VC長野選手から信州Ariesコーチに 転身1年目の波佐間泰平が過ごした挑戦の日々

立場は変わっても、やっぱりバレーボール漬けの毎日は楽しくて幸せ――。Vリーグ女子で2連覇を達成したルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズの新任コーチとしてシーズンを戦い抜いた波佐間泰平は、昨季までSVリーグ男子のVC長野トライデンツで選手としてプレーしていた。現役引退し、指導者として自分自身と向き合い続けた日々。新たな舞台で挑戦を続ける波佐間コーチの1年間に迫った。
文:大枝 史
KINGDOM パートナー
突然開けた指導者への道
バレーだけに向き合う日々
富山大学から加入したVC長野で5シーズンを過ごし、28歳だった昨季限りで現役生活に別れを告げた。
故郷の石川県に戻ろうか――というタイミングで鳴った電話。信州Ariesからコーチ就任の打診を受けた波佐間泰平は、迷うことなく即決した。

「元々は体育の教員になりたくて(富山)大学に入った。指導する観点で挑戦してみたいと思った」
これまでに指導経験はなく、ゼロから手探りのスタート。
それでも「(選手時代から)試合の映像を見ることが好きだったし、相手のクセやセッターがどう(トスを)上げているかを見ることも好きだった。そこは生かせると思った」と不安よりも自信が勝った。
VC長野の安原大も「波佐間さんはバレー教室でも教えることがすごく丁寧で上手だったから、コーチは向いていると思う」と太鼓判を押す。

コーチとしての主な役割は分析と球出し。練習で選手を指導する機会は基礎的なプレーが多いが、信州Ariesキャプテンのリベロ高野夏輝は「自主練でも波佐間さんに打ってもらうことが多くて、その時にディグの取り方や構え方を教えてもらった」と指導の効果を実感する。

バレーボール一家に生まれ、物心ついた頃からバレーボールに親しんできた。
「バレーだけの環境で(競技に)向き合えていることはすごくありがたいし、そこに楽しさも感じている」
自分なりの視点でバレーボールを見つめ続けて磨いた戦術眼、男子国内最高峰の舞台に立った選手としての肌感覚。それらの経験を信州Ariesの選手たちに伝えられる環境は充実感に満ちていた。

「ここでどれだけ結果を出せるかが次につながると思う。与えられたことにチャレンジしていきたい」
バレーボールをこよなく愛してきた29歳にとって、“バレー漬け”の日々はやりがいでしかない。
KINGDOM パートナー
「選手の人生が変わるかも」
言葉に宿る強い責任
就任当初から何もかもがうまくいったわけではない。
男子と女子とではネットの高さが違えば、プレースタイルも違う。筋力も違うので球出しの力加減も最初は難しかった。
「気を付けてはいるけれど、どうしても力が入ってしまって『痛い』というクレームはあった」
分析したデータの何を見せれば良いのか。どんな一言が選手の感覚をつかむきっかけになるのか。選手によって伝え方を変えた方がいいのか…。
毎日のように新たな課題が浮かび、解決したと思ったら別の課題が浮かぶ。そんな試行錯誤の日々を過ごした。

大切にしたことは、選手として培ってきた経験だった。
現役時代はミドルブロッカーでプレーしながら、夏にはビーチバレーに汗を流すマルチロール。バレーボールが好きだったから、環境が変わっても順応は早かった。
「自分はどちらかというと感覚でやっていたので、自分の感覚に似た言葉を言ってくれた時にふに落ちることがあった。(ブロックで)手が出ていないことに関しても『手を前に出す』というよりは『ボールをしっかり前でとらえる』というニュアンスで言うと選手にうまく伝わることもある」
その姿勢で選手と接した。

言葉には責任が宿る。
波佐間コーチが発した一言で、選手のプレーが劇的に良くなることがあるかもしれないし、逆に迷いを生じさせてしまうかもしれない。
プレーをするのはあくまで選手。その選手のポテンシャルを引き出せるかどうかがコーチの責任だと自覚している。
「すごく(良い)感覚をつかんで選手の人生が変わるかもしれない。もっと知識を入れなければいけないし、言葉の伝え方はもっと勉強していかないといけない。すごくやりがいのある仕事だと思う」と真剣な表情で語る。

巡ってきたチャンスをつかみ、指導者として第一歩を踏み出した波佐間コーチ。
「いろんな視点からバレーボールを見られたので、すごく良い経験だった」と振り返った1年目のシーズンを、これからの指導者人生にどうつなげていくか。その挑戦は始まったばかりだ。
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484



















