会心の開幕連勝を導いた観察眼 “軍師”中島健斗が示した勝利への道筋

VC長野トライデンツが開幕節2試合を終え、単独首位に立った。日鉄堺BZを迎えた第1節はGAME1に続き、2025年10月26日のGAME2もセットカウント3-1で快勝。SVリーグ男子10チームのうち、唯一となる連勝を達成した。2日間でアタック決定率51.5%と躍動した攻撃を支えたのは、セッター(S)中島健斗。昨シーズンのケガを乗り越え、主力としてチームを牽引する24歳の思考に迫る。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

開幕連勝で単独首位に立つ
2日目に見せた「対応力」

どれだけの人が予想しただろうか。

SVリーグ男子は開幕節を終え、VC長野が唯一の2連勝。首位に立った。

エア・ウォーターアリーナ松本で行われた日鉄堺BZとの対戦。25日のGAME1に続きGAME2でも高い集中力を見せ、セットカウント3-1で快勝した。

この2日間では、昨シーズンから挙げられてきた課題に対していくつもの回答を見せた。

例えば、苦しい展開からの盛り返し。相手に走られても粘り強く食らい付き、ブレイクチャンスをものにして追い付く。

例えば、終盤の点の取り方。20点以降のサイドアウトも難なくクリアした。

ブロックを含めたトータルディフェンスが向上したことはもちろんだが、アタック決定率の上昇も当然大きい。まだ2試合ではあるもののチームのアタック決定率は51.5%と、昨シーズンの48.8%から改善。リーグ全体でもWD名古屋(53.2%)に続く2位の数字となっている。

「昨シーズンはパイプ攻撃が通せないことも多かったけれど、それも結構通用していくと感じている」。シーズン前にそう話していたのがセッター(S)中島健斗だ。GAME1では積極的にパイプ攻撃を使い、躍動したオフェンス陣に道を示した。

そして迎えたGAME2。2日目の戦い方も同様に課題とされてきた。

第1セットは序盤からサーブで崩され、思うようにサイドアウトを取れない時間もあった。しかし、すぐに修正する。「昨日はパイプ攻撃が通っていたが、今日はパイプの意識が相手は強かった。そこに早く気付けたのでうまく散らせた」と中島。相手の対策に素早い対応を見せ、攻撃を活性化させる。

特にミドルブロッカー(MB)山田航旗は20本、MB松本慶彦は11本と、意図的にミドル陣へとボールを集めた。

「昨日は序盤にクイックを意識させることができていたけれど、第3セット以降の特に終盤になってくると使えなかった。向こうもクイックは半分捨てているような状況も多かった」と、GAME1での反省も生かしたプレーだ。

当然、相手のブロック枚数が少なくなればアタック決定率は向上する。

「どれだけボールが乱れたとしても、少しでもブロックを減らした状態でスパイカーの打ちやすいポイントに持っていくのが僕の強み」

シーズン前に話していた自身の強みを存分に発揮し、連勝の大きな原動力となった。

昨シーズンの無念を晴らす快勝
コミュニケーションが生んだ自信

「去年は本当に『悔しい』しかなかった」

中島は昨年8月に右膝離断性骨軟骨炎の手術を受けて離脱。2025年3月の第20節GAME2でようやくフル出場の復帰を果たした。

「自分がしっかりチームに貢献した上で、去年の10勝を越えていきたい」。VC長野は昨シーズン10勝を挙げたが、中島が貢献した試合は第21節の東レ静岡戦GAME2の1試合に限られた。

悔しい思いをしたからこそ、今シーズンに懸ける思いも強い。

「多分『今年もなかなか勝てないんだろうな』というのが選手もファンも含めてどこかあると思う。『そうじゃないよ』というのを開幕戦で見せていきたい」

開幕前に話していた言葉通り、2連勝スタート。
その自信の根拠は、外国籍選手とのコンビ確立にあった。

「僕は時間をかけてコンビを合わせることで自信を持っていくタイプ。短い時間の中でコミュニケーションを取って、限られた時間の中で1本でも多く合わせていきたい」

そう話していたのが9月初旬。ほどなく外国籍選手が合流し、開幕に向けてコンビの成熟を図る。10月中旬には「信頼関係も成り立って、自信を持ってコンビを組めるようになってきた」と充実の表情をのぞかせていた。

外国籍選手の加入とコンビの確立は、中島に多くの選択肢を与える。

昨シーズンは決定力のあるOPウルリック・ダール(日鉄堺BZ)に任せる局面が多くなっていたが、今シーズンはOPマシュー・ニーブス、OHオスカー・マドセン、OH工藤有史と3人が得点を積み上げている。

選べるからこそ、相手を惑わせ、ブロックを減らせる。

VC長野がサムライであるために
中島健斗が用いる「兵法」とは

乱れたボールからでも精度の高いトスを供給し、安定したトスワークを披露。加えてコンビの精度を向上させ、単純なアタックのミス数を減らせたことも連勝を下支えしている。

実際、2日間合計でVC長野のアタックによる失点は9点。日鉄堺BZの17点と倍近くの差をつけた。高い集中力を持って挑んだことはもちろん、開幕戦に向けて例年よりボールトレーニングの時期を早めたことも功を奏した。

そのアドバンテージはシーズンが進むほどに薄まっていくが、「プラスで別の攻撃もチャレンジできるようにまで行っている。開幕がゴールではないので、どんどん成長して磨いていけると思う」と次なる一手を匂わせる。

GAME2の第1、2セットの25点目は松本のクイックで取り切った。

それは終盤でのクイックを意識付けるためなのか――そう尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「最後に関しては、ブロックが離れていくのが見えた。相手選手がマット(マシュー)に走っていくのが見えて、ブロックの意識が真ん中の選手も薄まっていたのでその時の判断で上げた」

パイプ攻撃を警戒させ、クイックを意識させたかと思えば、隙を見つけて叩き込む。相手を見極め、勝利への道筋を示す。

「今までのVC長野とは違う――と、この2日間で見せられたと思う。もっともっと面白いバレーボールを展開できると思うので、ぜひ会場に足を運んで、バレーボールを楽しんでほしい」

VC長野は次節もホーム開催。11月1-2日にANCアリーナでWD名古屋を迎え撃つ。昨シーズンはフルセットの激闘を制して1勝を挙げたものの、結果としては1勝5敗と力の差を見せつけられた相手だ。

開幕節GAME1終了時。オスカーは「今日は男として、サムライとして全員が戦えた」と表現した。

全員がサムライであるために――。

サムライをサムライたらしめるのも、刀を抜くべき時を示すのも、“軍師”中島の役割だ。


SVリーグ第2節 ウルフドッグス名古屋戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div2-1
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

たくさんの方に
「いいね」されている記事です!
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数