鉄板のボランチ長谷川雄志&古賀俊太郎 “インテグラル”体現して反攻のキーマンに

いよいよ3週間のサマーブレイクが明ける。J3リーグで17位に沈むAC長野パルセイロは、2025年8月16日にホームでヴァンラーレ八戸を迎撃。6連勝中の首位を相手に真価が試されるフェーズだ。チームの骨格を成すのは、ダブルボランチを組む長谷川雄志と古賀俊太郎。藤本主税監督が求める“インテグラル”(必要不可欠な要素)を体現する2人は、首位撃破と上位浮上のキーマンとも言える。

文:田中 紘夢

インテグラルの徹底が結果に反映
闘争心はチームメイトにも伝播

「球際とセカンドボール。J3というリーグはそこに尽きると思う。そこはチーム全体としても上がってきているし、相手に流れを持っていかれないのは大きい」

1カ月前に行われた第21節。ホームで松本山雅FCとの“ダービー”に1-0と勝利したのち、長谷川はそう勝因を挙げていた。

球際やセカンドボールの争いは、勝敗とは切り離せない本質的な部分だ。これを藤本主税監督は「インテグラル(=必要不可欠)」と称し、第19節・FC大阪戦の週から重点的に意識づけてきた。

首位のFC大阪、ボール保持率1位のザスパ群馬に対してスコアレスドロー。続く松本戦では1-0と競り勝ち、3試合連続の無失点となった。いずれもインテグラルな要素で相手を上回り、主導権を譲らなかった。

その根幹を成すのは、ダブルボランチの長谷川雄志と古賀俊太郎。第15節のガイナーレ鳥取戦からコンビを組んでいる。前者は178cm、後者は181cmと比較的身長が高く、肉弾戦をいとわない。

攻守に奔走する2人の闘争心は、チームメイトにも伝播する。FW浮田健誠は自身の決勝点で勝利した第17節・カマタマーレ讃岐戦の後、こう話していた。

「(長谷川)雄志とか(古賀)俊太郎がファイトしてくれて、そういう一つ一つのプレーがチームに勢いをつけたところはあると思う。より僕らの足が前に動いたところはある」

KINGDOM パートナー

ボックス・トゥー・ボックス
古賀「チームを勝たせる存在に」

古賀は加入1年目の昨季、23試合に出場。髙木理己前監督が獲得を志願し、唯一の“引き抜き”と呼べる補強だったが、期待に応えられたとは言いがたい。シーズンを通して定位置をつかみきれず、結果も残せなかった。

2年目の今季も開幕前に負傷して出遅れた。それでもアンカーシステムからダブルボランチへの移行を機に、出場機会が増加。すでに昨季のプレータイムを超えている。

守備ではインテグラルな要素を体現しつつ、時には中盤の底から最前線までプレスに出る。攻撃でもクロスに対してゴール前に詰めるなど、まさにボックス・トゥー・ボックスの働きぶりだ。

転機となったのは、第5節延期分の松本戦。アウェイでのダービーに挑み、終盤に同点弾を決めて2-2のドローに持ち込んだ。

加入後初ゴールは、CKから181cmの長身を生かしたヘディングだった。セットプレーとはいえ、得点という結果がもたらした影響は大いにある。

「一つ点を取ってから、『点を取ると景色が変わるな』と思っている。個人としてもチームとしても、1点というのはすごく価値があるので、それを練習から追い求めている」

第17節の讃岐戦でも浮田がクロスから頭で決めた決勝点のシーンで、古賀は最後までこぼれ球に備えて詰めていた。

ピッチのあらゆるところに顔を出す姿は、ユース時代にPECズヴォレ(オランダ)で共闘したMFタイアニ・ラインデルスと重なるものもある。今夏、ACミランからマンチェスター・シティに移籍したオランダ代表だ。

7月にクラブW杯を制したチェルシーにも、レスター・シティ時代の同僚であるMFキアナン・デューズバリー=ホール(現エヴァートン)がいた。

5カ国でプレーした経験をもとに、周囲への要求もいとわない26歳。もう一皮むけるためには、さらなる結果が必要だ。

「ゴール前に入っていけることを評価してもらえるところもあるけど、チームを勝たせられる選手にならないといけない。自分に課された課題というか、もう一個上に行くための宿題というか、そういうものは明確にある」

昨季のラインデルスもそうだったが、“点の取れるボランチ”は市場価値が高い。セットプレーも含めてどれだけネットを揺らせるか。無論、守備でもハードワークを欠かさない。

「打倒首位」に燃える長谷川
伊藤恵亮の思いも背負って

古賀の相棒である長谷川も、目に見える結果を欲している。

「本当に結果がほしい。アシストだったり、アシストのアシストだったり。やっぱり目に見える結果はアシストなので、スルーパスとかそういう部分にこだわってやっている」

今季、J2徳島ヴォルティスから加わった28歳。左右両足から高精度のキックを繰り出すボランチは、最終ラインに降りてビルドアップを円滑化する役割もある。

守備でも古賀が前に出る機会が多く、長谷川は後ろで均衡を保つタイプ。対人の強さにも長けており、中盤で潰し役を担う。最終ラインやウイングバックもこなせるマルチなプレーヤーだ。

J1での経験も豊富。MF藤川虎太朗もそうだが、藤本監督からの要求は高いものがある。元ドイツ代表MFトニ・クロースのようにビルドアップを彩りつつ、セットプレーやミドルシュートで結果にコミットできるか。J初ゴールも待たれる。

指揮官が求めるインテグラルな要素にも、こだわりは強い。

「最近良い感じのゲームが続いているのは、その部分が絶対的にあったから。みんなが調子に乗って球際が軽くなったりしたら、絶対に持っていかれるだろうし…。そこはもっとやっていきたい」

次節は八戸とのホームゲーム。J3屈指の高強度を誇る首位に対し、球際やセカンドボールの争いで引けを取るわけにはいかない。「とにかく自分に矢印を向けて、地に足をつけて、バトルを意識して勝つ」と強調する。

仲間の思いも背負って戦う。

第21節の松本戦でMF伊藤恵亮が負傷。左膝前十字靭帯損傷および左膝内側側副靭帯損傷と診断され、今季中の復帰は絶望的だ。昨季も相模原でチームメイトだった伊藤に対し、長谷川はねぎらいの言葉を寄せる。

「J2に昇格して(伊藤)恵亮が合流したとなれば、またモチベーションも違ってくるだろうし、復帰を良い形で待ちたい。そこは頭の片隅には置いているし、みんなもそうだと思う」

現在17位。昇格にはほど遠い立場にあるが、中断期間明けのホームゲームで首位を破れば、自信を増幅できるに違いない。ダブルボランチを軸にインテグラルを体現し、反撃の狼煙を上げられるか。


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