松本慶彦×田中智基「“不惑”過ぎても何のその トップ走るベテランの共鳴」

今回の対談企画はズバリ「ベテラントーク」。バレーボールSVリーグで現役最年長となる45歳のレジェンド・松本慶彦(VC長野トライデンツ)と、フットサルF1リーグで強烈なインパクトが光る40歳の田中智基(ボアルース長野)の2人が初めて出会った。身体のケア、若手へのアプローチ、そして国内トップリーグの第一線に立ち続ける思い――。共通するさまざまなトピックスを語り合った。
取材:大枝 令
KINGDOM パートナー
40代で現役生活にこだわる2人
「やめた後の自分想像できない」
――本日はよろしくお願いします。まずお二人の接点などはありましたか?
田中 いえ、今までは全くないですね(笑)。
松本 チームのことは知っていますけど、お会いするのは初めてです。
――お互いの第一印象はいかがでしょう?
松本 僕は日頃から大きい選手たちの中にいるので、田中選手は小柄な印象です。フットサル選手の中ではどうなんですか?
田中 (身長170cmは)普通ですね。大きくても180cmくらいです。
松本 でも髪型の印象がね。結構すごいですね(笑)。
田中 40歳になったので、初めて(金髪に)チャレンジしてみました(編集部注:その後2月末に丸刈りにイメージチェンジ)。
松本 ようこそ40代へ!

――田中選手は松本選手にどんな印象をお持ちですか?
田中 やっぱり大きいですね。でもバレーボール界では小さいと聞いたんですが…そうなんですか?
松本 193cmありますけど、基本的には高い選手が務めるポジション(ミドルブロッカー)なので。SVリーグの他チームは2m級の選手がいます。
――お互いに40代で、松本選手はSVリーグ現役最年長選手ですよね。現役であり続けることへのこだわりはお持ちですか?
松本 競技を始めた頃は長くやることが目標ではありませんでした。日々の積み重ねで、その延長線上という感じです。その気持ちは今でも変わりません。長く現役をしていますが、求められることも日々変わってきています。
その時代のトレンドに僕ら選手も沿ってプレーすることが求められます。技術も体力もアップデートすることが楽しくて続けられていますし、それを維持し続けるために頑張っています。

田中 僕も同じです。楽しいですよね。
松本 そうですね。
田中 フットサルやサッカーもそうですけれど、バレーボールもブラジルは強いですよね?
松本 はい。
田中 ブラジル人はサッカーをすれば家族が恵まれるし、たぶん逃げ道がない。僕はブラジルが好きなので、「逃げる」という選択肢がなくて続けられているんだと思います。

松本 僕もあまり逃げ道は考えていないです。「やめよう」と思う波はありますけれど、そこを何とか頑張ってみようと思って頑張れているので続いていますね。
――そのモチベーションを生み出しているのは“楽しさ”ですか?
松本 それもあります。トライし続ける楽しさがあります。ここで頑張れば何か新しいことができるようになるかもしれないという気持ちですね。そういう発見が欲しくて頑張っているのかもしれません。
田中 僕の場合は「そろそろ(引退しても)いいかな」という瞬間です、今も。でも、ボールを蹴っていない自分が想像できないんですよね。
松本 あー、分かる気がします。
田中 フットサル以外に何が自分にあるのかな…と。やめた後の想像ができないからどうしようって。だから、続けられるだけ続けたいと思っています。
松本 分かります。僕もコーチや監督が視野にないわけじゃないけれど、プレーから離れることが想像できない気持ちはめっちゃ分かります。

KINGDOM パートナー
チーム最年長だからこその難題
若い選手へのアドバイスに悩みも
――年齢を重ねることでフィジカル面への意識は変化していますか?
松本 食事は気を付けています。結婚後は妻に「頼む!」と言って任せっきりでしたが、今は単身赴任なので…。
田中 そういえば、長野に移籍する前のチームは長かったんですよね?
松本 (日本製鐵堺ブレイザーズに)16年いて、17年目で移籍しました。
田中 大阪といえば、僕も天王寺に住んでいたことがありましたよ。
松本 えっ、そうなんですか⁉︎

