20?cmのビッグマン・狩野富成 信州は“復活”の舞台にあらず

トレーニングキャンプでひときわ存在感を放っていた狩野富成。206cm以上ある恵まれた体格で、ゴールを壊さんばかりの勢いでダンクを連発した。日本人ビッグマンとしての成長に期待が膨らむ、チーム最年少の22歳。若き有望株は、勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)のもとでどんな進化を遂げようとしているのか。

文:芋川 史貴/編集:大枝 令

昨季は全治未定の大ケガに泣く
はやる気持ちを抑えて復帰

近くで仰ぎ見ると、その迫力はさらに増す。
公称は206cm。しかし――。

「たぶん測った時より伸びている。208〜209cmはありそう」

そう快活に笑うのは狩野富成。“トヨ”の愛称で親しまれる日本人ビッグマンだ。昨季はルーキーシーズン。サンロッカーズ渋谷と契約締結し、徳島ガンバロウズ(B3)に期限付き移籍していた。

だが、1年目から試練に見舞われた。
右前十字靭帯断裂。
2023年12月2日に公式戦で全治未定の大ケガを負い、シーズン中の復帰は絶望的に。わずか17試合の出場にとどまった。

PROFILE
狩野 富成(かの・とよしげ)2001年10月6日生まれ、東京都出身。幼少期を日本で過ごした後はアメリカで育つ。スカイラインカレッジ出身で、2023年にサンロッカーズ渋谷と契約締結。同年にB3の徳島ガンバロウズへ期限付き移籍した。23年12月、公式戦で右前十字靭帯断裂。信州に期限付き移籍した今季、9月17日に練習に完全合流した。高さと機動力が魅力の日本人ビッグマン。「トヨ」の愛称で親しまれ、快活な性格でチームを盛り上げもする。206cm、105kg。

今季は再び期限付き移籍。信州を新天地とした。

夏のトレーニングキャンプはハーフコートのメニューには参加していたものの、5対5のスクリメージなどオールコート実戦型のメニューは回避。コート外からフォーメーションや動き方を頭に叩き込んでいた。

プレシーズンゲーム3試合もベンチ外からチームを鼓舞。焦る気持ちはなかったのだろうか。

「(焦る気持ちは)それはもちろんあった。なるべくコートに立ちたいという気持ちはあるけれど、焦っても逆効果になってしまう。焦ってまたケガしたら本当に終わりなので、確実に一つずつ完璧にしていく」

はやる気持ちを抑えながら膝の状態と向き合い、9月17日に待望の完全合流を果たした。「これからコンディションを上げながら、疲れた中でもちゃんと声を出したりして頑張っていきたい」。人懐こい笑顔が弾けた。

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育成の名手・勝久HCに多くを学び
技術とIQ磨いて外国籍選手に対抗

そもそも、なぜ信州を選んだのか。

他の新加入選手と同様に、やはり勝久HCの存在が大きい。「マイケルHCは本当に細やかで厳しいことで有名だし、育てるのが上手なのも選手の中では有名」。就任7年目を迎える指揮官は戦術面だけでなく、選手育成の面でも定評を得ているという。

高さを生かしたゴール下の得点力と、自陣から敵陣ゴールまで素早く走り抜くトランジションを武器とする狩野。しかし昨季までは、能力任せの部分が多かったという。外国籍選手を相手にフィジカルで真っ向勝負。幾度となく跳ね返される中で、新たな思いが芽生えた。

「力勝負で勝てないなら、技術と頭で勝ちたいと思った」

勝久HCのもとでプレーした信州のビッグマンは代々、クレバーな選手が多い。今季もチームを支える大黒柱のウェイン・マーシャル。2017年から6シーズン在籍したアンソニー・マクヘンリー氏(現琉球ゴールデンキングス・アシスタントコーチ)も同様だ。

その2人の背中を見て育ったジョシュ・ホーキンソン(現SR渋谷)もそう。実際にホーキンソンとはパリ五輪から帰国直後の8月に面会し、「信州に来るといろんなことが学べる」と助言を受けた。成長を誓う狩野にとって最適な環境と言えるだろう。

そしてチームに合流して1カ月。
狩野はすでに指揮官から多くを吸収している。

例えばビジョン(視野)の確保。一瞬たりともマークマンを視界から離さないよう、強く意識付けられているという。「少しでも目を離すと、相手に有利なポジションを取られてしまう。そういう部分も含めて本当に細かいことまで教えてもらっている」と充実感を口にする。

「もうすでにすごいチーム」
“動けるビッグマン”として貢献を

ここまでプレシーズンゲームを消化して狩野も練習に完全合流したことで、チームケミストリーがさらに構築されてきた信州。21日からノックアウト方式の天皇杯2次ラウンドがあり、信州はB2西地区の愛媛オレンジバイキングスと対戦する。今季初の公式戦だ。

狩野にチームへの期待感をたずねると、「もうすでに、すごいチームになっているんじゃないですか」と笑う。ブースターだけでなく、選手もまた同じように高揚感を覚えているのだ。

実際、今季の信州はそれだけのポテンシャルを持つロスターではある。

2年連続B1得点王とベストファイブの実績を持ち、新たな姿を模索するペリン・ビュフォード。驚異の得点力とリーダーシップを発揮しているテレンス・ウッドベリー。日の丸を背負ってパリ五輪で脚光を浴びた渡邉飛勇。いぶし銀の活躍で攻守に信州のスタイルを体現しているアキ・チェンバース――。

タレントには事欠かない。

そしてもちろん、狩野自身もタレントの一人だ。
勝久HCも期待を寄せる。

「ほぼルーキーのように見てはいるけれど、本当に面白くて楽しみな選手。育てがいがめちゃくちゃある。チーム内でも人気者のキャラクターでもあるし、ポテンシャルのある逸材だと思う」

そう語る口調は、心持ち熱を帯びる。未完の大器について触れる時、指揮官のまなざしはひときわ輝く。ホーキンソンが加入した1年目もそうだったように。

そして、成長の先に見据える理想像がある。

「動けるビッグマンに成長したい。どのリーグでも動けるビッグマンを求められていると思う。今シーズン中じゃなくても、外もできるビッグマンになれたら」。マーシャルや渡邉など、手本は身近にいる。刺激を受けながら日々成長を続け、理想像を追い求めていく。

現在進行形で伸びているのは、身長だけでない。スキルも、IQも、マインドも――。まずはケガから復活した先に、“飛躍”への道筋を描く。

ライブ配信(JBL公式YouTube)


Bリーグ 選手紹介 狩野 富成
https://www.bleague.jp/roster_detail/?PlayerID=42616
Bリーグ チーム紹介ページ
https://www.bleague.jp/roster/?year=2024&club=716&p=&c=&o=random&tab=2
クラブ公式サイト
https://www.b-warriors.net/

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