2025新春対談(1)田中想来(松本山雅)×稲村雪乃(AC長野レディース)

2026年。新たな年を迎え、信州スポーツキングダムも挑戦を続けていく。今回は松本山雅FCの若きエースFW田中想来と、AC長野パルセイロ・レディースのキャプテンを務めるMF稲村雪乃の対談を企画。クラブを牽引する2人は、互いに上伊那郡宮田村出身だ。人口1万人に満たない小さな村で生まれた2人は、地元のサッカークラブTop Stoneで育ち、県を代表する選手となった。そのルーツを対談形式でたどるとともに、信州・長野への熱い思いを聞いた。
取材・構成:大枝 令、田中 紘夢
KINGDOM パートナー
2人とも上伊那郡宮田村出身
当時の記憶と新鮮な「再会」
――お2人は宮田村出身で、地元のTop Stoneでともにプレーしていました。
田中 10年以上前なので、正直あまり覚えていないです(笑)。一緒にプレーしたことはなかったと思いますけど、2個上で一番うまかった印象はあります。体は大きくなかったですけど、男子に混ざっても光るものを持っていて、「すごいな」と思いながら見ていました。
稲村 私は当時、Top Stoneの女子チーム(Rosetta)にいたんですけど、男子にもずっと交ざっていました。一緒にプレーした記憶はなくても名前は知っていたし、2個下の中でうまいというのも聞いていました。

田中 こんな感じで、うまいとしか言葉が出てこないくらい薄い関係でした(笑)。ちゃんと話したのも今日が初めてなんですよね。
稲村 そうなんですよ。でも、卒団して中学から山雅に入ったのは知っていました。今はこうしてプロになって、たくさん点を取って活躍しているので、本当にすごいなと思います。
田中 ありがとうございます(笑)。僕も高校から開志学園JSC(新潟)に行ったのは知っていましたけど、そこからパルセイロ・レディースに入って、今となってはキャプテンですもんね。それを聞いたときは、自分のことのようにうれしかったです。

――実際に話してみての印象はいかがですか?
田中 イメージ通りですね。さっきリフティングのゲームをさせてもらいましたけど、「楽しいな」と思いながら…。
稲村 ボールがあったほうが会話できるしね。
田中 自分は下手くそだな…と思ったし、もっとやりたかったですね。稲村さんは試合でもスーパーなミドルシュートを決めたりしているので。
稲村 想来くんもたくさんゴールを決めているし、J3の優秀選手にも選ばれているので…私よりもすごい(笑)。

――パルセイロ・レディースは女子チームではありますが、クラブとしてみれば松本山雅とはライバル関係にあります。そこは気にすることはないでしょうか?
稲村 特にはないですね。Uスタ(長野Uスタジアム)の信州ダービーにも行って、頑張る姿を見てきました。高3のときに(長野県サッカー選手権決勝の信州ダービーで)アルウィンで点を取ったのも覚えています。
田中 あのときはよかったですけど、そこから信州ダービーに良い思い出はないです。プロ1年目のUスタでのダービーが全然ダメで、そこがターニングポイントだったかな…。
去年は途中から(サンプロ)アルウィンが使えなくなって、Uスタもホームとして使わせてもらいましたけど、FC大阪戦でPKを外して…。別に意識しているわけではないですけど、思うように結果が出ないスタジアムという印象が強いです。

稲村 いつもホームで使っている側からすれば、スタジアムの雰囲気が良くて気持ちが入るので、だからダービーで勝てるのかな。
――松本山雅にとっては、Uスタをホームとして借りるという歴史的な一年でもありました。個人としてスタジアムに苦手意識はありながらも、パルセイロへのイメージが変わった部分もありますか?
田中 もちろんダービーのライバルではありますけど、選手からしたらダービー以外で意識することはあまりないです。Uスタを貸してもらったのはすごくありがたかったし、またダービーをやるのが楽しみになりました。
稲村 山雅は女子チームもできたんですよね。カテゴリーが違うのでダービーをやることはないですけど、高校で一緒にプレーしていた選手もいました。男女ともにダービーがあったら面白いし、それこそ連日やったら盛り上がるんじゃないかな。
田中 たしかに。それは面白そうですね。

――宮田村は人口が1万人に満たない小さな村です。そこからクラブを代表する選手が2人も生まれたのは、めずらしい現象でもあると思います。
田中 野球の水上由伸さん(元埼玉西武ライオンズ)もいて、あれだけ小さな村から3人もプロが出るのはすごいと思います。僕はJ3という下のカテゴリーですけど、水上さんと稲村さんはトップリーグなので。そこに追いつきたいし、後の人たちにも続いてきてほしいです。
稲村 パルセイロ・レディースは前キャプテンのめぐ(伊藤めぐみ/現サンフレッチェ広島レジーナ)だったり、南信出身の選手が多くいました。今は私一人だけですけど、地区トレセンのときも南信が強いイメージはありました。その中でも宮田村という小さな村から出てきて、応援されているのはすごく感じます。
田中 山雅は高森町出身の(萩原)正太郎もいるので、一緒に南信を盛り上げていきたいですね。

KINGDOM パートナー
南信の村からアスリート続々輩出
ホームタウン入りを熱望する2人
――なぜ小さな村からプロが出てくるのか、思い当たる節はありますか?
田中 南信地方は名古屋とか東海方面に近いので、そっち側の影響が強いんじゃないか?と言われたことはあります(笑)。
稲村 自分は宮田村だからというわけではないですけど、普段から男子に交ざってプレーしていて、土曜は男子の試合、日曜は女子の試合みたいなこともありました。一人でボールを蹴ることも多くて、本当にサッカー漬けの毎日だったので、それで成長できたのかもしれないです。今も周りと群れるというより、一人で何かをすることのほうが多いですね。

