも賛同した。

堀江氏とかねてから親交のある福西氏がアンバサダーとなり、長野県にゆかりのある3人をスペシャルゲストとして動員。元松本山雅FC監督の名波浩氏、同選手の田中隼磨氏、そして飯綱町で農業に勤しむ石川直宏氏が駆けつけた。

4人はサッカー教室で実践的な指導を行い、参加16チームの各MVPも選出。子どもたちだけでなく、同世代の保護者も目を輝かせた。

バルサ、レアルのタレントも参戦
ワールド・スタンダードを体感

子どもたちは同世代のスターにも心を躍らせる。

スペインを中心に5カ国から選抜された「The Talent Select」。バルセロナやレアル・マドリードの下部組織に属する選手もいて、文字通りのタレント軍団だ。

予選リーグから圧倒的な力を誇示。対峙したAC長野パルセイロの福澤蓮介(6年)は「パススピードとか判断が早くてすごかった。この経験を生かして、試合でも判断早くプレーできるようにしたい」と声を弾ませる。

チームを率いる関瑞貴監督も、世界との差を痛感した様子だ。

「海外のチームは認知する力が全然違う。一つ一つのプレーに意図があるし、一つのボールにみんなが関わっている。我々はまだまだボールが来てから判断していて、ボールと自分だけの関係でプレーしていることも多い」

「日本人は個のスキルの捉え方として、細かい足技とかドリブルから入ることが多いと思う。ピッチが狭ければ狭いほど『うまいな』と感じるけど、ピッチが広くなって判断材料が増えた途端、うまくプレーできなくなることも多い」

AC長野パルセイロはThe Talent Selectだけでなく、浦和レッズら関東の強豪クラブとも手合わせした。地元で非日常を味わった関監督は、「子どもたちが感じないといけないこともあるけど、僕ら指導者が感じて変わらないといけない」と強調する。

過去最多の16チームがしのぎを削り、最終日にはJリーグの開催地である長野Uスタジアムに舞台を移した。決勝はCHONBURI FC(タイ)が浦和レッズを下して優勝。3日間の大会を成功裏に終えた。

「ほかのJクラブからも要望」
グラウンド新設含め可能性模索

昨年11月には日本サッカー協会(JFA)が暑熱化における方針を改め、今夏から7月-8月の主催大会を行わないことを決めた。

そうなれば、避暑地での合宿や大会の需要は高まるばかりだ。

今大会には16チームが参加したが、「ほかのJクラブからも参加したいという要望はあった」と主宰の堀江氏。キャパシティの都合で拡充には至らなかったものの、今後はグラウンドの新設も含めて可能性を模索する。

その背景には、地元への恩返しもある。

堀江氏は2015年から5年間、AC長野パルセイロの代表取締役社長・会長を歴任。「地域のいろんな方々にお世話になったので、将来を担う子どもたちのために何かを残したい」と展望する。

松本市出身のスペシャルゲスト・田中隼磨氏も、長野県の未来を見据えている。

「長野県からプロの選手がたくさん出ているかと言えば、まだまだ出ていない。J1で活躍している選手も少ない。子どもたちがピッチで考えてプレーできるように、指導者が伝えていかないといけない」

国内外のトップレベルに触れる機会が増えれば、自ずと選手や指導者の意識も変わるはずだ。

飯綱町を“第2の菅平”、そして夏の少年サッカーのメッカに――。人口約1万人の小さな町を拠点に、子どもたちの夢を広げるための取り組みは続く。


IIZUNA International Junior CUP 2025(大会公式サイト)
https://iizuna-inc.com/

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