世代屈指のシューターから司令塔へ 信州産の大学2年生・絈野夏海が描く成長曲線

信州から羽ばたき、現在は女子バスケットボールの東京医療保健大で腕を磨く絈野(かせの)夏海が、大学2年目のシーズンを終えた。今季は全日本大学選手権(インカレ)で悲願のタイトルを獲得。2026年1月6日に行われた皇后杯ファイナルラウンド2回戦では、Wリーグプレミアで2位を走るデンソーアイリスに76-81と肉薄した。皇后杯直後の絈野の言葉とともに、ポイントガードとしての成長などをたどる。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
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デンソーアイリス相手に肉薄
4年生エース大脇晴と鉄板コンビ
今季は無類の強さで新人戦、リーグ戦、インカレと学生タイトルを総なめした東京医療保健大。

そのスターティングメンバーに抜擢されている絈野は、2年生ながらWリーグの選手を前にしても臆すことなく堂々とプレーを続けた。ポイントガード(PG)としてゲームをコントロール。ディフェンスでも細かなステップワークと強化を図ったフィジカルを生かし、簡単にはゴール下へと侵入させない。

プロの実力を前にターンオーバーが7と苦しんだものの、38分17秒の出場で3Pシュート2本を含む12得点6アシストを記録。4年生エースの大脇晴らとともに、プロをあと一歩まで追い詰める快進撃で会場を沸かせた。

それでも絈野は悔しさをにじませる。
「5点差という僅差で『大学生でそこまでいけるのはすごい』と言っていただけるのはすごくうれしいけれど、正直勝つ気でいたのでやっぱり悔しい。ちょっとしたミスや、相手のちょっとした強みに自分たちが負けてしまった部分が、5点にはあると思う」

PROFILE
絈野 夏海(かせの・なつみ) 2005年5月20日生まれ、長野県東筑摩郡波田町(現松本市)出身。小学校1年生の時に姉の影響で波田ミニバス(現西部グリーンスパンキーズ)でバスケットボールを始めた。波田中2年時には北信越中学総体で3位、3年時の第1回ジュニアウィンターカップに出場した。岐阜女子高ではキャプテンを務めてウィンターカップ準優勝。2024年1月には高校生で唯一の日本代表候補に選ばれた。東京医療保健大では1年時から先発。ドライブと3ポイントシュートを武器とするPG/SG/SF。173cm。
絈野は世代屈指のシューターとして名を馳せる。岐阜女子高3年のウインターカップでは、大会を通じて27本の3ポイントシュートを沈めて大会記録を樹立。昨季のインカレはフォワード登録で出場し、決勝では惜しくも敗れたものの、4本の3ポイントシュートを含む16得点を記録した。

そんな絈野が今季から本格的にPGに挑戦している。ゲームの流れを見ながら、ゲームメイクをすることもあれば、自らも得点を奪いにいく。相手としても焦点を絞りにくいPGへと成長を続けている。
中でもデンソーアイリス戦で見せた大脇とのピック・アンド・ロールは一級品だった。スタッツの通りミスはあったものの、針の系を通すような繊細なパスで大脇の得点チャンスを何度も生み出した。

大脇も絈野の成長を喜んでいた。
「絈野選手と一緒に試合に出たら、どんな時でも自分の欲しいタイミングでパスが来たり、自分の身体の動きに合わせてボールを持たせてくれるので、自分のプレーが思い切りできる。それは練習から積み重ねてきていたので、コートに出ているメンバーの中でも一番信頼している」

絈野も自身の成長を口にする。
「プレーを作る部分は一年間意識してやってきていた。その分をしっかり、今日の試合で晴さんと良いコンビネーションプレーで出せたという部分では良い評価だと思う」
「それでもちょっとしたミスや、自分がプレーを作らなきゃいけない場面で焦ってしまった。それがミスにつながるという部分は、PGとしていけない部分。もっと勉強してやっていきたい」

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プロさながらのメンタルと言葉
ロサンゼルス五輪代表を目指して
岐阜女子校3年時には高校生で唯一、オリンピックの強化合宿に招集された経歴を持つ絈野。出身地を飛び出し、高校からはカテゴリーの最高峰に身を置いていることもあってか、発する言葉にはプロさながらの力強さが宿る。

そんな絈野に改めてプレーヤーとしてのビジョンを尋ねると、強く、まっすぐな言葉で代表への思いが語られた。
「自分の目標は五輪選手になること。そこに向けてコンディション不良が続く中でも、目標をぶらさずにやってきている分、少しずつ積み上がってきているとは思う。(これからも)目標からぶれることなく、自分自身ができることをどんどん積み上げて、目標に向かって頑張りたい」
デンソーアイリスには日本代表で活躍する髙田真希や赤穂ひまわりが所属している。代表クラスの選手との手合わせはどんな刺激になったのだろうか。

「代表合宿でお世話になった先輩方がたくさんいる中ではあったが、別に『怖い』とも思っていなかった。『なんかしてやろうかな』『脅かしてやろうかな』ぐらいの結構強気で挑めたと思う」
「(PGとしては)代表合宿に参加していた当時はハンドラーもできなかったし、判断の部分でもミスが続いて迷惑をかけてしまうことが多かった。そういう部分で今日戦ってみて、ミスもあったけど自分たちのやれた手応えはすごくあった」

その言葉の節々からはプロに話を聞いているような強靭なメンタルが感じられた。だからこそ、プロを相手に一歩も怯むことなくプレーを続けられたのだろう。それでも負けた後は、悔しさから涙を流していた絈野。本気で勝とうとしていたことが伝わるワンシーンだった。

そして最後に、来季への目標も力強く語った。
「来年は学生タイトル全制覇を引き続きやっていくのと、今年できなかった皇后杯優勝をリベンジできるようにしていきたい」

個人としてもチームとしても明確な目標を設定することで、日々の確かな成長に繋がる。その成長の先に、2028年のロサンゼルス五輪への道も自ずと開けてくるのだろう。
世代屈指のシューターから万能型のPGへ。長野県の選手から日本を代表する選手へ。日本女子のホープ・絈野夏海の歩みはこれからも続いていく。



















