信州こそ「キキ」が煌めく地 3年目の山村涼香は“Giver”に変わる
クイックで相手を翻弄したかと思えば、ブロックで一気に流れを引き寄せもする。175cmのミドルブロッカー(MB)山村涼香。東海大時代は陽の当たらない存在だったものの、ルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズでは一定の存在感を示しながら3年目を迎えた。キャリアを重ねて成長し、「受け取る」立場から「与える」役回りへ。11月16-17日のホームゲームを前に、煌めきの物語をひも解く。
文:大枝 令
高く跳んでチームを引っ張る
加入3年目のミドルブロッカー
長い髪がふわりと揺れて、ボールが相手のコートに落ちる。
加入3年目を迎えたミドルブロッカー(MB)山村涼香。第1節の2試合で8ブロックをマークした。1セットあたりのブロック決定本数はリーグ首位の1.14。チームの連勝スタートに大きく貢献した。
「ミドルの中でも割と身長が大きい方ではないけれど、ジャンプ力を武器にしてブロックも高さをしっかり出せていると思う。ブロックの1点は流れを大きく変える。その1点でチーム(の雰囲気)が一気に変わればいい」
身長175cm。ジャンプ力を生かしたブロックで相手の攻撃を寸断するほか、中央を破るクイックも武器。原秀治監督は「彼女のジャンプ力と技術力があれば、スパイク賞もブロック賞も狙えると思う」と大きな期待を寄せる。
そんな山村には、この地で輝くべき理由がいくつもある。
PROFILE
山村 涼香(やまむら・すずか) 1999年4月4日生まれ、山梨県出身。東海大甲府高から東海大に進んでバレーに打ち込んだ。大学時代はほとんど公式戦に絡む機会をつかめなかったものの、2022年のルートイン入団以降はコンスタントに試合経験を積む。2年間でレギュラーシーズン・ファイナルを含めて41試合に出場。身長175cmとミドルブロッカーとしては高身長ではないものの、ジャンプ力が武器。A/Bクイックやブロックなどでチームに貢献する。趣味はサッカー観戦で、筋金入りのヴァンフォーレ甲府サポーターでもある。
山梨県出身。東海大甲府高から東海大に進んだものの、コートはどこまでも遠かった。1〜2年時はユニフォームが与えられず、「大学3年生でユニフォームを着るようになって、4年生の秋に初めてコートに立った」のだという。
それでも、卒業後も続ける道を模索した。
「今までの人生にはバレーボールしかなかった。就活してもよかったけれど、バレーボールが自分からなくなったらどうなるのか――をイメージできなかった」
「だから試合に絡めていなかったけど、大学4年の夏に急に『やっぱりバレーをやりたい』と思った。それで就活もせず、練習に参加させてもらった」
2021年。当時のルートインホテルズブリリアントアリーズにはMBが少なく、山村を含む数人の大学生がAB戦の欠員補充などで呼ばれていた。そこでチームの存在を知り、能力を認められて加入に至る。
信州との出合いが、バレーを続ける道に繋がった。
コートネーム「キキ」の由来
自らの願いと、託された思い
コートネームは「キキ」。
由来は魔女――ではなく、東海大時代にある。
入部直後のある日。
未知のアカウントからLINEのメッセージが届く。
「好きな言葉を教えて?」
送り主は4年生。新入生に対し、4年生がコートネームを考えて命名するのがチームの習わしだった。山村が答えたのは、「煌」。その言葉から選手のイメージに沿う四字熟語を探し、その音韻などからコートネームが導き出されるのだという。
「煌」から「金碧輝煌」(きんぺききこう)。そして山村はキキとなった。「だから、いつもキラキラしてないといけないんですよ」。笑顔が弾けた。
その大学時代は、コートで輝く機会が極めて限られた。しかし、今は違う。いちプレーヤーとしてだけでなく、若手が多いチームの中で周囲に目配りをする役回りも自任。「点を取るサイドの子たちが気持ちよく打てるように、負けている時や連続失点している時の声掛けは工夫するようになった」という。
それは振り返れば、1〜2年目に自分が先輩にしてもらっていたことでもあった。キャプテンの横田実穂や昨季限りで引退した村山美佳から声をかけられたからこそ、のびのびとコートの中で煌めきを放てた。
「自分が決めるから、その分思い切って打っていいよ」「もっとトスを高く上げるから、思い切って打ってね」――。そうした言葉の数々を、今度は後輩たちへ。繋がずしては成り立たないバレーボールと、その営みは重なる。
サッカーの熱にも刺激を受けて
コートの中から周囲を照らす
大学4年時、思い直して競技を続けた。実際にコートに立ってからは、「勝ちたい」という思いが徐々に強くなってきたという。好きで打ち込んできたバレーボールのパフォーマンスを通じて、今度は観る人に力を吹き込む立場となった。
アスリートが発するエネルギーに、観る者がどれだけ勇気づけられるか。山村はそれを、実体験として知ってもいる。小学生の時にサッカーJリーグ・ヴァンフォーレ甲府の試合を観戦したのがきっかけで、以降はサッカー観戦を好む。今も甲府のファンクラブ会員で、シーズンパスも保有している。
とりわけ、ゴールを決めた選手がサポーター席へと駆け出す姿に心を打たれるという。甲府のホームスタジアムは、ピッチ内看板が幾重にも設置されているのが特徴。それを110mハードルのように飛び越え、一目散に喜びを分かち合う。
「応援してくれている人のところに駆け寄って一緒に喜ぶ姿が、すごく眩しく映る」
そして自分も競技は違えど、その感動をコートから生み出せる立場。社内の周囲に「おめでとう」「すごいね」と声をかけられる頻度が増えて大きな張り合いになっているというが、その熱をさらに広げられるか。ましてや再編された新Vリーグも名称変更したチームも、地域密着を打ち出している。
だからこそ――なのだ。
バレーを続けられた“信州”上田から、
その名に違わぬ“輝き”と煌めきを。
4月4日生まれの、牡羊座“Aries”。
山村涼香は翔ぶ。
約束されていたかのような、この場所で。
Vリーグ女子 リガーレ仙台戦(11月16-17日)ホームゲーム情報
https://www.briaristcamp.com/information?no=L5FesNftSSvPSxsBCRCSs
チーム公式サイト
https://www.briaristcamp.com/
Vリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/v_women/team/detail/484