“あと1点”は近いようで遠くヴォレアスに連敗 今季4度目のフルセット負け喫す

またしても勝利がこぼれ落ちた。SVリーグ男子第7節。VC長野トライデンツはヴォレアス北海道とホームのANCアリーナで対戦し、両日とも黒星を喫した。GAME1は終始相手の強いサーブに押されてセットカウント1-3。巻き返しを図ったGAME2は2セットを先取したが、鬼門の第3セットを落としてからフルセットでの敗戦となった。集中力を欠いたミス、良いプレーの継続性のなさ、詰めの甘さ――。監督、選手たちが口にする課題をプレー面から解きほぐしていく。
文:大枝 史 /編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
フルセット勝率が0%の苦悩
取り切れない詰めの甘さが出る
まるで、何かに取り憑かれているような苦々しい敗戦だった。

SVリーグ男子第7節、対ヴォレアスのGAME2。
GAME1から修正し、序盤から高い集中力で2セットを先取したものの、そこからフルセットでの逆転負け。

試合後会見でミドルブロッカー(MB)安部翔大は「ジンクスというか、2セット取ったら第3セットは絶対に取れないみたいになってきている状況がチームとしてはすごく嫌で、ストレートで1回勝ってそれを払拭したい」と話す。
第4節GAME1で東レ静岡を相手にストレート勝ちを収めたのはもう忘却の彼方。それほどまでに、苦手意識を植え付けられてしまっている。

2セットを連取しての逆転負けは第2節WD名古屋戦GAME2、第3節東京GB戦GAME1に続いて3回目。フルセットでの敗戦はそれに第4節GAME2を加えて4回目となる。ここまでフルセットでの勝率は0%だ。

ましてや東京GB戦、東レ静岡戦と今回のヴォレアス戦はマッチポイントを一度は握りながらの敗戦。フラストレーションが溜まれば焦燥感も生まれるのは致し方ないとも言える。

GAME1での試合後会見で川村慎二監督は「『これからだぞ』『行こう』といったときに、点数が取れない、リズムが取れない…というシーンが本当にいっぱいあった」と振り返った。

フリーボールが返ってきた時の決定率、効果率。日頃の練習から取り組んでいるものの、取り切れずに流れを掴みきれないシーンは確かにある。

例えばGAME1第1セット、13-14の場面。MB山田航旗のサーブで相手を崩し、フリーボールが返ってくるがオポジット(OP)マシュー・ニーブスが決めきれずに同点に追いつくチャンスを逃す。
第4セット15-15の場面では相手のクイックにブロックでワンタッチを取ってチャンスとなるが、アウトサイドヒッター(OH)オスカー・マドセンのパイプ攻撃はアウトとなる。

こういった要所での「取りたい得点」が取れないのは詰めの甘さと言える。
ただそれ以上に、苦しい体勢や3枚ブロックがついている状態の中で決め切ったシーンは数多くあった。

例えばニーブス。GAME2の第1セット、8-8の場面。ブロックタッチからこぼれそうになったボールを拾うと、山田がアンダーで上げたトスを垂直のジャンプから決め切った。
第2セット3-5の場面では相手のサーブに大きく乱されたが、セッター(S)中島健斗が観客席ギリギリまで走り込んでアンダーで上げたトスをバックアタックで見事に決め切った。

極めつけは第3セットの19-20の場面。ストレートに打たれたアタックをディグで上げると、OH工藤有史がアンダーで上げたハイセットをバックアタックから自ら決め切って同点に追い付いた。

こうした素晴らしいプレーがいくつもあるからこそ、今度はその継続性が問われる。

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それでも好プレーは随所に
いかに継続できるかがカギ
良いプレーの継続性――という観点から、挙げられるのはサーブだ。
GAME2では山田が今シーズンから実戦投入を始めたハイブリッドサーブでよく相手を崩したし、第2セットではサービスエースを含めて3連続ブレイクに成功。第2セットを取るのに大きく貢献した。

しかし試合後会見で指揮官が「サーブの差。第3セット以降のサーブの効果率を見れば、相手の方が上回っていると思う」と話すように、第2セットまでは攻めたサーブで崩せていたが、第3セット以降は鳴りを潜めてしまった。