田中 Fリーグが始まるタイミングの2007年。最初は神戸のチーム(デウソン神戸)だったので、天王寺のスポーツショップで働きながらプレーしていました。
松本 じゃあ、割と近くにいたんですね!
――田中選手はフィジカル面についていかがですか?
田中 ワットバイクって分かりますか?今季から取り入れました。
松本 あー、ありますよね。心肺機能を高めるための?
田中 そうです。週2回やるようになって劇的に変わっています。たぶん今が一番動けます。
松本 あれって、相当キツくないですか…?
田中 本当にキツいです。5分くらいで終わりますけど、普通にぶっ倒れます。練習や試合では感じないくらいの疲労度が一気にきます。

松本 僕も堺でワットバイクの経験がありますけど、慣れないと気持ち悪くなるほどキツいですよね。
田中 キツいといえば、学生時代の貯金があって今もやれているのかなとも思います。半端じゃなく厳しい経験をして肉体的にも精神的にも鍛えられて、それがあるから今も戦えているのかなと。
松本選手は僕より少し上の年代なので、学生時代は半端じゃなく厳しい思いをしてきましたよね、きっと。僕もそうでしたけれど、あの理不尽な経験があったから今も戦えていると思うんです。
松本 具体的には言いづらいですが…そういうことですね(笑)。その積み上げが今に生きていることは僕も感じます。

田中 バレーボールって球が速いですよね。どれくらい出てるんですか?
松本 スパイクは110km/hくらいですかね。サーブもワールドクラスだと130km/hとか出ます。でも、フットサルは腕よりパワーが強い脚を使うじゃないですか?
田中 シュートで100km/hちょいだと思いますが、ボールが重たいので痛いです。
松本 堺にいる時にイベントでフットサルを体験したことがあるんです。シュライカー大阪の選手とPK対決をしたんですが、重たいですよね。バレーボールもそうですが、「ボールが来てから反応してプレーする」というレベルじゃない。予測と準備があって、どれだけ反応できるかという速さですよね。

田中 そうですね。やっぱりバレーボールも予測して動くんですか?
松本 相手のローテーションや特徴を考えて予測します。それがないと反応できませんね…。
田中 相手の特徴はやっぱり、ミーティングで共有して試合に臨むんですか?
松本 試合の前日のミーティングで共有されます。特に相手のセッターの特徴で(ミーティングの内容が)変わってきますね。プレーを選択する確率の部分が違ってくるので。
田中 緻密ですねー。試合中でも映像を見ながらベンチから指示が出ることがありますか?

松本 はい、アナリストがいるので。フットサルもフォーメーションとか戦術とか、細かい部分はやはりありますよね?
田中 あります。でも、チームとしてやることはある程度変わりません。ボアルースの場合は前からプレスかけるディフェンスですね。
――フットサルでもミーティングで戦い方を共有することがあると思いますが、準備していたことと違う現象が起きた時にどう対応していますか?
田中 長年やってきた経験で瞬時に(プレーの選択肢を)引き出して動けますけど、若い選手と一緒にプレーすると自分の動きと違うという場面が多々あります。その時にどうやって声を掛けるかは勉強中です。
松本 さじ加減が難しいんですよね。あまり言いすぎても。

田中 (若い選手は)萎縮しちゃう。でも言わないと何も考えずにプレーしちゃう。昔みたいに頭ごなしに言うのも通用しませんしね。
松本 そうなんですよね。言いすぎても相手が引いちゃうし、言わなければ動けない。どう伝えれば動いてくれるか…って難しいです。
――VC長野トライデンツもボアルース長野も若い選手が多い分、言葉選びや声掛けのタイミングは気を遣いますか?
松本 めちゃめちゃ気をつけています。僕が学生時代に味わったように「右向け右」で全員が同じ方向を向くやり方が良いとは思わないですが、チームで動く以上は同じ方向を向かないと困ることもあります。それをどう伝えていくか…。
田中 それが基礎じゃないですか。チームとして同じ方向を向いて、その上で個々の判断とか応用をストロングポイントとして出していく。基礎がないと好き勝手やるだけ。その基礎の部分を僕らは、学生時代に有無を言わさず叩き込まれましたよね。

