クラブワーストの大敗を経て。眠れる獅子よ、“薩摩の悪夢”から目を覚ませ

目を背けたくなるような光景だった。2025年8月24日のJ3第24節。AC長野パルセイロはアウェイで鹿児島ユナイテッドFCと対戦し、リーグ最多得点の矛に0-6と打ちのめされた。深刻な得点力不足に陥る中で、クラブワーストの6失点と守備も崩壊した。今季初の3連敗となり、6勝6分12敗(勝点24)の17位。ため息を歓声に変える日はいつやってくるのか――。
文:田中 紘夢
KINGDOM パートナー
攻守とも噛み合わず屈辱的大敗
堪忍袋の緒が切れたかのように
薩摩の夜はあまりにも暗く、灯りさえも見つからなかった。
「0-6」
リーグ最多得点の鹿児島から30本ものシュートを浴び、クラブワースト記録を更新する6失点。立ち上がりからサンドバック状態で見るに耐えなかった。
それだけでなく、3試合連続の無得点。リーグ最少得点の攻撃も鎮火したままだ。桜島の噴火は止まらず、舞い狂う火山灰で一寸先も見えない。
「守備のやり方がうまくいかなかったことが、すべてに悪影響を与えてしまった。そこは選手にも伝えたし、100%俺の責任だという話はした」

試合後、藤本主税監督は守備の機能不全を要因として挙げた。
システム上のミスマッチもある中で、ハイプレスが機能しなかったのは事実。しかし、理由はそれだけではないだろう。

開始早々のクリアミスを皮切りに、ボールロストが散見された。相手陣地に入っても攻撃を完結できず、カウンターを受ける場面も多々。長距離移動かつ高温多湿という条件下で、集中力を欠いて崩れ落ちた印象だ。

堪忍袋の緒が切れたような感覚も受けた。
この試合前の6戦でわずか1得点。ゴール欠乏症をこじらせる中でも、守備は3試合連続の無失点など踏ん張りを効かせていた。

この間は守備陣から攻撃陣に対し、不満を漏らす声も聞かれた。守備陣も攻撃の一員であることには違いなくとも、相手のゴールネットが揺れないことにフラストレーションを抱えていた。
それが表面化するかのように、組織が乱れて6失点。忍耐が臨界に達したが、もはや時間の問題だったのかもしれない。
KINGDOM パートナー
クリエイティブなスタイル
積み上げを肯定すべく結果を
大量リードした鹿児島のプレスが緩んでも、一矢報いることすらできなかった。0-6というスコアもさることながら、シュート数も4対30と歴然たる差。直近7試合でわずか1ゴールと、深刻な得点力不足に陥っている。

前々節に敗れた首位のヴァンラーレ八戸と同様に、鹿児島は中長距離のボールを多用するチーム。いわば“アバウト”な攻撃で押し込み、カウンターのチャンスも見逃さない。効率の良いサッカーだ。

一方のAC長野は後方から丁寧にパスを繋ぎ、より確実性を求めてゴールに迫るサッカー。八戸や鹿児島に比べれば、得点を奪うには手間がかかる。カウンターも狙いの一つではあるが、まだまだ武器とは言いがたい。
これは良し悪しの話ではなく、あくまで難易度の違い。クリエイティビティが必要とされるスタイルに対し、個人的にはむしろ魅力を覚えている。人とボールが動く様は爽快だ。

ただ、サッカーは芸術点を競うのではなく、ネットを揺らした回数を競う競技だ。自分たちのスタイルを肯定するためには、相手よりも多くネットを揺らすことが必要。それは藤本監督も肝に銘じている。

「この結果がこの8カ月を否定するものにはならない。次のゲームの結果で、自分たちの積み上げてきたものが間違っていなかったと証明したい」

ここで疑心暗鬼になっていては、勝てる試合も勝てなくなる。
迷える子羊ではなく、自信に満ちた獅子でなければならない。
結果に飢える“長野のライオン”
ホームで悪夢を消し去る勝利を
「鹿児島まで来てもらってああいう試合は本当に申し訳ない。結果で信頼を取り戻さないといけない」
そう話す10番の山中麗央も、得点力不足に苦しんできた。前回のゴールは1年2カ月前までさかのぼり、「点を取れていないのは本当に不甲斐ない」。“長野のライオン”が牙を剥く姿を、誰もが待ち望んでいる。

今週末はギラヴァンツ北九州とのホームゲーム。千曲市ホームタウンデーで、同市を舞台としたアニメ「Turkey!(ターキー)」とのコラボイベントも開催される。クラブが集客に尽力する中で、千曲市出身の山中は何よりも結果を欲する。

「せっかくフロントも集客をしてくれている中で、そういう試合で勝てていないので、自分たちも結果でファン・サポーターをつけていかないといけない。去年も千曲市ホームタウンデーで点が取れたので、今年も自分がゴールを決めて勝てれば」

ターキーはボウリング用語で、3回連続のストライクを意味する。チームとしてもターキーまでは望めなくとも、まずはストライク、ダブルと数字を重ねたいところ。ホームの声援に乗じて、目の前のピンをなぎ倒せるか。
8月ラストゲーム。
鹿児島まで駆けつけた約60人のサポーターにも、悪夢を消し去る勝利を届けたい。

J3第25節 ギラヴァンツ北九州戦 ホームゲーム情報
https://parceiro.co.jp/info/detail/2025j3_25
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/