VC長野トライデンツ岡谷U15が初の全国制覇 重視した “人間力とコミュニケーション”

2025 SV-V.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP(2025年10-11月)の女子で、VC長野トライデンツ岡谷U15が初優勝を果たした。SVリーグとVリーグの下部組織が、大学/一般のネット高224cmで争う大会。VC長野でリベロとしてプレーしたOBの山本憲吾監督がチームを率いてから3年目で快挙を達成した。監督と一緒に歩んできた新旧キャプテンの言葉とともに、優勝に至るまでの軌跡をたどる。
文:大枝 史 /編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
年々「基準」を上げ続けて進化
目標とした相手を決勝で下す
決勝で戦ったのは、目標にしてきた相手だった。
Tealmare Jr. OCEAN WINS U15。
山本憲吾監督が就任して1年目の対戦は、1桁得点しか取れなかった。
「トップチームの名前もあるし、元選手という目でも見られる。就任当時にティルマーレさんに1桁得点しか取れなくて負けた時は焦っていた」

山本監督はそう明かす。2年目は同大会の準決勝で僅差の敗退。「どんなチームを作ればいいかな…という時にティルマーレさんと出会った。『こういうチームが上に行くんだ』というところからスタートしたので、越えたい思いはあった」という。
目標に定めて一歩ずつ進んできた。3年目の挑戦となった今回。10月の予選グループリーグ(1セットマッチ)は7戦全勝とする。11月15-16日の決勝トーナメント(2セットマッチ)に進むと、埼玉アザレアU15、SAGA久光スプリングスU15をともにストレートで破った。

そしてティルマーレとの決勝も25-22、25-21と連取。大会を通じて1セットも失わずに初の頂点に立った。最優秀選手に濱田稀帆、優秀選手に岩田凛と山田詩菜が選ばれた。
「本当に優勝しちゃったのかな…みたいな。すごくうれしかった」。優勝が決まった瞬間を、キャプテンとしてチームを牽引した3年生の岩田はそう振り返る。

自身は新チームになってからジャンプトスを習得し、セッター(S)として山本監督の高い要求に応えてきた。「A、Bクイック、サイドに対しての速い攻撃、時間差攻撃。僕が言うのをやらされるから、相当大変だったと思う」。笑顔を見せながら山本監督は岩田を労う。
「岩田がジャンプトスをすることで、下の世代もそれをやるのが当たり前になった」と山本監督。この言葉が象徴するように、年々チームの基準を上げながら土台を築いてきた。

KINGDOM パートナー
大切にした要素の一つは人間性
「凡事徹底」を掲げて日常送る
強いチームを作るために大切にしていた一つは、人間性だ。指揮官は「僕が来た時は声も出さない、挨拶もちゃんとできない、自分たちの荷物も(整理)できなかった」と当時を振り返る。

バレーボールの練習はもちろん、特にこのシーズンはチームスローガンの造語「相伝実来」(そうでんみらい)とは別に「凡事徹底」を掲げ、普段の生活から指導を続けてきた。
そしてもう一つが、コミュニケーション。山本監督自身がトップリーグで戦ってきた経験があるからこそ、大切にしてきた。

「上の世界に行っても、一つになっていないチームはどうしても綻びが出てしまう。そんな簡単に勝てるチームにはしたくない」
「勝ちたいんだったら、自分たちの意見を伝えることは大事。話し合いをすることでだんだんと会話も増えて、自分たちで考える力もついてきた」
岩田も「チームがバラバラになりかけていた時もあったけど、みんなで『このままじゃ勝てないよね』と話し合って乗り越えた」と振り返る。北は安曇野市、南は南箕輪村から集まった、背景が異なる選手たち。一つにまとまるのは簡単なことではなかった。

それでも、「勝ちたい」という思いがチームを一つにした。7月に行われた全国ヤングバレーボールクラブ長野県予選会。連覇を目指しながら3位に終わったのも「絶対に結果を残したいと、負けてより一層強く思った」と奮起に繋がった。
基礎から積み上げて全国の頂点
次世代もバトンを受けて成長へ
「僕が教えてきた1期生、2期生の子たちは結果が出せなくても本当に基礎からやってくれた」と山本監督は話す。決して急に強くなったわけでもなく、基本的な要素から少しずつ積み重ねてきた。
優勝後、既に新チームは始動している。今までは挑戦者の立場で挑んできたが、これからは迎え撃つ側となる。そんな新チームを率いるキャプテンに就任したのはリベロ(L)小澤藍星。

「優勝したチームとして見られてしまうから今年よりも大変になると思うけど、全員が楽しんで全力でやれる環境であれば勝てると思う。自分たちがやれるバレーをコート内で表現していくことが一番だと思う」と意気込みを語る。
Lという自ら得点を取れないポジション上、「笑顔と声を掛けて雰囲気を上げること」を意識してプレーしているという小澤。先輩たちが築いてきた土台を大事にしつつ、「言いにくいこともみんなが直接言える関係性を大事にしたい」と団結力向上を目指す。

「新チームもしんどいと思う。結果も残さないといけないチームだし、それ以外にも求められることもある」。山本監督は進む道の険しさを話すが、それを通じて人間としての成長にも期待する。

「バレーボールを通じて人間性を作っていきたい。どんなことがあっても乗り越える力だけはつけてほしい」
ただバレーボールをするだけでは何も残らない。自分たちで考える力、コミュニケーション能力を選手たちに求め続けてきたし、選手たちもそれに応えてきた。

「自分がそうだったし、バレーボールの中で人は成長するな――と再確認できた」
新チームも成長を続け、連覇に向かって一歩ずつ進んでいく。

クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
大会公式サイト
https://www.svleague.jp/special/2025u15/women/
















