昨季の司令塔・石川海斗と再会へ “丸裸のスカウティング”を上回って連勝を

再会の時が早くもやってきた。今季最初のアウェイ遠征で挑む相手は熊本ヴォルターズ。昨季まで足掛け3年チームの絶対的司令塔として活躍した石川海斗が在籍するチームだ。「やりにくい中の一つ」と勝久マイケルヘッドコーチ(HC)も警戒する会場で、連勝を伸ばすことができるのか。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
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意識共有と前向きな指摘の数々
頻繁に組まれるハドルの重要性
開幕戦を2連勝で終えた信州。ディフェンスから大量得点で勝利したGAME1、第4クォーター(Q)で突き離したGAME2と、非常に心が踊る2日間だった。
それでも8日の練習では、選手たちに慢心の表情は一切なかった。

シーズンが始まり、2連戦後の練習は今週が初めて。まだまだ試合の疲れとミスが目立つ中で、選手たちは頻繁にハドルを組み、練習に対する意識を共有していた。
特に印象的だったのは小玉大智だ。
5対5の練習での一幕。
チームがそれぞれハドルを組んで次のプレーに移ろうとする中、小玉は全体を集めて、やるべきことができていない部分や、相手を想定して練習に取り組めていないことを指摘していた。

選手たちのそのような姿勢を、勝久HCは評価する。
「今日は疲労も見えて、一つ一つのクオリティが我々のスタンダードよりは低かった。それを自分たちから、大智だったり何人もハドルでしゃべっていた。『しっかりやらなきゃ』という声があるのは素晴らしいこと」
「コーチから言うだけでは限界があるので、やっぱり自分たちから『成長したい』という思いだったり、違う声も必要。選手同士の指摘はパワフルなもので非常に大事」

今季の信州の強みはハドルの中心が固定されていないこと。ベテランでも若手でも関係なく、どの選手も意見を交わせることで、チーム力の厚みが見受けられる。
チームの大黒柱であるウェイン・マーシャルも今季のチームに手応えを感じている。
「雰囲気は良いと思う。個性豊かでいろんな性格を持った人が集まっているので、すごく良いチームになっている」

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次節が“本当の”シーズンスタート
スカウティングを上回る強さを
バスケットボールを観戦するうえで、楽しむポイントはいくつもある。第2節の前に紹介したいポイントは「スカウティング」についてだ。
対戦相手のチームや選手の特徴を分析し、試合に勝つための戦略や戦術を立てることを指す。それをまとめた「スカウティングレポート」はコーチ陣から選手に向けて試合ごとに配布され、それに基づきながら練習を重ねていく。
シーズン前のトレーニングキャンプ中は、自チームの土台である原理原則を浸透させて体現できるようにする時間。シーズン中はそこに加えて、相手の情報に対してどのように対策していくのかを考えて、落とし込む段階へと移行する。

つまり、ここからが本当のシーズンがスタートすると言っても過言ではない。
当然のことながら、相手がベテラン選手になればなるほどスカウティングの材料は増えていく。そのチームで試合を重ねていけばいくほどチーム全体の特色なども見えてくる。
ゆえにGAME1よりもGAME2の方が厳しい戦いになると言われているし、後半の入り方や、タイムアウト後の入り方一つ取っても、コーチ陣たちによるスカウティングのせめぎ合いと、選手たちの遂行力や判断力が試される。

だからこそ2連勝は価値がある。コーチ陣と選手たちの力を結集させ、お互いの強みをどれだけ消せるか、あるいは上回ることができるかが、バスケットボールの魅力でもある。
そしてスカウティングの重要性については、対戦相手となった石川がチームの誰よりも重きを置いて何度も言及していた部分でもある。
そういった意味でも、マイケルバスケの一番のファンであり、手の内を知り尽くした石川との対戦は一つの注目ポイントになることは間違いない。

勝久HCは石川との対戦を前に、チームの印象を口にする。
「磯野(寛晃)選手をはじめ、非常にプレッシャーをかけてくるチーム。フィジカルなチームでインサイドが強い分、彼らは彼らのスペーシングでプレーする」
「そのインサイドがとても脅威で、常にダックインやオフェンスリバウンド、リングアタックなどするチームなので、そこを守っていくことが大切になってくる」
「海斗というグレートなパサーも加わった分、噛み合ってくれば本当に手強い相手だと思っている。会場もすごく真っ赤になって、アウェイとしては結構やりにくい場所の一つ」

石川との多彩な連係を見せていたウェイン・マーシャルも意気込みを口にする。
「もちろん昔一緒にプレーしたチームメイトと対戦する時は『絶対に勝ちたい』という気持ちになる。海斗も自分たちのプレースタイルをものすごく知っているし、自分たちも彼がどうやってプレーするか知っている」
「しっかりと準備して、今週末ハードにプレーして2連勝をつかみにいきたい」

再び黄色から赤のユニフォームに袖を通した石川もチームの公式SNSを通じて「あいにく僕が昨年いたチームとホーム開幕ということもあるので、意地でも負けたくない」とコメントを発表し、火花を散らしている。
開幕節よりも厳しい戦いになることは必至だが、今季最初のアウェイで黄色の輝きを放てるか。石川が丸裸にしてくるだろうスカウティングを上回り、赤き熱を跳ね返して、チームとして一皮むけるアウェイ2試合にしたい。
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/