「長野のチカラをシンジてる」 小林伸二体制初陣、点と点が線で繋がった1勝

冷たい雨が降る藤枝の雲間から、オレンジ色の光が差した。2026年4月4日、J2・J3百年構想リーグ第9節。AC長野パルセイロはアウェイで藤枝MYFCに挑み、2-0で快勝した。格上のJ2クラブから今季初勝利。昨季から数えて実に14試合ぶりの白星を挙げた。今節を前に就任した小林伸二新監督が指揮を執った1週間で何が変わったのか。藤本主税前監督の教えも胸に、点と点が線で繋がった瞬間を振り返る。
文:田中 紘夢
小林伸二監督が求める「繋がり」
藤枝のクロス攻撃に動じない対応
「攻撃の時にボールサイドと逆サイドが繋がる。守備のボールサイドでプレッシャーをかけている時に逆サイドの意識がある。そういう繋がりがあるチームにできれば」
就任初日の練習を終えた小林監督が囲み取材で語った「繋がり」というキーワード。同サイドで隣り合う選手だけでなく、逆サイドにまで意識と動きを繋げた結果が2-0というスコアに表れた。

試合を通じたボール保持率は藤枝の67%に対して長野は33%。ホームの藤枝がボールを握り、アウェイの長野が守勢に回る展開だった。小林監督が踏襲した4-4-2に対して3-4-2-1のシステムで臨んだ藤枝がミスマッチを生かし、サイドから前進する場面は何度もあった。
それでも獅子たちは動じない。ボール側のサイドバックとサイドハーフがチャレンジアンドカバーを徹底して守りつつ、クロスに対しては逆側のサイドバックやボランチが絞って中を固めた。

前半アディショナルタイムには自陣右サイドからインスイングのクロスを上げられると、ボールはDF大野佑哉の頭に当たってファーへ。落下点で待ち構えていた相手にヘディングシュートを許したが、反転して正体したDF田中康介が頭で跳ね返した。
田中は直前までマークを視野に入れながら、ボールが自分の頭を越えるとすぐさま体の向きを変えてシュートブロック。小林監督が求めた原理原則に忠実な対応と、ボールサイドと逆サイドの繋がりを絶やさない意識が形として現れたシーンだった。田中の力強いガッツポーズと同時に前半終了の笛が鳴り、1-0とリードして後半へ折り返した。
藤本主税前監督の教えも結実
変わるための第一歩を踏み出す
攻撃でもボールサイドと逆サイドが繋がった。65分に追加点を奪ったシーンは象徴的だ。
左サイドハーフのMF近藤貴司がボールを奪ってショートカウンターを発動。クロスに対して3人がゴール前になだれ込み、最後は右サイドハーフのMF安藤一哉がファーで押し込んだ。

「逆サイドからカズ(安藤)が入ってきたことがすごい」とスコアラーを称える近藤に対し、安藤本人は「主税さん(藤本前監督)からミーティングで『あそこに入れ』と毎回言われていた。あの人から教わったことを体現できた」と振り返る。
小林監督は逆サイドの繋がりに加え、攻守の切り替えもキーワードに掲げていた。それに藤本前監督が求めてきたファーに詰める原則も相まって、ゴールという形で実った。点と点が線で繋がった瞬間と言えるだろう。

「主税さんを慕ってきた選手もたくさんいる。主税さんが残してくれたものを生かしながら、新しく伸二さんの下でやっていく。『みんなプロだな』と思ったし、こうやって結果を残せたことが本当に嬉しい」
そう話す安藤だけでなく、チームとして思いは一つに繋がっていた。副キャプテンの大野佑哉は言う。
「主税さんだったりイシさん(石原田啓太前ヘッドコーチ)のことをただの犠牲で終わらせてはいけないという気持ちは、みんなが持っていた。僕自身は主税さんとまだまだ一緒にやりたかったし、切り替えるのも大変だったけれど、主税さんのためにも変わらないといけない」

新体制初陣を2-0と制して今季初勝利。昨季から続いていた長く暗いトンネルを抜け、チームが変わるための第一歩を踏み出した。
ゴール裏に掲げられた言葉の真意
「これからがこれまでを決める」
「長野のチカラをシンジてる」
ゴール裏に掲げられた横断幕のメッセージが結束力を物語っていた。

第5節で松本山雅FCとのダービーに0-5と敗れて以降、チームとサポーターの関係性は揺らいでいた。ホームで応援歌が消えたり、試合後に激しい口論が交わされたり――。傷は癒えることなく、仲違いのような形で監督交代の時を迎えた。
それでも、サポーターは藤本監督と過ごした日々を無下にはしていない。その思いが「長野のチカラをシンジてる」の言葉に込められている。

藤本主税(チカラ)監督体制の1年4カ月を糧に、小林伸二(シンジ)監督の下で立ち上がるという決意表明。それを受け取った獅子たちは、プレーと心の繋がりを絶やさなかった。小林監督はその戦いぶりを称える。
「今週はいろんな選手がストレスを受けてやってきたと思うけれど、こうやって勝つことによって前に進んでいるのは素晴らしいなと。何よりもそこがまずは第一歩なのかなと思う」
「我々にとってこの1勝はすごく大きい。おごることなく毎日の練習をきっちりとやれば、また変化があるんじゃないか」

今日より明日、明日より明後日――。小林監督は初日からそう選手たちに訴えかけてきた。それは藤本前監督の言葉で言い換えれば、「これまでがこれからを決めるのではなく、これからがこれまでを決める」ということだ。
日々の点と点が線で繋がった先に、オレンジの光に満ちた未来が待っているはずだ。
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