若手主体の“新生ウォリアーズ”初披露 黒星の中にも見えた輝くポテンシャル

信州ブレイブウォリアーズのプレシーズンゲームが2025年9月14日に安曇野市のANCアリーナで行われ、韓国KBLの強豪・水原KTソニックブームに77-85となった。試合に出場できない主力選手が複数いたのは不安材料だが、若手にとっては収穫の多いプレシーズンゲーム。試合当日に練習生から昇格したSF福島ハリス慈音ウチェとSG横山悠人の活躍を中心にゲームを振り返る。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

信州のアイデンティティを発揮
オールコートディフェンスに威力

「Let’s go WARRIORS」の声援がアリーナに帰ってきた。

プレシーズンとはいえ、久しぶりのホームゲーム。ゲーム開始前にはキッチンカーブースやグッズコーナーで買い物を楽しむブースターの姿も見られ、会場内は熱気に溢れかえっていた。

約1,700人が訪れた、注目の試合。エリエット・ドンリー、栗原ルイス、渡邉飛勇がロスターを外れ、ウェイン・マーシャルも第2クォーター(Q) の途中に腰あたりを抑えてコートを離脱した。

気がかりな要素は残ったものの、新加入の選手たちが持ち味を発揮した。

まずは先発ポイントガードに抜擢された小栗瑛哉と、途中交代でコートに立った土家大輝。特にこの2人はディフェンスの強度で会場を沸かせていた。

フルコートディフェンスでプレッシャーをかけ続けて試合のトーンをセットすると、第3Q残り2分50秒には小栗がバックコートバイオレーションを誘発する。

さらに第4Q残り6分30秒には土家がハーフコートで激しくボールマンに食らい付き、ショットクロックぎりぎりまで相手を追い詰めた。

これはまさに信州のアイデンティティを発揮するためのベースとなる姿だった。

2人の活躍について勝久HCも目を細める。

「エナジーは全く心配なく、常に頑張ってくれる選手。こういう経験を積んで、どんどん学んで成長してくれることを期待している」

ただもちろん、細部に関しては課題も多く見えた。

チーム全体を見れば、スイッチディフェンスでノーマークを与えて得点されてしまうシーンや、ピックアップが遅れて相手に似たような攻撃を許す場面も多く散見された。

85失点のディフェンスについて、小栗は反省点を述べる。

「ディフェンスには技術は必要だけど、それ以上に気持ちだと思う。先発で出させてもらった中で、ディフェンスのインテンシティを作れなかったことは僕の責任だと思う」

当日に2つのビッグサプライズ
練習生からの“昇格組”が躍動

この日はビッグサプライズもあった。

練習生の福島ハリス慈音ウチェと横山悠人が試合当日に選手登録されたことだ。

特別指定選手として契約した21歳の福島。第1Q残り3分19秒から出場すると、すぐさま右ウィングから3ポイントシュートを炸裂させた。その後のディフェンスでは転がったボールにいち早く反応し、そのままレイアップをねじ込んだ。

ベンチも大いに盛り上がり、指揮官も両手を叩いて賞賛を送っていた。

練習生として信州に合流したのは1カ月前のこと。合流間もない中で精一杯のプレーを見せてくれた福島は、どのような気持ちで試合に臨んだのだろうか。

「試合前は正直、結構緊張していた。だけど試合に臨む前の気持ちとしては『自分はこれだけできる』と自分を信じていた」

「自分が21年間やってきたことだったり、信州に来てからも練習は毎日していたので『試合だ』と思い過ぎずに、練習したことが出るので、いつも通りの気持ちで臨もうと思った」

19分57秒の出場で7得点3スティールを記録した福島。21歳らしく明るさいっぱいの表情で、ベテラン顔負けの自身のメンタリティについて語った。

小玉大智らと同じく2000年度世代の横山も、試合を通して持ち味を発揮していた。激しいディフェンスはもちろんのこと、特筆すべきはドライブの力強さだろう。

第1Q残り2分34秒からコートに立つと、終了間際に挨拶代わりの鋭い左ドライブで初得点を記録。その1プレーだけで、横山の武器とポテンシャルを明確に示した。

その後も得点シーンこそ少なかったが、ドライブでディフェンスを引き付けてからゴール下にアシストを出したり、マイク・ダウムの3ポイントシュートをお膳立てする起点になったり。チームを活性化させていた。

17分22秒の出場で5得点4アシスト。自身のプレーについて横山は笑顔で振り返る。

「自分の武器の一つはドライブだと思っているので、今日のゲームも自分から作らないといけないと思っていた。『僕のドライブきっかけでチームが盛り上がれば』とは常に思っているので、そういった意味ではすごく良かったと思う」

同時に、伸びしろについても語った。

「ドライブする前に自分のマークマンのポジションや、他の4人のディフェンスのポジションだったりとかをしっかり見極めること」

「ドライブなのか、それともウェインさんやマイクとかと一緒にピック・アンド・ロールするのかといった状況判断を、もうちょっと高めていきたい」

それでも横山の表情には、清々しさがにじんでいた。

新チームになって公開のゲームは今回が初めて。「お披露目」という意味でも、多くの見どころがある試合となった。

新加入外国籍選手のジェーシー・ヒルズマンやダウムが今後どのようなフィットを見せるか。岡山・玉島北中コンビの小栗と土家の共演や、実践学園中(高)時代の小玉と横山の共演も胸を打った。

B2ラストイヤーにどんな結末が待っているのか。まだまだ進化の途中段階。コンディション不良で出場回避した面々の状態も気がかりではある。

それでも、今季こそ最後は笑って終われるように――。開幕までの残り時間も、チームは日々成長を続けていく。


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