松本 土台をがっつり固められましたね。土台があった上で個々の判断でプレーすることは好き勝手とは違う。その意識が今の選手たちは混在している感じです。理不尽を経験していなくても、志が高い選手は土台が固まっている場合がある。今はチーム内でベクトルを合わせていくことに時間を割くことが多いですね。永遠のテーマかもしれません。
――やはり、年長者として経験を還元したい、チームを引っ張りたいという思いからでしょうか?
松本 先ほどブラジルの話が出ましたけれど、僕も日本代表の時にブラジルで練習したことがあります。海外の環境を見ると、日本がいかに恵まれているかが分かります。ブラジルの選手は熱がすごい。結果を出せば生活が保障されるのでアグレッシブにトライしています。
僕も人生を懸けてバレーボールをやっていますが、彼らはまさに命懸け。それを若い選手に伝えたいけれど、肌で感じてみないと伝わらない部分もありますよね。

田中 フットサルはアップの時に遊び半分でミニゲームをすることがありますけれど、ブラジル人はそのゲームでもマジギレしてきます。それくらい勝負事に対して真剣。そのハングリーさが日本人と違います。だから、松本選手が言った通り、チーム内で同じ方向を向いて戦っていくことって本当に大変。でも僕らは選手だから強く言えるわけじゃないし…。
キツくても身体にムチ打って走る
地域のために子どもたちのために
――お二人とも所属チームが国内最高峰リーグに参戦し、なかなか勝てない中で奮闘しているという共通点があります。トップリーグにいる意味、勝てない中でも食らいついていくことの大切さをどう考えていますか?
田中 松本選手は長野に帰ってきて1年目ですよね。そもそも、「地元に帰る」って挑戦じゃないですか?
松本 めちゃめちゃ挑戦です。

田中 僕がいつも言っているのは、長野のチームだから長野の選手が増えてほしいということです。地元の選手が活躍することが何より大事です。それがチームの成長に繋がります。きっと松本選手はそういう思いもあって帰ってきたんだと思います。
やっぱりトップリーグでプレーすることが説得力に繋がります。コーチとして伝えるのと現役で伝えるのは全く違うと思っているので現役で勝負しています。若いうちは毎日を必死にやるだけでしたが、今はいろいろなことを考えながらやっています。それが自分のためになっている…と思う半面、やっぱりキツい。バカなんですかね(笑)。
松本 そうなんですよ、キツい、キツい(笑)。
田中 キツいことやって、「オレ何やってるんだろう」って。
松本 あるあるある。

田中 なんで40にもなってキツいことやるんだろう…って毎回思うのに、必ずやっちゃう。
松本 本当にその通りです。どうしてこんなことやってるのか…って思うことありますけれど、長野に帰ってきたのもトップリーグだからこそだと思うんですよ。やらなければいけないという使命感もあります。注目度を考えてもトップリーグじゃなければダメなんです。だからキツいけど、やる意味は大きいと思ってます。
――若手以上に取り組む姿勢を示さなければいけないという意識ですか?
田中 何を言うにしても、みんなと同じメニューをこなした上でじゃければ価値がないと思います。そういうプライドもありますし。
松本 ただ“いる”というだけの存在にならないようにですね。そうなってしまったらいる意味がない。

――信州のスポーツ界が持っている可能性やポテンシャルをどう感じていますか?未来に向けた思いも聞かせてください。
松本 僕は高校を卒業して以来の長野です。何かできないかという思いもあるし、最年長で最前線に立ち続けているということを知ってもらいたい思いもあります。長野にはバレーボール以外にも、トップリーグで活躍しているスポーツやクラブがありますよね。長野のチームがトップリーグで戦って、もっと言えばトップリーグの上位に食い込んでいけるように、僕なりにできることをしていきたいと常に思っています。
田中 長野はスポーツが多いし、メディアに取り上げてもらう機会も他の地域より断然多いと思います。可能性はいっぱいあります。僕たちトップリーグで戦う選手やチームが結果を出すことで、子どもたちに目指したいと思ってもらえるようになれば一番です。子どものパワーは半端ないです。
――これからも第一線でのご活躍を期待しています。
松本&田中 ありがとうございました!
クラブ公式サイト(VC長野トライデンツ)
https://vcnagano.jp/
クラブ公式サイト(ボアルース長野)
https://boaluz-nagano.com/
















