“県内最強”松本国際高校、確固たる地位の確立へ 中学との6年計画も着々

玉座を譲るわけにはいかない。高校サッカーで県勢最高位のプリンスリーグ北信越1部に所属する松本国際高。2試合を残して首位・アルビレックス新潟U-18と勝ち点1差の2位につけており、北信越制覇も見えてきた。2021年に創設した中学サッカー部の1期生も戦力に加え、積み上げをもとに選手権県大会も順当にベスト8入り。2大会ぶりの優勝を果たし、確固たる地位を築けるか。
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“松本ダービー”でエースが躍動
吉村大樹の3発で県勢最高位に
北信越プリンスリーグ1部第15節。松本国際は松本山雅FC U-18との“松本ダービー”を制し、「県内最強」の称号を手中に収めた。
松本国際は優勝、松本U-18は残留に向けて、互いに負けられない戦い。立ち上がりから堅い展開となったが、松本国際が28分に先手を取る。

MF飯ケ濱咲介のスルーパスからFW吉村大樹がラインブレイクし、飛び出してきたGKを嘲笑うかのようなループシュート。均衡を破った。
ここからはもはや、吉村の独壇場だった。
後半早々にセットプレーから同点とされたが、再びエースの一撃で突き放す。66分に池田瑠世がドリブル突破からPKを得ると、吉村がキッカーに名乗り出る。

「そんな簡単に点を取れるチャンスはないので、根こそぎ奪い取った」と話す貪欲なストライカー。緊張する素振りもなくゴールに突き刺した。
圧巻は81分。左45度から豪快なミドルシュートを放ち、これがGKの頭上を射抜く。公式戦初のハットトリックで試合を決定づけた。

「リードして心に余裕があったし、周りもよく見えていた。ミドルシュートは自主練習でもやっていたし、ファーストタッチが良い位置に決まったので、思い切って振り抜いた」
守備ではファーストディフェンダーとして奔走し、松本U-18のロングボールを牽制。攻撃となればラインブレイクやポストプレーに加え、ロングスローを含めたセットプレーでも脅威を与えた。

「いっぱいできて損はない。足が速くないので、いろんな武器を持とうと思っている」と吉村。中学時代はボランチなど後方でもプレーしていたが、高校からFWに転身。オールラウンドなストライカーに成長を遂げた。
吉村の活躍で松本国際は3-1と快勝。3試合を残して松本U-18との勝ち点差を15に広げ、県勢最高位を確定させた。

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“ダブルエース”がチームを牽引
北信越1部で個を引き上げる
アスルクラロ沼津U-15出身の吉村は、松本U-18のセレクションに落選した経緯がある。
「シンプルに悔しかった。だったら山雅を倒せるチームに行こうと思って、ここを選んだ」
今季はケガで出遅れたが、前期の第6節・松本U-18戦で復帰。ベンチスタートから投入直後にゴールを決めた。そして後期の対戦でハットトリックを決め、シーズンダブルの立役者となった。

仲間の活躍からも刺激を受けた。
「薮押(皓哉)がたくさん点を取っていて、良いライバルだと思っていた。自分もゴールへのこだわりはあった」
ケガで出遅れて背番号9を譲る形となったFW薮押が得点を量産。9ゴールで得点ランク首位を走る。吉村もそれに負けじと追い上げ、トップタイに並んだ。“ダブルエース”が高め合いながら、チームを牽引している。

プリンスリーグ北信越1部初参入ながら、2試合を残して首位・アルビレックス新潟U-18と勝ち点1差の2位につける。「一人一人を成長させるために試合をしている」と勝沢勝監督。ハイレベルな日常で個を引き上げ、それが結果にも繋がってきた。

後期はここまで6勝1分で、敗れたのは帝京長岡高2nd(新潟)戦のみ。アウェイで0-5と大敗したが、相手には国内最上位のプレミアリーグに出場する選手もいた。格の違いを見せられ、勝沢監督は「あのレベルと対等にできるようにならないといけない」。

現在は北信越1部リーグが中断し、選手権県大会の時期を迎えている。二兎を追う状況にはなるが、「やっぱり選手権」と指揮官。主要トーナメント(総体と選手権)では過去3大会無冠と苦杯をなめており、一発勝負の舞台に懸ける思いは強い。

「長野県代表は松国以外に似合わない。出て当たり前じゃないけど、俺らだけだと思っている」と吉村。10月18日に行われた初戦の長野東戦では、吉村の4ゴールなどで8-1と大勝した。3大会ぶりの県選手権制覇に向けて、勢いは上々だ。

中学サッカー部の1期生が台頭
“松国スタイル”を積み上げる
「6年計画」も着々と進んでいる。
2021年に中学サッカー部が創設。松本U-18戦では同部1期生のMF飯ケ濱咲介がアシストし、長野東戦でもMF高山恋寿がゴールを決めた。

1期生は9人が高校に昇格し、飯ケ濱と高山が2年生ながらトップチームに絡んでいる。2期生の1人はヴァンフォーレ甲府U-18にも進んだ。
ボールを動かし、相手を動かす“松国スタイル”。それを浸透させるべく、竹野入潔・初代監督(現高校サッカー部コーチ)は「計算」をキーワードに掲げてきた。
「ポジショニングとはそもそも何か。このタイミングでここに入ることが、何を目的としているのか。次にボールを触る人に、その次の人がどう関わるのか。常に逆算しながらポジションを取り続けることを落とし込んだ」

高校年代が縦に速い要素を交える中で、それに順応できるスキルも備えてきた。松本国際で“5年目”を迎えた飯ケ濱は「中学から先輩とも一緒に練習していたし、やりやすさはある」と話す。
今季は強化選手として、県2部リーグと北信越1部リーグで並行してプレー。北信越1部では出番こそ限られているが、「県内とは全然強度が違う。3年生もレベルの高い選手が多いので、2年生のうちからこういう環境でやれるのは大きい」。

中学から全国の強豪校と練習試合を行い、研鑽を積んできた。「いろんなプレースタイルを身につけられた。松国に入ってよかった」と白い歯を見せる。来季に集大成の6年目を控える中で、「3年生を早く引退させたくない。一緒に全国に行って、さらに強い相手と戦いたい」。

初戦を制した松本国際は、10月25日に準々決勝を迎える。昨季全国ベスト8の上田西に対し、新人戦県大会決勝で敗れた借りも含めて、“県内最強”の力を見せつける構えだ。




















