初舞台で堂々のトスワーク 急きょ加入した早坂心之介の“決意”とは

今年のVC長野トライデンツは一味違う――。それを証し立てる場が、10月19日-20日のホーム開幕戦だ。ジェイテクトSTINGS愛知との対戦でSVリーグ初白星。それぞれのメンバーが役割を果たした中、急きょ加入したセッター早坂心之介も存在感を示した。旧V3から階段を駆け上がった24歳。日鉄堺ブレイザーズとのホーム開幕戦を心待ちにしている。

文:大枝 令

SVデビュー戦にも力まずプレー
迫田&樋口からの助言が効果大

ひのき舞台で躍動してみせた。

SVリーグ開幕戦、VC長野のセッターには早坂心之介が抜擢された。チーム始動後に大同特殊鋼知多レッドスターから途中加入した24歳。日本代表セッター関田誠大らを擁するジェイテクトSTINGS愛知と渡り合い、GAME2では勝利に貢献した。

デンマーク人OPウルリック・ボ・ダールとともに、大きな“サプライズ”。しかも自身は、意外にも冷静にデビュー戦を迎えていた。

「(STINGS愛知は)日本代表4人とアメリカ代表が1人という中だったので、V3から上がってきた人間がそんな緊張してやる必要もないかなと。開き直りじゃないけど『ダメでもともと、楽しんでやろう』というマインドだった」

PROFILE
早坂 心之介(はやさか しんのすけ) 2000年4月22日生まれ、宮城県出身。仙台商業高から大東文化大学を経て、22年に大同特殊鋼レッドスターの内定選手となる。そして23-24シーズン、当時V3の同チームに正式入団。しかし2シーズン目の24-25、VC長野からオファーが舞い込んで8月28日に加入が発表された。新天地に素早く適応し、セッターとして開幕から先発。177cm、71kg。

黄色に染まったアウェイの体育館で、踊るようにトスを上げていく。GAME1の序盤は相手のブロックに何度も阻まれたが、そこで臆することもない。「『こんなもんかな』と思っていた。僕のトスが少し(ネットに)近くなってしまっていたので、そこを修正することを意識した」。事もなさげにそう話す。

緊張しないタイプではない。

それでも思い切り良くプレーできたのは、自身のタスクが明確に整理されていたからだったという。「スパイカーが欲しいトスをただ上げたい」。その思いが集中力を生み、試合に入り込めた。

樋口裕希と迫田郭志。日鉄堺ブレイザーズから加入した2人にアドバイスをもらったのが大きかった。助言に基づいて、トスの球質や回転方向などを微調整。若干のフォーム変更も伴ったが適応し、VC長野のスパイカーが欲しがるボールを供給できるようになった。

「(2人が)トスについて毎日アドバイスをくれた。僕もそのおかげでイメージがはっきりしてきて、『それさえできていれば大丈夫』と思えるようになった。いいトスさえ上げればあとはスパイカーが何とかしてくれる」

こうして、自信を胸にデビュー戦に臨めた。

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ケガ人の発生に伴って急きょ加入
「人生は一回だけ」とチャレンジ

ただし、準備期間は決して長くはなかった。

8月28日。大同特殊鋼知多レッドスターから、VC長野への移籍が発表された。VリーグからSVリーグへのステップアップとなる。

VC長野のセッター中島健斗が右膝離断性骨軟骨炎で全治6カ月の長期離脱。これに伴って急きょセッターを探し、早坂に白羽の矢が立った。川村慎二監督は「その時期に来てくれる選手はなかなかいない。大同特殊鋼さんには申し訳ないので、しっかり話をした上で来てもらった」と明かす。

そもそも自身は大東文化大から大同特殊鋼へ、ほぼ迷わず進路を選んだ。「企業チームである程度収入も安定して、かつバレーボールにも打ち込める環境を考えた時、大同が一番いいと思った」。チームに所属する大学の先輩に相談して決めていた。

しかし今回、ひょんな経緯から国内最高峰への扉が開く。SVリーグ。安定か、挑戦か――。もちろんどちらもその人の選択肢であり、正解も不正解もない。ただ早坂は、未知の領域へのチャレンジを選んだ。

「人生は一回しかない。現実的な問題はいったん置いて、今やれることを今やりたいという思いが自分の中で一番だと感じた。そこを妥協するという選択肢は全くなかった」

「バレーボールに集中できる環境に身を置けることが幸せ」

相手の分析を上回るプレーから
初のホームゲームで連勝を狙う

2試合目で早くもSV初白星を味わった早坂。だが裏を返せば、スター集団に挑み続けるシーズンは始まったばかり。自身も浮き足立つことなく、あくまで冷静だ。

「これがまぐれだと思われないように勝ち続けなければいけない。僕のデータがなくブロックがついてこなかったと思うけど、これからデータを取られて傾向も出てくる。対応されたことに対してどう対応していくかが大事」

実際、1日目のプレー傾向は2日目にすぐ対応されていたという。今後さらに丸裸にされていく中でも、いかに相手の裏を突くか。トスのパターン、引き出しをどれだけ増やせるのか。すでにそのビジョンも描けているという。

そして19-20日はホーム開幕戦。日鉄堺ブレイザーズをANCアリーナ(安曇野市)に迎える。自身にとっては初めてのホームゲームへ、意気込みを口にする。

「ここで終わってしまったら『またいつものVC長野だ』と思われてしまう。勝ち続けてちゃんと強いことを証明していけるように、気を引き締め直して臨みたい」

「まずは自分たちのプレーをしっかり100%出して、ファンのみなさんに喜んでもらいいたい。そして勝ちにこだわって、3連勝できるように頑張りたい」

その口調には、覇気と自信がみなぎる。

いよいよホームでのSVリーグ初陣を迎える。クラブは今シーズン、コート周りの演出面なども大きくアップデート。写真家・映画監督の蜷川実花氏が監修した映像が流れ、ソニー・ミュージックパブリッシング協力による公式アンセムも新たに発表された。

――今年のVC長野は、一味違う。

今度はコートの中心で、それを証明する時だ。


SVリーグ第2節 日鉄堺ブレイザーズ戦 試合情報
https://vcnagano.jp/match/2024-2025-sv-div2-1
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

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