【Farewell-column】ケガを乗り越え海外移籍 AC長野レディース・橋谷優里

生え抜きのセンターバックが海外に飛び立つ。AC長野パルセイロ・レディースは1月6日、DF橋谷優里の海外挑戦による離脱を発表した。日体大FIELDS横浜(現日体大SMG横浜)から加わって5年。度重なるケガに苦しみながらも、精神的支柱としてチームを支えてきた。移籍を決断した理由と、長野に寄せる思いとは――。

文:田中 紘夢

海外志望を持ってWEリーグ入り
元同僚にも感化され28歳で決断

「もともと海外志望は持っていたけど、ケガの不安だったりタイミングもあって、なかなか踏み出せなかった」

日体大FIELDS横浜からWEリーグ元年の2021年にプロ入りし、5年にわたって在籍。副キャプテンや選手会長としてチームを束ねる中で、同僚が海外に移籍したり、タイキャンプを張ったり――。世界に目を向ける機会が身近にあった。

近年は長期離脱をともに乗り越えたFW中村恵実(ハリファックス・タイズFC)と、日体大同期のDF岡本祐花(バンクーバー・ライズFC)がカナダに移籍。親しみ深い2人からの「楽しいよ」という言葉にも惹かれた。

「日本だと経験できないことも多くて全部が新鮮だし、サッカーだけじゃない楽しさがあると聞いた。引退後もサッカーに携わる仕事がしたいので、そういう意味でも海外を経験してみたかった」

知人の紹介をもとに、昨年12月半ばに話が進展。慌ただしい年末年始を過ごし、すぐに移籍がまとまった。WEリーグのシーズンはまだ半年残っており、「このタイミングで抜けるのは申し訳ない」と思いながらも、28歳と脂の乗った時期に大きな決断をした。

ケガとの戦いから得た発信力
廣瀬龍監督も厚い信頼を置く

長野での5年間は、ケガとの戦いが続いた。

1年目は脳震盪の後遺症に苦しみ、2年目も右膝前十字靭帯断裂および外側側副靭帯損傷で長期離脱。復帰後もまもなく右膝半月板損傷を損傷し、2度目の手術となった。

それでも同じく膝を手術したMF國澤志乃や中村と、リハビリをしながら励まし合ってきた。橋谷は人懐こく、情に厚い性格。2度目の手術から練習復帰した際には「おかえり」と温かく迎え入れられ、涙を拭いながらウォーミングアップをこなした。

「とにかく人に恵まれて、大好きな選手たちと大好きなサッカーができた。ケガはしんどかったけど、みんなとプレーしたかったからこそ復帰を目指せた」

復帰の過程で得られたものもある。チームを客観視して状況をくみ取り、ミーティングなどで発言。「外から見ているからこそ伝えられた」と話すように貴重な発信源となり、ピッチに立ったときもリーダーシップを発揮した。

「龍さん(廣瀬龍監督)がそういう役割を求めてくれて、プレーできなくても必要とされていると感じられた。プレーできないとメンタルが落ちてしまうけど、求められているからこそ頑張らないといけない。それがモチベーションにも繋がっていたので、龍さんに感謝したい」

昨季は副キャプテンを担い、今季も選手会長としてチームを牽引。厚い信頼を置いた廣瀬監督は、替えの利かない選手であることを話す。

「試合に出る出ないは関係なく、意見を言える存在だった。若手にも慕われていたし、チームに愛情を持って接してくれた。それに代わる選手はなかなかいないので、大きな痛手には違いない」

「海外でプレーできるのは本人も楽しみだろうし、次のキャリアにも繋がると思う。良い経験になればいいし、もちろん応援したい」

「挑戦するなら今しかない」
指導者の道も見据えて世界へ

今季は前キャプテンのMF伊藤めぐみ(サンフレッチェ広島レジーナ)、ベテランのDF坂井優紀(マイナビ仙台)と精神的支柱が抜けた中で、橋谷にかかる比重も大きかった。

開幕からスタメンを張り、ここまで10試合に出場。プロ5年目の半年を終えてキャリアハイとなった。

心身ともに痛みも抱えながらも、リーダーとして踏ん張りを効かせてきたが、チームは8連敗と苦しい状況。このタイミングでの移籍には心残りもある。

「正直、荷は重かった。意識高くやってきたつもりだけど、この半年は何もできなかったと思っている。このタイミングで抜けるのは申し訳ないし、年下の選手たちが多いからこそ、もっと伝えられたらよかった」

それでも、「挑戦するなら今しかない」。

28歳と脂の乗った時期で、試合数もコンスタントに重ねられるようになった。ケガと向き合う中で引退も考えたが、海外に出向かなければなおさら未練が残る。そのチャンスが訪れた以上、逃すわけにはいかない。

選手生活を終えた後は、指導者の道を歩むつもりだ。神村学園高等部(鹿児島)で吉永輝彦監督に出会ったのがきっかけ。同校を常勝軍団に引き上げた指揮官に憧れ、「あのくらいすごい人になりたいと思った」。異国の地で伝え方を学び、それを次のキャリアにも還元する。

1月上旬にチームを離れて海外へ。会場の関係で非公開練習が続き、サポーターに直接別れを告げることはできなかった。大卒から支えられてきたオレンジの同志に思いを馳せる。

「毎年結果が出ない時期もあったけど、そんな中でもずっと応援していただいた。寒い日も暑い日も練習場だったりスタジアムに来てくださって、とにかく感謝しかない。本当に長野に来てよかった」


クラブ公式サイト
https://parceiro.co.jp/
長野県フットボールマガジン Nマガ
https://www6.targma.jp/n-maga/

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