「支配者」たらんとするPG土家大輝 汗かいて“ととのう”シーズンを目指して

ミニバス時代から全国の舞台を経験し、数多くの成績と実績を積んできた世代を代表する選手が信州ブレイブウォリアーズにやってきた。6月12日に契約が発表された土家大輝だ。ポイントガードの層が様変わりする信州。そこに現れたニューフェイスとして期待が懸かる土家に、移籍に際しての思いや現状での手応えなどを聞いた。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
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B1での経験を積んで大きく成長
自身の武器を見つけて輝く選手へ
インタビュー直前のマイクチェックから土家はユーモアを発揮していた。
「土家大輝です。岡山県出身…」
襟を口元まで軽く引っ張り上げて、SPの通信のように話す。その姿からは土家のキャラクターが垣間見えた。

一方、コート内では真剣な表情でバスケットに取り組む。久山智士・トップアシスタントコーチ(AC)の言葉をしっかりと耳にいれながら一つ一つ、信州のバスケットを身体に馴染ませていた。
「既存の選手が本当に優しくて、長野県もすごく自然な場所でもう慣れてきた」
6月末に引っ越し作業を終わらせたという土家。早速信州での生活に充実感を口にした。

PROFILE
土家 大輝(つちや・だいき) 2000年4月5日生まれ、岡山県出身。年長からバスケを始め、総社ミニバスケットボール教室で全国制覇を経験。玉島北中2年時にはジュニアオールスターで岡山県の初優勝に貢献し、3年時には全国中学大会で準優勝の成績を収める。その後は福岡大学附属大濠高、早稲田大と名門に進学し、文武両道でバスケの腕を磨いた。主将経験もあり、ポイントガードとしてチームの司令塔的な役割にも期待が懸かる。173cm、72kg。
昨季はプロ契約として初めてB1チームの大阪エヴェッサでプレーした土家。福島ファイヤーボンズ(B2)で過ごした2シーズンと比較すればスタッツ面では見劣りするものの、収穫もあったという。
「プレータイムは少なかったけれど、その中でも3ポイントシュートや、ピック・アンド・ロールのプルアップ(は成長できた)。あとは一番成長できたと思うのは、これまであまり習わなかったディフェンスの部分」
「ピックに対する守り方や、クローズアウトの仕方一つ取っても、ディテールまで教えてもらったので、その意識は自分の中で間違いなく大きかったと感じている」

その成長に加えて、今オフは韓国でのワークアウトなどを通して自身の課題にも取り組んだ。
「昨季B1の舞台でプレーして自分が感じたフィジカルの部分や、ピック・アンド・ロールの使い方、フィニッシュのスキルとか1年間戦って感じた自分の課題に取り組みながら、自分の武器を作るオフシーズンを過ごした」
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心躍る“戦友”と信州での再会
「馴染みやすいし、やりやすい」
「(勝久)マイケルさんが熱量を持って『欲しい』って言ってくれたことが素直にうれしかった。信州のスタイルとしてピック・アンド・ロールが多い中でガードがディシジョン(判断)を任されることも多いと思う」
「そういった部分でガードとして成長できるチャンスが大きいかなと感じたので信州を選んだ」

信州への移籍の経緯をそう語る土家との契約は、学生時代から追いかけているファンからすれば心踊るものがあっただろう。
総社ミニバス(岡山県総社市)、玉島北中(同倉敷市)、福岡大附大濠高ではいずれも全国を舞台に主力として活躍。数々のタイトルを手に入れてきた。
その後は早稲田大学に進学。選手間にモチベーションの差があった中でも、チーム内の規律や目標を見直して組織をまとめ上げた。

このように選手としても、人としても成長を積み重ねてきた土家の加入は、原理原則を重んじる勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)のバスケットにも合致すると思われる。
心躍る要素は他にもある。
全国でともに名を馳せた玉島北中の同期・小栗瑛哉との再会。その2人と全国中学大会決勝で戦った実践学園中には小玉大智が在籍していた。

まるで出来すぎたドラマの脚本のようでもある。そのような再会に土家も心を躍らせる。
「『切磋琢磨しながら成長できるな』と感じたし、同期がこんなに多いのもなかなか珍しいと思う。今季から信州に来たけれど、同期が多いからこそ馴染みやすいし、やりやすい」
趣味はサウナ、信州でも楽しみに
緻密な戦術を習得しゲーム支配へ
10月の開幕に向けて練習で汗を流している土家。
汗を流す――。
と言えば、趣味にも触れておかなければならない。

「サウナがめっちゃ好き。今は練習の疲労でなかなか大変だけど、体力に余裕がある時に、信濃町にある『The Sauna』に今一番行きたい」
「サウナ企画とかしてほしい。もう喜んで行きたい」
長野県内には自然豊かな場所やアウトドアコンテンツが多く揃っている。オフの日には自然豊かな信州の魅力をぜひ味わってもらいたいものだ。

それでも今は、信州のバスケットにアジャストするために、湖や水風呂ではなく、新しいバスケットの大海に飛び込んでいる時期だろう。
「マイケルさんが来るまで、久山さんがメニューを組んでくださって一つ一つ丁寧に教えていただいているけれど、今まで以上に細かい」
「その局面一つ一つで正しい判断ができるようになったら、僕自身も大きく成長できるのかなと感じてワクワクしている」

サウナで「ととのう」ためには、サウナに入る時間、水に浸かる時間や温度の全てを自分に合わせて正しく調整しなければならない。
それはバスケットにも通じること。
正しい努力を重ねて日々成長をすることで、コート上でも活躍し、最高に気持ちの良い瞬間が訪れるのだろう。
最後に、シーズンに向けての意気込みを笑顔で語った。

「このレギュレーションで戦うのは最後なのでB2優勝を目指してやりたい。個人としてはポイントガードとしてオーガナイズする力や試合を支配する選手になりたいと思っている」
「マイケルさんの求めるガードの理想像を追求しながら成長していきたい」
信州のガードとして期待を集める土家。シーズン中はどのような姿勢やプレーで勝利に導いていくのか。その真価が発揮されるシーズンまで、残り2カ月を切った。