神奈川大から内定の尾崎裕人&渡邉禅が志す“F+1″ 竹山で育んだ地域愛を長野でも

「長野を盛り上げたい」。横浜市の竹山団地で2025年12月10日に行われた、神奈川大学サッカー部のJリーグ加入内定選手4人の合同記者会見。来季からAC長野パルセイロに加わるDF渡邉禅とDF尾崎裕人は、口をそろえて意気込んだ。彼らが地域貢献に目を向ける背景には、同大学が掲げる「F+1」の理念がある。

文:田中 紘夢

神奈川大独自のプロジェクト
「F+1」で地域の応援を力に

「普通の大学生活だったら経験できないことができた。それはサッカーのコミュニケーションでも生きたし、いろんな世代の人たちから応援してもらえたのはよかった」

尾崎裕人が言うように、神奈川大学サッカー部の生活は“普通”ではない。

駄菓子屋を開いて子どもたちを楽しませれば、ピラティス教室に参加して高齢者とも触れ合う。渡邉禅も畑を耕したり、夏祭りの店長をしたり――。サッカー部とは思えぬ多彩ぶりである。

これらはすべて、2020年から始まった「竹山団地プロジェクト」の一環だ。

同大学は神奈川県住宅供給公社や竹山連合自治会と連携し、周辺地域の活性化や課題解決に尽力。サッカー部の部員は竹山団地で寮生活を送り、「F+1(Football+何か1つ)」の理念に基づいてピッチ外でもハードワークをこなす。

12月10日のJリーグ加入内定者選手による合同記者会見は、団地内にある「竹山ホール」という小さなコミュニティスペースで行われた。誰でも事前申請なしで入場でき、写真撮影も可能。選手たちは地域住民に見守られ、晴れ舞台をともにした。

「この竹山で生まれた関係から、試合の応援に来てくださったり、『頑張ったね』と言ってもらえたり…。とてもありがたかった」

尾崎は地域からの応援が力になったと話す。

竹山で育んだ地域愛を長野でも
「ファン増やして盛り上げたい」

「サッカー界にもホームタウンを大切にする文化がある。彼らが竹山で感じた温かさを広げていく種や苗になってくれたら」

竹山団地プロジェクトを発案した大森酉三郎監督の願いに、AC長野パルセイロ内定の2人が応えようとしている。

長野市出身の尾崎は、中学時代を過ごした古巣でプロ入り。地元への思いは人一倍強く、強化部とも地域貢献のビジョンを共有したという。

「長野県も竹山と少し似ていて、高齢者が多い現状があると思う。子どもたちも含めて自分から触れ合うことができれば、試合を応援しに来てもらえることがここで分かった。パルセイロのファンを増やすこともそうだし、自分のファンを増やす意味でも、そういう活動を通して地元を盛り上げていきたい」

渡邉も出身こそ宮城県だが、「地元の方々に愛される選手になりたい」と力を込める。

小中時代を過ごしたベガルタ仙台への憧れもありつつ、「長野のあのスタジアムでプレーできるのはすごく楽しみ」。J1も含めて複数のクラブに練習参加した中で、チームの雰囲気やサッカー専用スタジアムの臨場感に惹かれたそうだ。

竹山団地プロジェクトを通して、「プレーの幅も広がった」。高齢者向けのスマホ教室では、いつもよりゆっくり大きな声で話したり、相手の目線に立って行動。ピッチ上でも大森監督から「気遣い」を求められ、味方に選択肢を与えたり、スペースを空けたり――。サッカーIQの向上も実感した。

「竹山での学びを経て、長野を活性化できるように頑張りたい。アジリティを生かした対人だったりハードワークというところで、チームのJ2昇格に貢献したい」

特別大会は「良いタイミング」
神奈川大のデュオが飛躍を誓う

2人は神奈川大の右サイドでコンビを形成。尾崎が3-4-2-1の3バック右に入り、渡邉は右ウイングバックだった。

「(尾崎)裕人みたいな足の速いセンターバックはなかなかいない。自分が前に出ていく分、背後は裕人にカバーしてもらっていた」

尾崎が後ろに控えているからこそ、渡邉は安心して攻撃に比重を置ける。168cmと小柄なサイドプレーヤーだが、憧れる長友佑都のように上下動を繰り返し、潤滑油となれる存在。守備においては対人能力の高さがあり、長野では失点減にも意欲を燃やす。

それを下支えする尾崎は、「禅が攻撃で上がったら自分も関わっていけるし、守備でも前から行ったところについていける」。長野と同じシステムで培った連係を「そのままプロで出せたら」と思い描く。185cmの長身を生かし、昨季の長野に足りなかった高さも補ってくれるはずだ。

来季は秋春制への移行に伴い、2月から6月までの半年間の特別大会となる。昇降格がなく、若手の起用にも舵を切りやすいシーズン。渡邉からすれば「プロに慣れる時間にもなるし、良いタイミングで加入できたと思う」。

昨季はJリーグ60チーム中59位。ここから千尋の谷を駆け上がるためにも、若手の底上げは必須だ。さらなる大卒の獲得も見込まれる中で、神奈川大の2人は「F+1」の理念を持ち続けながら、ピッチ内外での飛躍を誓う。


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/

たくさんの方に
「いいね」されている記事です!
クリックでいいねを送れます

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく

人気記事

RANKING

週間アクセス数

月間アクセス数