“プリンス仕込み”の松本国際 市立長野を圧倒して7年ぶりのインターハイへ

それは、一瞬たりとも勝機を手放さない完勝劇だった。長野県高校総体サッカー競技は2026年6月8日、長野市の長野Uスタジアムで松本国際-市立長野の男子決勝を行い、立ち上がりから攻守で圧倒した松本国際が3-0で快勝した。7年ぶりに頂点に立った松本国際は、県代表として7月25日から福島県広野町のJヴィレッジスタジアムなどで開催する全国高校総体(インターハイ)に出場する。
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相手のみ込む勢い
意識変えた後半に怒涛の3得点
両校のチームカラーは大きく異なる。
自陣から丁寧にパスをつないで前進を図る市立長野に対して、松本国際はフィジカルの強さを前面に出して勢いを生むパワーが持ち味。この日の決勝は、試合開始を告げる主審の笛と同時に松本国際の黄色が市立長野の紫色をのみ込んでいった。

松本国際の前線は、髙山恋寿と田中智樹が組む2トップの下に飯ヶ濵咲介と馬上琉太の2人が横に並ぶ形。市立長野がボールを持つと、この4人が猛然とプレスをかけて相手の重心を後ろに下げさせた。高い位置でボールを奪えばペナルティーエリアの外からでも積極的にシュートを狙い、ロングボールでプレスを回避されても稲橋咲生が中央に入る3バックがことごとく跳ね返した。
3分、競り合いのこぼれ球を拾った髙山が右足でファーストシュート。6分には飯ヶ濵のミドルシュートからCKを獲得すると、そこからの20分間はロングスローを含めたセットプレーで相手ゴールに迫り続けた。前半のシュート数は松本国際の12本に対して市立長野は0本。メインスタンドから見て右半分のコートで展開された前半40分間は、それでも0-0のままスコアが動かずにハーフタイムを迎えた。

控室に戻った選手たちに対して、勝沢勝監督の指示はシンプルだった。「後半はペナルティーエリアの中に入っていこうよ」。ゴールが見えたら思い切って足を振る。それはプリンスリーグ北信越1部に参戦する春先から是としてきた意識だ。「でもちょっと、勢いのままやりすぎてる」
髙山や左サイドの田嶋類はスピードを生かしたドリブルで相手守備を切り裂く力もある。「攻め倒す」ではなく「攻め切る」――。後半に向けて修正した意識を、選手たちが体現した。

46分。左サイドでボールを持った髙山が縦に仕掛ける。ゴールライン付近までドリブルでえぐり、ニアに入ってきた馬上にラストパス。左足のヒールで狙った最初のシュートはGKに止められたが、そのこぼれ球に素早く反応して右足で待望の先制点を挙げた。

「髙山が良いドリブルをしてくれた。あとは押し込むだけだったので、気持ちで押し込んだ」と馬上。59分の追加点は、先制点と役割を入れ替えた形になった。馬上が右サイドの高い位置で相手ボールを奪う。それを見た髙山がペナルティーエリア内に走り込み、馬上からのラストパスを左足で押し込む。64分にはCKのクリアボールを馬上が右足のダイレクトボレーでゴールネットに突き刺し、決定的な3点目を奪った。

「前半は早く点が取りたくて焦っていたのかもしれない。ドリブルでもう一つ運べる感覚はあったけれど、ミドルシュートを狙っていた」と髙山。積極性はそのままに、後半は勝負する位置をより相手ゴールの近くに移した。その意識の変化が、シュート12本で無得点だった前半と、シュート8本で3点を挙げた後半の違いとなって現れた。
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強豪の中でもまれて成長
7年ぶりの舞台は「楽しみ」
普段、しのぎを削っている舞台は県勢最上位のプリンスリーグ北信越1部。県内の他の高体連加盟チームは市立長野を含めて長野県リーグ1部が最高で、県内のライバル校とは所属するカテゴリーで二つ以上の差がある。この差は大きい――と、勝沢監督は指摘する。
「毎週末にプリンスリーグがある日常が彼ら(選手たち)を鍛えてくれる。たぶん市立長野は、われわれの強度を味わったことがない」

プリンスリーグ北信越1部で戦っている相手は、松本山雅FCやアルビレックス新潟などJクラブのユースチームや、富山第一や星稜(石川県)などの強豪校ばかり。稲橋は「日頃から高い強度の中でやっているし、普段の試合はもっと強度が高い。プリンスリーグのレベルが当たり前になっているので強くなれていると思う」と強調する。
決勝の前半のように、押し込みながら得点が奪えない課題もある。準決勝の松商学園戦も同じような展開に持ち込みながら延長を含む100分間で1点も奪えず、からくもPK戦の末に決勝へ駒を進めた。
8試合を終えたプリンスリーグ北信越1部でも7得点しか奪えていない。「点取り屋はいないし、個の力はない」と勝沢監督。ただ、その課題を補って余りある守備力と団結力があり、それが今年のチームの最大の武器になっている。

「後ろ(守備陣)が支えてくれている。自分たちは、とにかく点、点の意識で攻撃をすることができた」と馬上。「球際で負けるようなことがあれば、練習からお互いに指摘し合える厳しい雰囲気でチームづくりができている」と稲橋。プリンスリーグ北信越1部での失点数は、わずか6。県高校総体の5試合は全試合を無失点で勝ち上がった。

昨年のチームは県大会で一度も決勝に進むことができず、当然ながら全国の舞台にも立てなかった。インターハイ出場は7年ぶり。「この大会は試合ごとに成長できた。もっと成長してインターハイに臨みたい」と主将の馬上。稲橋は「強い相手と試合ができることが楽しみ。全国の強豪に自分たちの力がどこまで通用するか試してみたい」と不敵に笑った。
















