“昇格請負人”小林伸二氏が新監督に就任 その手腕に託されたAC長野の再建
名伯楽が、眠れる獅子を揺り起こす。AC長野パルセイロは2026年3月31日、藤本主税監督の解任と、小林伸二新監督の就任を発表。昨季から数えて13連敗(PK負けを含む)の成績不振を受け、明治安田J2・J3百年構想リーグでは60チーム中初となる監督交代に踏み切った。過去に5クラブを上位カテゴリーに導いた“昇格請負人”のもと、どう生まれ変わるのか――。前体制を総括しながら、未来図を展望する。
文:田中 紘夢
求めたかった選手間の「繋がり」
ピッチで体現できず続いた低迷
このチームの強みは何か――。
藤本主税監督の就任から1年3カ月が経っても、その問いの答えは見つからなかった。
本来であれば、「繋がり」という答えを導き出したかったのだろう。
藤本監督は前任のロアッソ熊本で大木武監督の右腕を務め、人とボールが動くサッカーに共鳴してきた。長野での就任1年目は同じ3-1-5-1のシステムを採用し、各ポジションのローテーションも取り入れた。

しかし守備面において1アンカーは心もとなく、序盤戦で頓挫。その後は3-4-2-1に変えたものの、システムの型にハマって動きがなくなった。
就任2年目の今季は4-4-2に様変わり。可変システムも取り入れたが、相変わらず繋がりは希薄なままだった。高精度の左足を誇るセンターバック・附木雄也からクサビが入っても、受け手に対して3人目の連動がない。
「サッカーは一人ではできない。だからこそ攻守において繋がりが必要だし、それは気遣いとも言えると思う。そこの拙さを感じるところはある」
実際、附木がそう明かしたこともある。

練習ではスモールコートのセッションが多く、必然的に選手間の距離は縮まる。ただ、それをフルコートで体現できたとは言いがたい。条件が複雑なロンドもポゼッションも、「練習のための練習」になっていた側面は否定できない。
最後は連敗がかさむ中で、FW大﨑舜のポストプレーに頼った単調なサッカーへ。付け焼き刃的に取り入れたロングスローも含め、目指すスタイルの輪郭がぼやけていた。相手監督に「迷いが見える」と言われるくらいだから、選手たちにも迷いはあったのは想像に難くない。

パッションは選手に伝播しても
歯車を噛み合わせられず苦闘続き
「甘かった」
そう藤本監督が言い残した昨季の最終節から、今季はアプローチが変わった。
練習からささいなミスや強度不足にも目を光らせ、ピッチ一面に声を響かせる。その指揮官の熱意に動かされるように、選手間の要求も高まっていた。

しかし裏を返せば、それは外発的動機なのかもしれない。ましてや結果という成功体験が得られなければ、主体性が徐々に削がれていくのは必然の成り行きでもあった。
試合に向かうまでの1週間全体を通してみれば、強度は上がっても入りの緩さは変わらない。各自に委ねられたウォーミングアップを終え、ファーストセッションのロンドへ。指揮官は昨季から「エクササイズではない」と言い続けてきたが、肩慣らしのような雰囲気は変わらなかった。
日常的なストレスもあった。練習後恒例の20分ジョグが負担となり、ケガやパフォーマンス低下に繋がる選手も。そのほかにもピッチコンディションの影響でグラウンドを転々とし、夕方まで次の日の予定が決まらなかったり。大小の問題点はピッチ内外で噴出していた。

就任以降の46試合で9勝8分29敗。この1年3カ月は暗中模索の日々が続いた。それでもチームの士気を繋ぎ止められていたのは、藤本監督の熱量があってこそ。実際に副キャプテンの大野佑哉は、最後まで「あの人のために勝ちたい」と口にしていた。
そもそも藤本監督にとって、指揮官の立場は初めて。就任1年目からの道程を十分にサポートできる体制さえ整っていれば、未来は変わったかもしれない。スタッフ陣の組閣も含め、見立てが楽観的すぎてはいなかったか――。
後任は百戦錬磨の“昇格請負人”
新指導陣で今度こそ土台構築を
後任は65歳の小林伸二監督に決まった。
強化責任者の西山哲平スポーツダイレクターは現役時代、大分トリニータで小林監督から指導を受けていた。かつての恩師を招へいし、再建を託した形だ。
昨季まで栃木SCを率い、J2昇格プレーオフ圏手前の7位でフィニッシュ。アウェイでの最終節で長野に4-0と大勝したのは記憶に新しい。

システムは3-4-2-1。長身の3バックを中心に堅く守りつつ、ロングボールを駆使して縦に速く攻めてきた。前線のターゲットマンを起点に、機動力あるシャドーとウイングバックが仕掛ける形。守備の規律を徹底しつつ、攻撃は至ってシンプルだ。
本格的な堅守速攻となれば、2019年から3年間指揮した横山雄次監督以来。まずは4戦17失点(1試合平均4.25)の守備の立て直しが最優先だろう。選手選考においても球際やセカンドボール、切り替えを重視するに違いない。強度不足を補うには最適な指揮官と言える。
過去に5クラブを上位カテゴリーに導いた昇格請負人は、「右腕」も引き連れてきた。モンテディオ山形、徳島ヴォルティス、ギラヴァンツ北九州で共闘した長島裕明ヘッドコーチ。徳島での監督経験もある59歳が、コーチ陣に不足していた経験値をもたらす。
システムも現行の4-4-2から、小林監督が親しんできた3-4-2-1に変わるかもしれない。トレーニングも含めて変化は少なくないだろうが、まずはスタイルの輪郭を描き直し、戦える集団へと変貌を遂げられるか。
小林監督はJリーグ通算736試合を指揮し、昇格に導くこと5回。確かな実績を持つ名伯楽のもと、獅子たちは目を覚ます。

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