8月2日に照準合わせて進めた強化 「信州の代表は松本山雅だ」

2026年6月6日に昨季最終戦を終えて以降、J3松本山雅FCの新シーズンに向けた強化は“この日”から逆算して始まった。J3開幕戦に先立って8月2日に行われる長野県選手権決勝。同じJ3のAC長野パルセイロと天皇杯全日本選手権の長野県代表を懸けてぶつかる一戦は、松本山雅のシーズン幕開けを告げるファーストゲームであり、J2昇格を目指す今季の行方を占う試金石となる。会場は松本市のサンプロ アルウィン。当然、負けるわけにはいかない。

文:板倉 就五

KINGDOM パートナー

オフ短縮して強化に着手
スタートダッシュ決めるために

Jリーグのシーズン移行に伴い、各クラブはオフシーズンの短縮を強いられた。Jリーグが各クラブに「最低2週間」のオフ期間を要求する中、松本山雅が設定したオフ期間は最低限の2週間。昨季を終えてから息つく暇もなく、6月23日には今季に向けて始動した。

始動時点で、県選手権決勝の相手は決まっていなかった。それでも、石﨑信弘監督はAC長野パルセイロとの同格対決を見越して6週間の強化期間を用意した。8月8日のJ3開幕戦だけを見据えれば「もう1週間、始動が遅くてもよかった」と指揮官。それだけ、長野県選手権決勝に重きを置いて今季をスタートさせたと言える。

理由は二つある。「同県のライバルに負けるわけにはいかない」という感情論は副次的な理由に過ぎない。

一つは、スタートダッシュを重要視しているためだ。

Jリーグのシーズン移行に伴い、夏に開幕を迎える未知のシーズンが始まる。ウインターブレイクによる中断期間を挟み、リーグ戦は来年5月まで続く長丁場。ホームゲームの割合が高い前半戦で勝ち点を積み上げ、昇格争いを優位に進めたい狙いがある。

さらに、スタートダッシュは、チームの土台と方向性を揺るぎないものにする特効薬になり得る。

今年2~6月の百年構想リーグを戦った経験があるとはいえ、石﨑監督は就任1年目。今季を前に複数の主力が移籍で抜け、9人もの新戦力を迎えたチームは新旧戦力を融合させることに時間を割かざるを得なかった。

取り組んできた練習の成果を実感し、目指している方向が正しいとの確信を持つためには、結果の積み上げによって手応えを深めることが一番の近道になる。そのためのスタートダッシュだ。

天皇杯に懸ける熱き思い
リーグ戦では得られぬ収穫も

もう一つは、天皇杯が貴重な経験と成長の場になることだ。

天皇杯の出場権を獲得すれば、8月19日の1回戦で福井ユナイテッドFC(福井県代表)と対戦し、8月26日の2回戦ではFC東京(J1)に挑戦する組み合わせが既に決まっている。真夏の8月に最大7試合を戦う過密日程になるが、特にFC東京と公式戦で真剣勝負ができる機会は何にも代え難い。

主力の顔ぶれが固定された昨季と異なり、今季のチームはポジション争いが激しい。開幕直後にリーグ戦とは別の実戦機会があれば、戦力の底上げに活用できる。ケガで出遅れていたFW佐藤亮やMF安永玲央も全体練習に合流しており、公式戦は試合勘を養い、コンディションを高める機会にもなる。

加えて、石﨑監督自身が天皇杯に対して並々ならぬ闘志を燃やしている。

石﨑監督は、柏レイソルを率いていた2008年(決勝は09年元日)とモンテディオ山形の監督だった14年の2度、天皇杯の決勝に駒を進めた。「2回ともガンバ(大阪)に負けた」と石﨑監督。あと一歩で賜盃を逃した悔しさを昨日のことのように話す口ぶりからは、この大会に懸ける強い思いがにじむ。

固まった主力の陣容
キーマンになるFWの決意

この6週間を通じて激しく展開されたポジション争いも、シーズン開幕を目前に控えて主力の顔ぶれが固まりつつある。

前回のコラムで触れた通り、肝となるアンカーのポジションは、大卒1年目のDF金子光汰がセンターバックからコンバートされて抜擢される可能性が高い。GKは、FC東京から育成型期限付き移籍で加入した20歳の小林将天の起用が有力だ。

J1経験豊富なMF金子翔太とDF高野遼の新戦力2人もレギュラーの座を確保。当時J3のヴァンラーレ八戸で石﨑監督から指導を受けたDF蓑田広大は3バックの中央を固める。

そして、チーム浮沈の鍵を握ることになりそうなのが、最前線に入るFW田口裕也だ。

三重・四日市中央工業高を卒業して始まったプロキャリアの大半をJ3で過ごしてきたが、どのシーズンもコンスタントに得点を重ねてきており、昨季はJ3愛媛FCで20試合出場7得点をマークした。その得点力もさることながら、前線でボールを収め、攻撃の起点になることができる懐の深さが大きな魅力だ。

ロングボールの落下点を予測することがうまく、ボールと相手DFの間に体を入れる巧みさがある。相手を背中で押さえてボールをキープしたり、浮いたボールを胸で受けて足元に収めたりと、フィジカルと技術を生かして味方が押し上げる時間をつくることができる。

味方を生かしつつ、得意のワンタッチゴールで得点を重ねる――。田口の存在感が増せば、チームは上昇気流に乗れるだろう。

「しっかりと力を見せつけたい。『信州の代表は僕たち松本山雅だ』と。パルセイロとは相性が良いので、自分のゴールで勝てるように」

そう言って不敵な笑みを浮かべた田口だが、開幕前の対外試合は4試合ノーゴール。「練習試合の結果は気にしない。本番になればスイッチが入るので」と話す背番号17が、注目の一戦で主役の座を狙っている。


松本山雅FCオフィシャルサイト
https://www.yamaga-fc.com/

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