SV2年目は苦難の道のり歩むも ラストゲームは心一つに笑顔の締めくくり

開幕2連勝から始まった夢は、27連敗という悪夢に変わった。それでも最後は全員が一つになった。2026年4月18-19日のSVリーグ最終節、VC長野トライデンツはジェイテクトSTINGS愛知とアウェイで対戦。GAME1は0-3で敗れたが、GAME2はフルセットまで持ち込み、「後半戦の中では一番良い試合」と工藤有史が振り返る内容でSVリーグ2シーズン目を締めくくった。古田博幸監督代行が掲げた「バレーを楽しむ」は確かに浸透し、来シーズンへの希望を残した。
文:大枝 史
KINGDOM パートナー
全力疾走での入場
自分たちで考えた最終戦
時計の針が13時25分を示すと、岡崎中央総合公園総合体育館にどよめきと笑いが沸き起こった。
VC長野トライデンツの選手入場シーン。背番号1のミドルブロッカー(MB)山田航旗が全力疾走でコートに現れると、続く選手たちも全力疾走で入場した。

「最後なので『自分たちがやりたいようにやろう』と話していたので、ああいう入り方をした。怒られはするけれど(笑)、楽しかった」。アウトサイドヒッター(OH)工藤有史が明かす。

SVリーグ最終節、ジェイテクトSTINGS愛知戦GAME2。今シーズンの最終戦を前に選手たち自ら楽しもうとする姿勢を試合開始前から見せた。
その予兆は前日からあった。
GAME1第3セット、0-1のシーンだ。
相手サーブを工藤が綺麗に返すと、山田とオポジット(OP)岸川蓮樹が同時にクイックに入る。その岸川の外側、空いたライト方向に工藤が走り込み、完全にフリーな状態でアタックを放った。

「岸川選手が入っている時はダブルクイックができるので、そういうのもアリなんじゃない?と工藤選手と話していた。『S1ローテ(セッターが後衛に下がった時のローテーション)の時はやろう』と話をしていたけれど、ちょっと合わなかった」とセッター(S)中島健斗は明かす。
相手の意表を突く奇襲攻撃。前衛に工藤と岸川がいるローテーションでしか使えない限定的なパターンだったが、自分たちで考えて実行した。

古田博幸監督代行も「時間差攻撃的な良いバレーをやっていたので、楽しそうだと思った。『やれ』とは言っていなくて、自分たちで練習していた」「選手が発想を持ってくれたし、自分たちで何かをやろうとする意識は高まった。そういう面ではやりがいがあったシーズンだと思う」と笑顔を見せる。

やりたいことができなかった試合が多かったシーズンだったかもしれない。
それでも最終戦は丁寧にサイドアウトを取り続けたし、ブロックディフェンスを機能させて粘り強くラリーに持ち込んでブレイクを取り、フルセットまで持ち込んだ。

「後半戦の中では一番良いと言ってもいいぐらいの試合だった。内容も含めてやりたかった試合ができたと思う」と工藤。指揮官も「色々な面で今日はパーフェクト」と選手たちを称えた。
あと一歩及ばずに敗戦となったが、全員が一丸となってバレーボールを楽しみ、笑顔でのフィナーレを迎えた。
KINGDOM パートナー
開幕2連勝と理想的なスタート
完成度の優位性が消えて苦しむ
シーズンを通して、大事な局面の1点に泣くケースが多かった。最終成績は5勝39敗。最下位でSVリーグ2シーズン目を終えた。
開幕節で日本製鉄堺ブレイザーズに2連勝という最高のスタートを切ったものの、第2節からはコンディション不良者が相次ぎ、勝ち切れない試合が続いた。ウルフドッグス名古屋戦GAME2、第3節東京グレートベアーズ戦GAME1、第4節東レアローズ静岡戦GAME2――。いずれもフルセットの末に敗戦を喫した。

そうした試合で得たはずの手応えは、いつしか「勝たなければならない」という焦りに変わった。第3節が終わった段階で「こことここには勝って、年内で勝ち星を五分にしたい」と皮算用を始めている選手もいた。

受け身に回っていくうちにチームは勢いをなくし、焦りはいら立ちへと変わる。VC長野がまとまりを欠いている間に、他チームは完成度を高めていく。シーズン開幕前の早い段階からボールトレーニングをしてきた完成度の優位は消え、むしろ差をつけられる格好になった。チームからは笑顔が失われ始め、出口の見えないトンネルに入ってしまった。

「チャレンジする気持ちを意識的に薄くしたわけではないが、守りに入っていたのは間違いなくある。変われるきっかけは勝つことしかなかったけれど、そのきっかけをつかみきれないままだった」と工藤は振り返る。
連敗が続く中、2月19日には川村慎二監督の休養が発表。第15節のWD名古屋戦からは古田コーチが監督代行として指揮を執ることとなった。
もがく中でそれぞれが見つけた
「バレーを楽しむ」ことの意味
古田監督代行が着手したのは「バレーを楽しむこと」。そのために選手一人一人とコミュニケーションを今まで以上に積極的に取った。
戦術面では相手Sがトスを上げる前に跳ぶコミットブロックを多用した。「やはりVC長野の選手は身長がない難しさはあったから、VC長野の戦い方は絶対にあると思う。たとえ違うところに上げられて決められてもいいから、自分が思っていったところに対して責任を持ってほしい」。

そうした割り切りが選手の迷いを振り払い、やるべきことを明確にした。
「今までは『レフトに跳ぶ』と決めても行ききれなくて遅れてしまうこともあったけれど、古田さんの助言もあって思い切りいく割り切りが以前より実行できて、それが良い形になって出た試合もあって非常に良かった」とMB安部翔大は明かす。

そうして決まったブロックはチームを盛り上げ、雰囲気を明るくする。勝利に繋がるプレーが出たとき、練習でやってきたことが試合に生かせたとき。それぞれの選手が考える「バレーを楽しむ」ために必要な役割を全うしようと試みた。

自分に矢印を向け続けることは、決して簡単なことではない。
それでも最後には全員がやるべきことをやり、シーズンを締めくくった。

「この苦しみを選手が自分の中でどう思えるか。『今年はこうだったな』で終わるのと、『二度と繰り返したくないから来シーズンに向けて頑張ろう』という気持ちを持って入っていくのは全然違うと思う」
「苦しんだこのシーズンを、選手たちがどうとらえるか。それが来シーズンの成長として表れる」
指揮官はそう振り返る。

5勝39敗と、昨年に比べれば白星の数は半分。数字だけ見ても苦しいシーズンだった。それでも最後は全員が一つになり、自分たちで考え、バレーを楽しんだ。
新しくなったチームが、一回り大きく成長した姿でSVリーグ3年目を戦うさまを楽しみに待ちたい。

SVリーグ第22節 ジェイテクトSTINGS愛知戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div22-1
https://vcnagano.jp/match/2025-2026-sv-div22-2
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461
















