圧倒的強者サントリーに呼び戻された“挑戦者の魂” 原点に戻ってヴォレアス戦へ

準備をした上で、思い切りよく挑んだ。2025年11月29-30日、SVリーグ男子。VC長野トライデンツは昨年度王者のサントリーと対戦した。アウェイに乗り込んだ第6節はGAME1、GAME2ともにセットカウント0-3でストレートの敗戦となった。VC長野は3勝9敗で暫定7位。サントリーは開幕節以降続く連勝を11に伸ばした。圧倒的強者との対戦で得た収穫から次節のヴォレアス戦を展望する。

文:大枝 史 /編集:大枝 令

KINGDOM パートナー

準備の成果がコートに出る場面も
高い水準の相手に得られる経験は

全力で挑戦したからこそ、痛みがあり、成長がある。

昨年度王者サントリーのアウェイに乗り込んだ第6節。GAME1は17-25、13-25、19-25でストレート負け。GAME2でも18-25、20-25、15-25と力の差を見せつけられる結果となった。

スコア上では大敗と言えるが、何もできずに一方的にやられたわけではない。

特に昨シーズンの対戦では簡単に決められていたパイプ攻撃に対して、両日ともにしっかりと警戒。気持ち良くはやらせなかった。

相手の218cmオポジット(OP)ドミトリー・ムセルスキーの高い打点から放たれるアタックにはある程度は割り切った対応も見せたし、リベロ(L)古藤宏規がコースに入ってディグを上げるシーンもあった。

「完全に上げられないことはなかったから悔しい」。GAME1終了時には悔しさを滲ませた古藤だが、それでも「やりたいことはできていたと思う」と振り返る。

川村慎二監督もGAME1の試合後会見で「ある程度は対応できた部分もある」と話す。昨年度王者を相手にも勝つための準備を整え、全力で挑んだことはプレーに表れていた。

それでも届かなかった要因はいくつもある。

GAME1は効果的なサーブがなかなか入らずにジリジリと引き離される試合展開が続いたのに加えて、単純なミスも散見された。

GAME2では相手の高いブロックが揃うローテーションでなかなかサイドアウトが取れず、連続ブレイクを許して一気に苦しくなった。

攻めるサーブやミスの減少はもちろん、相手の高いブロックに対してどのように戦っていくか。そして何が通用して何が通用しなかったのか。何が足りないのか――。それらを整理することもチームにとっては糧となる。

「これからも大きな選手は増えてくると思う。そこでもしっかり対応できるようにしていかないといけない」

指揮官が話す言葉を体現しようと、成長を見せているのがアウトサイドヒッター(OH)佐藤隆哉だ。高さのあるブロックとパワーのあるアタックを武器としながらも、難しい場面ではリバウンドを取りにいくシーンもあった。

GAME2終了時には「同じ打ち方でも相手の(デアルマス)アライン選手が奥まで飛ばしていたような、いろんな打ち方があるのは今回すごく勉強になった」と、対戦相手から気づきを得た。

実際にムセルスキーのように高い選手とマッチアップする経験はそうそうできないし、OHイゴール・クリュカのように3枚ブロックのインナーを抜いてくるようなアタックも見ることは少ない。

国を代表するレベルの面々がそろい、理不尽でさえある強さを誇る格上との対戦。そこで得られた経験は、若きチームにとって無上の糧となる。

随所に見られた思い切りの良さ
チャレンジャー精神をもう一度

相手の高いブロックに対しても積極的に強打を放ち、躍動していたのがOPマシュー・ニーブスだ。GAME1ではアタック決定率47.8%、中でもバックアタック決定率は87.5%と頼れる姿を披露した。

「ムセルスキー選手とかクリュカ選手とか、映像で見ていた相手とネットを挟んで対戦するのはすごく楽しみ」と話していたニーブス。アタックだけではなく、サービスエース2本、サーブ効果率18.8%と思い切りの良いプレーを見せた。

セッター(S)中島健斗も「相手チームはブロックのプレッシャーがすごいのは元々わかっていたので、思い切って真ん中を通したり、ムセルスキー選手の前からもどんどん攻めていったりすることを意識はしていた」と話すように、攻めの姿勢を崩さなかった。

特にGAME1第2セット、2-5からOH工藤有史のパイプ攻撃がアウトとなり2-6の局面。パスが返るともう一回パイプ攻撃を使って工藤に決めさせたシーンがあった。

この一連のプレーには東山高校(京都)でともにプレーしていた相手OH高橋塁も「ああいうの健斗らしいな…と見ていた」と口にした。

「思い切りの良さ」が、この試合を迎えるにあたってのキーワードでもあった。

「試合が始まる前も、コートの中でもロッカールームでも『チャレンジャー精神で行こう』とは話していた」と話すのは古藤。試合中も佐藤に対して「止められてもミスしてもいいから逃げるな、思い切り打ってくれ」と声を掛けていたという。

相手に全力で挑んでいく姿。それは、第5節のSTINGS愛知戦では鳴りを潜めていた側面もあった。工藤が振り返る。

「勝てそうで勝てていない。焦りではないけど、『勝たないと』と受けにまわっているのはあると思っている」「自分たちに力がついたのはすごく良いことだけど、この立ち位置に慣れるのもそうだし、だからといって立ち向かうマインドを忘れないことが大事」

力がついて初めて感じる苦悩。思い切りよく、勢いで勝利をもぎ取った時にはなかった葛藤でもある。考えてプレーするのは最重要だが、ミスを恐れて縮こまったプレーをしていては勝てる試合も勝てなくなる。

圧倒的強者サントリーを前にして、否が応にもチャレンジャー精神を呼び起こさせられたのはチームにとってプラスに働くはず。古藤は「終わった後に何人かで話したけど、今こういう試合ができて本当に良かった」と率直な感想を口にする。

開幕節で連勝してから、フルセットでの敗戦が3回。勝てるだけの力がついている実感と、勝ち切れない焦りとがないまぜになり、落ち着かないチーム状況。それを、サントリーという強大極まりない壁が一つにまとめてくれたとも言える2試合だった。

堅固なディフェンスのヴォレアス
サーブで攻めてブロックも攻略を

12月6-7日の第7節はホームのANCアリーナでヴォレアスとの対戦を控える。

ヴォレアスは開幕節でSTINGS愛知を相手に先勝すると、第6節のWD名古屋との対戦も両日ともにフルセットまでもつれ込む激闘を繰り広げている。

昨季は4勝2敗と勝ち越した相手ではあるものの、今季は第6節までで1セットあたりのブロック決定本数が2.19本で4位、サーブレシーブ成功率は44.6%で1位と堅固なディフェンスを見せている。

高いブロックに対してどう攻撃していくか。また、どれだけ強いサーブで攻められるかがカギとなるだろう。

そして順位が近い相手だからこそ、意識する思いも生まれる。工藤が「お互いに『ここは勝ちたい』という気持ちは絶対にあると思う」と話せば、「すごく大事な試合になってくる」と佐藤。その重要性は十分すぎるほど認識している。

天皇杯による中断前、最後となる次節。いま一度原点に立ち返って、チャレンジャー精神で向かっていく。


SVリーグ第6節 サントリーサンバーズ大阪戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div6-1
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div6-2
第7節【ホームゲーム情報】12/6-7 (vs.ヴォレアス北海道)
https://vcnagano.jp/information/23786
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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