“プレーも心も繋がる”新生・信州が会心の開幕2連勝 新戦術にも一定の手応え

黄色の歓喜がホワイトリングに帰ってきた。2025年10月4-5日。開幕節をホームで迎えた信州ブレイブウォリアーズは、山形ワイヴァンズに94-60、96-79と連勝して理想的なスタートを切った。2日間を通して見えた昨季からの変化は多々。戦術や遂行力をひも解くと、「プレーも心も繋がっている」という勝久マイケル・ヘッドコーチの言葉に集約される。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
ディフェンスから流れをつかむ
「信州スタイル」詰まった60秒間
エナジーあふれる勝利だった。
4日のGAME1を94-60、5日のGAME2を96-79と勝利した信州からは、昨季よりも勢いと統率力が感じられた。
手をいっぱいに広げて40分間前線からプレッシャーをかける意識と運動量。勝負どころでシュートをねじ込む負けん気の強さ。そしてルーズボールへダイブする姿勢――。

コートに立つ誰もが泥くさいプレーをいとわない。ディフェンスの信州が帰ってきた――。そう感じたブースターも少なくないのではないだろうか。
2日間を通してそれを象徴していたのはGAME1の第2クォーター(Q)、残り1分5秒からのプレーだ。
信州のエンドスローインから一度はターンオーバー(TO)するものの、小栗瑛哉が懸命にボールを追いかけたシーンからそれは始まる。

相手のスローインミスにより転がったボールをアキ・チェンバースが拾いレイアップを沈めると、マイク・ダウムが前線から圧力をかけて再びTOを誘発。そのボールをウェイン・マーシャルがダンクで叩き込むと、三度TOを誘ってダウムが得点。
さらに終了間際には小栗が技ありのレイアップシュートを沈めて一気に点差を突き放した。

そのシーンを小栗は冷静な言葉で振り返った。
「目指すべきバスケットにはまだ届いていないが、ディフェンスから第2Qの終わりのようなバスケットは今後続けていかないといけないと思っている。それが少しは体現できたと思う」
「(そのシーンは)チーム全員が『何としてでも守る』というエネルギーがあったからできたと思う」

勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)も目を細める。
「エナジーの部分では選手たちが40分激しく戦ってくれたので本当に良かった。ミスや遂行力が悪いポゼッションがあっても、チーム一つとなって同じ方向を向いて、プレーも心も繋がってプレーしている。良い方向に向かっているチームだと思う」
KINGDOM パートナー
新たな切り札は「1-3-1ゾーン」
相手リズム崩すチェンジングDF
オールコートディフェンスだけでなく、1-3-1のゾーンディフェンスを採用したことも特筆すべき点だ。
信州のこれまでのスタイルとしてマンツーマンディフェンスが多く見られたが、GAME1では前半から1-3-1を披露。GAME2では後半から展開して相手のリズムを狂わせた。

採用の意図について勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)は明かす。
「マイクの腕の長さを使うなど、今シーズンのロスターを見た時にやりたいことだと思っていたので取り組んできた」
「自分は1-3-1をやりたいと思いながらそんなに試行錯誤したことがないディフェンスの一つだったが、カイル(マーシャル・アシスタントコーチ)が昨年大学で多くやっていたので、ディテールは彼に導入してもらった」

トップにダウムを配置させることでパスコースを限定し、サイドにボールを落とすと脚力のあるガード陣がプレッシャーを与え、真ん中ではマーシャルが目を光らす。
マッチアップ相手が決まるマンツーマンとは違い、ゾーンディフェンスはマークマンが曖昧になる瞬間も出てくる。そのため、より細かなコミュニケーションが求められる。

それを開幕節から実戦投入できる水準にまで引き上げられた――という事実も、今季のチームが「プレーも心も繋がっている」ことを如実に示す。
オールコートマンツーマンやゾーンディフェンスと味を変えながら相手にプレッシャーをかけられることは、今季のチームの強みとなりそうだ。

「マンツーからゾーンに変わることによって少しでも相手を混乱させる意味での使い方だった。タイミングなどはマイケルさんを信頼して言われた時にやる。そのために練習しているのでそれが今日はうまくできたのかなと思う」
小栗も手応えを口にする。
2ガード起用で安定感が向上
奮闘のPG陣は勝負強さも示す
ガードの起用方法も昨季とは変化した点だ。
プレシーズンゲームから見られていたが、今季は2ガードを長く採用。スタートでは小栗と生原秀将、途中から土家大輝が出場する。

どのPGが出場してもゲームが崩れないことが今季の大きな強みであり、ゲームの流れが悪い時はそれぞれが得点力を発揮して好転に向かわせる。
例えばGAME2、小栗が第1Q終了間際にリングへアタックしてバスケットカウントを獲得。ワンスローこそ外れたものの、リードを保って第2Qへ入ることに成功した。

さらに第4Qで小栗が退場した後には土家が魅せる。連続クラッチ3ポイントシュートは圧巻のプレーだった。
GAME2終了後、土家は自身のプレーを振り返る。
「今日(5日のGAME2)は(小栗)瑛哉のファウルトラブルもあってプレータイムが長くなる中で、『最後は自分でゲームを決めたい』という気持ちはあったので、集中力を切らさずにやっていった」
「チームを勝たせられたのは大きな自信になった。ただTOやディフェンスのところでミスは多かったので、そこはしっかり次に繋げていきたいと思う」

PGの起用方法は今季の注目ポイントにもなりそうだ。勝久HCは現段階での起用について構想を口にする。
「(小栗と土家)2人のPGを同時にスタートさせるというよりは、2人ともすごく激しいディフェンスを求めているので早く交代しないといけないというのは一つある。スタートのディフェンスでのトーンセットは大輝でもできるが、トレーニングキャンプの段階でわずかに勝ち取っているメンバーだと思う」

「全然まだ固定されているわけではなく替わる可能性もあるが、シュウ(生原)を2番、2人を1番で出したい。その中では、今のプレースタイル、目指しているインテンシティを保つためには同時スタートよりこういう形かなと今は思っている」
誰かが不調な時は他のチームメイトがステップアップ。支え合う力がチーム力を生み出し、連係をスムーズにさせる。チームバスケットの真骨頂を、開幕節から示した。

理想的なスタートを切った信州。次節はアウェイで前信州の石川海斗率いる熊本ヴォルターズと対戦する。チーム力をさらに磨き上げ、生まれ変わった姿を印象付けながら連勝を伸ばしたい構えだ。
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/