田中 今はキャプテンだから、周りも見ないといけないですよね。
稲村 キャプテンは絶対にできないと思っていたし、今もできているのかどうか分からない(笑)。性格的にも向いていないだろうし、学生のときもやってこなかったので…。
龍さん(廣瀬龍監督)に言われたのは、私は練習とかも一人で淡々とこなしてしまう感じなので、「周りにも発信するように」と。自分なりに頑張ってはいますけど、まだまだ殻を破りきれていないところはあります。

田中 そこの殻を破るのは難しいですよね。自分もプロ1年目は一緒にいて楽な先輩といることが多かったですけど、2年目からはもっと成長するために、「この人と一緒にいたい」と思える選手と過ごしてきました。
それが去年はたまたまキャプテンの(菊井)悠介くんでしたけど、得るものはたくさんありました。この4年間で悠介くんが山雅をどうしたかったのか、僕は毎日のように聞かされていました。
今年は悠介くんがいない中で、自分がキャプテンじゃなかったとしても、そういうことを外に向けて発信する立場になると思います。

――せっかくなので、宮田村のおすすめポイントも紹介してください。
田中 去年の住みたい田舎ベストランキングで1位だったので、間違いなく魅力はあると思います。小さい村ですけど病院もあるし、スーパーもコンビニもあるし…不便さはないですね。
稲村 ニシザワと農協と…2つスーパーがあるから十分だね(笑)。
田中 小学校は宮田小の一つしかないんですよ。僕は村民会館に3DSを持っていって、妖怪ウォッチのゲームで遊んでいました。

稲村 私はゲームもしていましたけど、友だちと鬼ごっことかサッカーとか。今はインドア派ですけど、そのときはアウトドア派でしたね。
田中 アウトドアだったら、太田切川で遊んでいました。めちゃくちゃ綺麗ですよ。
観光で遊びに行くというより、子どもができてから移住するのに向いているのかもしれないです。教育の支援も充実しているみたいだし、子育てはしやすい環境なのかなと思います。

――いずれ地元に戻りたい気持ちはありますか?
田中 僕はありますよ。本当にうっすらしか考えていないですけど、蕎麦屋とかやってみたいなと。それだったら安曇野か諏訪か宮田村ですかね。
おばあちゃんの家もあるので、「今後どうなるんだろう」と考えることはあるんですよ。結構良い家なので、リフォームして住むのもアリだなとか。畑もやっているので、農家もできます(笑)。

稲村 すごい考えてるなあ。私はセカンドキャリアのことは全く考えていないし、自分からサッカーを取ったら何も残らないので…。できるだけサッカーを続けたいですけど、いずれは引退することになるので、考えないといけないですね。
田中 お互いに高卒なので、元サッカー選手として働くのがいいのかもしれないですね。山雅で雇ってください(笑)。
――互いに高卒でプロ入りして、稲村選手は5年目のシーズンを過ごし、田中選手は4年目を迎えます。
稲村 毎年のように苦しいチーム状況の中で、長い間在籍しているので、どう変えていくかは考えないといけないですね。自分はキャプテンらしいキャプテンじゃないので、難しいところもありますけど…。
それこそ前キャプテンのめぐ(伊藤めぐみ)は、誰にでも強く言えるところがありました。自分はそういうタイプではないですけど、自分なりにできることをやっていきたいです。

田中 僕たちも去年は苦しい結果になってしまいました。個人としては9点取れましたけど、今年取れなかったら何も意味がないし、結果を出した次の年が一番大事だと思います。
ここから半年間は(秋春制移行に伴って)昇降格がないので、しっかりとチームづくりができます。自分が結果を出すことはもちろんですけど、チームを引っ張るくらいのつもりでやりたいし、もうそういう年齢になってきていると思います。
稲村 本当にしっかりしていますよね(笑)。自分はキャプテンという立場ですけど、ここまで何も力に慣れていないので、チームの順位を一つでも上げるために貢献しないといけないです。去年の終わりのほうはずっとケガをしていたので、まずはピッチに立って自分を見せたいと思います。

――地元の方々に向けて、今年の抱負を聞かせてください。
田中 「地元出身選手が活躍するとこれだけ盛り上がるんだ」というのは、去年一年で強く感じました。山雅が生きる活力になっている方もいる中で、また強い山雅を見せたいというのが一番です。見ていて面白いサッカーをして、最後にみんなで喜び合いたいと思います。
あとは宮田村でスクールとかもやりたいので、ホームタウンになってくれたらうれしいです!ぜひよろしくお願いします。

稲村 私も地元出身選手として、応援してもらっているのはすごく伝わってきます。同じ県にJリーグが2チーム、WEリーグが1チームあることはなかなかないと思うので、みんなで県全体を盛り上げていきたいです。
宮田村はパルセイロのホームタウンによろしくお願いします(笑)。

――せっかくの機会なので、お互いへのエールもお願いします。
田中 ケガをしていたみたいなので、まずはそこをしっかり治して頑張ってほしいです。
話していてもキャプテンとして責任感があって、チームのことをすごく考えているのが伝わりました。そこは僕も見習わないといけないし、そういう気持ちがある選手は重宝されると思います。ずっと結果をチェックしているので、活躍してほしいですね。
稲村 2個下の後輩ですけど、こうやって話してみるとすごくしっかりしているなと感じます。地元での活躍もそうですけど、もっと上の舞台でプレーする姿も見てみたいなと思いました。頑張ってください!















