“ミックスカルチャー”じわり浸透 りんご音楽祭とコラボ&長野放送で番組制作

一般社団法人アーバンスポーツ信州のプロジェクト「DIGXS」が、じわりと活動の幅を広げている。2025年9月27-28日には県内外に知られる野外フェス「りんご音楽祭」とコラボレーションするほか、NBS長野放送でも「信州STREET BEAT」と題した共同プロジェクトが始動。街なかの遊びからスタートしたアーバン(都市型)スポーツ。音楽やファッションとも親和性が高く、そのポテンシャルが顕在化しようとしている。

文:大枝 令

アルプス公園が「遊び場」になる
りんご音楽祭×アーバンスポーツ

「アーバンスポーツは音楽との親和性がものすごく高い。音楽があるからパフォーマンスがあるという、それぐらいの関係性」

一般社団法人アーバンスポーツ信州・監事の大野善裕さんはそう力説する。

17年の歴史を持つりんご音楽祭。今年は子どもたちが遊べる遊具などがあるアルプス公園の家族広場で、主催者側から打診を受けてアーバンスポーツイベントが実現する運びとなった。

今回のコンセプトは明快。「PLAYGROUND」(遊び場)だ。

「もともとアーバンスポーツは公園とかストリートで仲間内で遊んでいるところからスタートしている。それがカルチャーになって今やオリンピック競技になった」

大野さんはそう語る。だからこそ、今回のイベントでも「遊び場からスタートした」発想を重視。来場者が気軽に参加できる体験型イベントとして設計した。

展開される種目は5つ。

1日目の27日はステージ上でバスケットボール・信州ブレイブウォリアーズ3×3のエキシビションマッチと体験会を開く。「ステージしか平らな場所がない」という会場の制約を逆手に取った演出。午後からは松本市内のスケートボードショップがスケートパークを設営する。

2日目の28日は、午前中は自由な遊び場として開放し、12時からショーケースタイムへ。ダブルダッチ「rerope redo」、ブレイキン「CHOPPA→ BREAKIN’ STUDIO」、KENDAMA「1-TARO」がパフォーマンスを繰り広げる。

中でも1-TAROは11月のKENDAMAワールドカップで、選ばれし者だけが披露できるパフォーマンスショーに個人として初出場が決定。先日の松本での大会で優勝を飾った勢いそのままに、アクロバティックな技を披露する。

そして目玉企画が「ミックスカルチャーバトル」だ。3人1組のチームで対戦するが、KENDAMA、ブレイキン、パルクールなど異なる「カルチャー」の混合チームもOK。採点基準はシンプルに「オーディエンスを沸かした方が勝ち」だという。

MCとDJが即興で曲をかけ、それに合わせてパフォーマンスを繰り広げる。「専門性がなくても楽しめる。いろんな人たちいるんだね、という空間にしたい」と大野さんは力を込める。

音楽フェスとアーバンスポーツの相性の良さは、都内でのイベントが盛況になるなど成功事例はある。長野県でもその可能性を探る第一歩が、この秋に始まる。

メディアとタッグ組み県民に浸透
長野放送とのプロジェクトの狙い

新たな取り組みはりんご音楽祭とのコラボレーションだけではない。大野さんが明かしたのは、長野放送(NBS)との大型プロジェクト「信州STREET BEAT」の全貌だった。

9月13日にやまびこドーム(松本市)で行うイベント「NBSグッドライフフェスタ」から始動するこのプロジェクト。核となるのが、来年1月予定の「NBSフォーカス∞信州(金曜19:00~)」での放送だ。TVerでの配信も予定しており、県外への波及効果も期待される。

番組内容は多彩だ。

ブレイキンの全日本ジュニア準強化指定選手を擁する「FRESH FRONTIER」、深志高校ダブルダッチ部「JOKER」とOB講師のHAJIME、KENDAMAの1-TAROなど、長野県内で活躍する選手やチームに密着。地元メディアがこれまで断片的に報じてきたアーバンスポーツシーンを、初めて体系的に紹介する試みとなる。