サーブに関連して、ブロックディフェンスも同様だ。
序盤は攻めるサーブが効果的に働いたからこそだが、この日はスタートから出場したリベロ(L)難波宏治がディグで何本も魅せた。

11-12の場面では連係ミスで中島と交錯し、相手にフリーボールを返した。しかし相手OP張育陞(チャン・ユーシェン)のストレートに打ったアタックをディグで上げてすぐにミスを挽回する。

13-14では同じく張育陞のバックアタックからのフェイントをパンケーキで上げると、続いて相手OHメルト・タンメアルのパイプ攻撃もディグで上げた。これは惜しくも点数には繋がらなかったが、存在感を際立たせた。

第3セットの13-14の場面でもクロスのアタックをディグで上げたシーンがあったし、15-15のラリー中にアタックを上げたシーンもあった。
良いプレーもたくさんあったために、余計に悔しさが募る。

集中力を欠いたミス――これは主にレセプションに当てはまる。
第6節のサントリー戦でも「3人の連係もまだまだ足りない」と指揮官が言及していたが、この日も「人と人の間のミス、エースがすごく最近多い。『なぜコミュニケーションを取らないのか』というのは本当に思う」と苦い表情を浮かべる。

もちろん昨シーズンと比べるとLが固定し切れていない現状や外国籍選手とのコミュニケーションといった要素はあるし、自チームだけではなく対戦相手もサーブが強化されている現実もある。
いくら相手のサーブが良かったとはいえ、1試合で被サービスエース10本はあまりにも多かった。

「考えすぎないのも大事」
鬼門を越えるだけの精神力を
第3セット、そしてそれ以降の戦い方に悩み、苦しんではいる。しかしメンタル面が由来であるなら、ポジティブな側面があったことも忘れずにいたい。

特にGAME2ではニーブスは気迫のこもったアタックを連発。最終盤こそ捕まったものの、それでも40本打って決定率47.5%の数字を残した。

オスカーもサーブターゲットになりながら68.4%の高い数字を残したし、工藤はサーブを25本受けて50.0%の成功率を残した。

リリーフサーバーで登場した飯田孝雅も効果率20.0%と良い仕事をしたし、ディグで上げるシーンもあった。

ここまで少なかったブロック本数もこの日は全体で15本と要所でしっかりと決めた。

第3セットの課題について、選手たちもそれぞれに苦悩している。
中島は「第3セットの入り方だったり雰囲気の作り方だったりはコートに入っている選手だけではなくて、ベンチもスタッフ陣も、全体に少し緩みのようなものがある気がする。そこを引き締められるようなチームになっていかないとダメだと思う」と指摘する。
安部は「チームでもそういう雰囲気というか、みんなわかっていてそういう雰囲気を出さないようにはしているが、どうしても何か感じるものがある」と言葉を絞り出した。

ただ、それを乗り越える術は「正直何が、とかはわからない」と中島。続けて「第3セットを取るぞ、と思いすぎるのも良くないのかなとも思う。考えすぎないことも大事」と口にする。

それは新たに生まれた「勝たなくてはいけない」というプレッシャーかもしれない。それに対してどう立ち向かって、改善していくことができるか。

ミスを減らす。攻める気持ちを忘れない。そうして一つ一つのクオリティを上げていけば、最後の1点もまるでなんでもない1点のように取れる日も来るだろう。

GAME2第5セット最終盤。一連のプレーについて中島は「言葉にするのは難しいが、今日はマット(ニーブス)に『託そう』と思っていた」と口にした。

バレーボールは繋いで、最後は「託す」スポーツという側面もある。であれば、「繋いでくれ」「止めてくれ」「決めてくれ」という願いや祈りもまた、託すしかない。

託されて失敗した側も、同様に大きなダメージを受けるだろう。その痛みを越えて立ち上がり、一回り大きくなった姿を見せてくれるように、また、託すしかない。

SVリーグ第7節 ヴォレアス北海道戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div7-1
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div7-2
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461
















