神奈川大で一回り成長 尾崎裕人が“パルセイロ愛”胸に7年ぶりの古巣復帰へ

長野市出身の“大器”が帰ってくる。AC長野パルセイロは2025年10月15日、神奈川大学に所属するDF尾崎裕人の来季加入内定を発表。同クラブのU-15で育ち、市立長野高ではキャプテンとして全国高校選手権の初出場に貢献した。185cm、79kgの屈強なセンターバック。同じクラブの先輩でもある日本代表MF田中聡の背中を追い、地元から大きく羽ばたくつもりだ。
文:田中 紘夢
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市立長野から3人目のJリーガー
「心の中では長野に決めていた」
伝統のパスワークで見る者を魅了する市立長野高。山中麗央(AC長野)、新井光(FC今治)を輩出した公立校から、3人目のJリーガーが生まれた。
尾崎裕人。2021年にチームを県選手権初優勝へ導いたキャプテンだ。

「うまい、速い、強い」の三拍子がそろうセンターバック。185cmの長身も目を引く。最後方から前線に駆け上がり、ゴールを奪うことも珍しくなかった。
オランダ代表DFファン・ダイク(リバプール)を彷彿とさせるプレーは、全国舞台でも輝きを放った。同年度に創刊した長野県高校サッカー誌「CLIMAX」において、満場一致で初代MVPに選ばれた。
卒業後は神奈川大に進学。1年時からJクラブの関心を集め、古巣であるAC長野のキャンプにも参加した。3年時にも練習に呼ばれるなど、地元クラブから継続的にアプローチを受け、「心の中では長野に決めていた」。

U-15からU-18に昇格する選択肢もあったが、当時のユースチームは人数も少なかった。トップチームに昇格した前例もないことから、市立長野高への進学を選んだ。
それでも同校の先輩である山中と同様、高校と大学を経て7年ぶりの復帰。中学時代を過ごした古巣への思いは、離れていても変わらなかったようだ。

「小さい頃から見てきたクラブだし、今も常に応援している。自分を応援してくれる人もたくさんいるので、地元で活躍する姿を見せて、長野県のサッカーを盛り上げられたら」
今夏に正式なオファーが届いた際も、二つ返事で快諾。上位カテゴリーからの関心もありながら、心は揺るがなかった。地元でプロキャリアをスタートし、チームとともに高みを目指す決意だ。

PROFILE
尾崎 裕人(おざき・ゆうと) 2003年7月4日生まれ、長野市出身。小学生時代は長野ガーフJrでプレーし、中学年代はAC長野パルセイロU-15に所属。その後は市立長野高に進み、3年時にはキャプテンを務めて同校の全国高校選手権初出場の原動力となった。卒業後は神奈川大でプレーし、練習参加を経てAC長野パルセイロへの加入が内定した。サイズとスピード、足元の技術などを兼備するセンターバック。185cm、79km。
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関東で猛者たちに揉まれて成長
フィジカル面もスケールアップ
神奈川大での4年間は、決して順風満帆ではなかった。
同年代には実力者たちが集結。J3福島ユナイテッドFCに内定したMF藤田仁朗、日本高校選抜の経験を持つFW守屋練太郎らがいる中で、「周りのレベルについていけるか不安だった」と思い返す。

度重なるケガとの戦いも経験した。ピッチから離れ、メンタルが崩れそうになる時期もあったが、「やってしまったものは仕方ない。その期間を体づくりに全振りして、復帰したときに良いパフォーマンスができるように頑張ってきた」。
リハビリ中は筋力トレーニングに励み、高校時代と比べて体重が6kg増加。大学の地域活動の一環であるピラティス教室にも個人参加し、柔軟性も鍛えた。

サッカーにおいても、レベルの高いチームメイトにもまれて成長。ひとたびピッチに立てば、スケールの大きさを光らせる。
主に3バックの右を担い、左右両足から正確なパスを供給。セットプレーを含めて空中戦でも強さを示し、持ち前のスピードで背後もケアする。高校時代ほどではないが、機を見ての攻撃参加もある。

チームは伝統の堅守に加え、アタッキングフットボールを確立。3-4-2-1の布陣でビルドアップを志向し、ロングフィードでも局面を打開できる。ハイプレスの強度も高く、攻守にアグレッシブなスタイルだ。
システムをはじめAC長野との共通項も多く、練習参加した際は「わりとすんなり入れた」。旗手真也強化担当も「サイズを含めてインパクトがある。遜色なく自分を出していたと思う」と話す。
強化部を“強化”し継続的に視察
子どもたちに憧れられる存在に
クラブとしても、尾崎の動向を1年時から追いかけてきた。
当時の村山哲也スポーツダイレクター(SD)は2024年をもって退任したが、在任中に就任した旗手強化担当がハブとなり、西山哲平現SDに引き継がれた。強化部を“強化”した上で4年間視察を重ね、アカデミー出身の有望株を逃さなかったわけだ。

今回の事例も踏まえ、クラブOBの旗手強化担当は「継続」をキーワードに掲げる。
「今までは強化責任者が2〜3年周期で変わって、人が変わればやり方も変わっていた。今年も強化責任者が変わったけれど、引き継ぐものは引き継がないと、積み上げがなくなってしまう」
「尾崎は長野県出身で、しかもパルセイロのアカデミーで育った選手なので、大いに期待したい。今後もそういう選手をしっかり追いかけて、子どもたちに憧れられるクラブになれたら」

尾崎が目標としている選手は、同じAC長野U-15出身の日本代表MF田中聡(サンフレッチェ広島)。長野FCガーフ時代も含め、小中学校の1歳上の先輩に当たる。ポジションこそ違えど、その背中を追い続けてきたという。
「昔一緒にやっていた選手があれだけ上のレベルに行って、すごいなと思うところはある。自分も負けずに追いついていきたいし、いつか試合で対戦できたらうれしい」

クラブにとっては小西陽向、山中、鈴木悠太に続く、4人目のアカデミー出身選手。オレンジの象徴として、憧れられる存在となれるか。
クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
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