さらに月1回「N☆1 ~NBSトクセン~(毎週土曜10:25~)」内で5分枠のミニコーナーを設けて競技や選手を紹介するほか、NBSのアナウンサーが体験。視聴者が親しみを持てる構成を心がける。

プロジェクトの規模は番組だけにとどまらない。

「アーバンスポーツを応援しています」というメッセージを込めたCMが10月から半年間にわたって本放送される予定で、継続的な露出によって県民への浸透を図る。9月末までスポンサー募集も進行中で、最終的には産官学民が一体となってアーバンスポーツを盛り上げる態勢づくりを目指している。

大野さんはこうした取り組みの意義を「ゼロ以下の活動」と位置付ける。

「アーバンスポーツというもの自体を聞いたことがなかったり、よくわかっていない人たちもいる。そこに対しては当然広報をしなければいけない」

メディアとの連携は、単なる広報活動を超えた意味を持つ。

アーバンスポーツが持つ「カッコよさ」や「自由さ」といった魅力は、映像を通じてこそ伝わりやすい。音楽との親和性も高く、番組制作においても既存のスポーツ番組とは一線を画した演出が可能だ。

地元メディアがアーバンスポーツの可能性に着目し、積極的に発信していく姿勢は、他地域のモデルケースにもなり得る。放送という強力なプラットフォームを得たことで、活動は新たなフェーズに入ったと言えるだろう。

遊び場から世界へ、全世代へ
DIGXSが描く未来図とは

2023年の創設から2年。掲げる活動理念は極めて戦略的だ。

「ゼロ以下の活動」の次が「ゼロイチ活動」。実際に体験してもらい、触れてもらう段階だ。今回のりんご音楽祭でのPLAY GROUNDはまさにこの位置付けとなる。

「今度は1から先には『もっと学びたい』とか『習いたい』というステータスになってくる」と大野さん。そこの受け皿として「DIGXS CLUB」という教室展開を進める。

そして最終的には「オリンピック、あるいはワールドカップ、世界大会規模の選手に繋がっていく」という明確なストーリーを描いている。

「長野県からヒーローが生まれるといい。大谷翔平選手じゃないけど、注目する人が生まれると見る側としてのファンが生まれてくる」。スター選手誕生への期待も大きい。

アーバンスポーツの可能性は世代の壁も超えていく。大野さんが注目するのは「シニアパルクール」だ。

「パルクールはフランスの軍隊が発祥で、要はケガをしにくい身体の動かし方を習得できる。高齢者は転んでケガをしてしまうケースが多いけれど、パルクールでの技術を学ぶと、転んだとしても大ケガに至らない」

実際、ダブルダッチ教室では20数人の生徒のうち4人がシニア層だという。年齢も関係なく楽しめるのがアーバンスポーツの魅力の一つだ。

このほかスラックラインについては上高井郡小布施町で国内プロリーグが創設され、9月14日には町内でワールドカップも開催。KENDAMAは松本のグローバルけん玉ネットワークが新しいスタイルを確立し、世界大会も開いている。

長野県はアーバンスポーツの聖地になりつつある。

「僕らが生まれたことによって、アーバンスポーツに触ったことがある、体験したことがあるという人が一人でも増えればそれは存在価値だと思う」

大野さんのこの言葉に、DIGXSの本質が凝縮されている。

遊び場から始まり、やがては世界の舞台へ――。

そして年齢や地域の壁を越えて、すべての人に開かれたスポーツとして。アーバンスポーツ信州の挑戦は、長野県に新しいスポーツ文化を根付かせようとしている。


URBAN SPORTS PLAYGROUND by DIGXS
https://note.com/usshinshu_digxs/n/nb45ed6e6284b
NBSアーバンスポーツプロジェクト「信州STREET BEAT」
https://note.com/usshinshu_digxs/n/nad4f8e309ce5

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