国内最高峰WEリーグを8位ターン 粘り強く勝ち点積んで“進歩”示す

「前進」を示す前半戦だった。AC長野パルセイロ・レディースはWEリーグの前半戦を終え、12チーム中8位で折り返した。昨季の11位フィニッシュを踏まえれば、少なからず進歩の形跡が見える。リーグは約3カ月のウインターブレイクを挟んで後半戦へ。今回は2024年の締めくくりとして、前半戦を終えての収穫と課題を探る。

文:田中 紘夢

攻守に手応えを得た前半戦
“3強”相手にも食らいつく

「選手たちは何かしらの手応えを感じていると思う」

廣瀬龍監督が就任して2シーズン目。昨季はWEリーグ参入後ワーストの11位に終わり、今季はプレシーズンからより一層の“厳しさ”を課す。攻守にアグレッシブなスタイルを色濃くし、それが通用する試合は増えてきた。

前半戦を終えて4勝2分5敗。敗れた5試合のうち4試合は1点差で、「完敗」という試合は少ない。果敢なハイプレスとカウンターが機能すれば、ゴール前の守備にも粘り強さが出てきた。

三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ヴェルディベレーザ、の“3強”にも食らいついた。技術的な差はありながらも、アプローチの強度を高めて自由を制限。なるべく高い位置でボールを奪い、少ないチャンスでゴールを狙う。浦和戦は0-1、I神戸戦は2-3と僅差に持ち込んだ。

東京NB戦は1-5と大敗したが、ここまでのベストゲームとも捉えられる内容。3-4-2-1の相手に対し、4-3-3のAC長野はミスマッチを恐れずに人を押し出していく。ハイプレスからのカウンターが機能すれば、ビルドアップからもチャンスも創出。攻守ともに狙い通りの展開だった。

しかし、結果からすれば今季最多の5失点。スコアラーの髙橋雛が「細部のところが相手より劣っている」と話したように、攻守に詰めの甘さが見られた。それでも廣瀬監督は「強豪相手によく戦った試合だった」と選手たちをねぎらった。

中位以下への取りこぼし
見えない重圧に打ち勝てるか

「昨季と比べたらポジティブに捉えられるところもあるけど、同じくらいの順位のチームと戦ったときに勝ちきれない試合があった」

キャプテンの伊藤めぐみはそう前半戦を振り返る。

東京NBに大敗したのち、ノジマステラ神奈川相模原に2-3と敗れて連敗。開幕から7試合未勝利だった最下位を相手に、2度のリードを奪いながらも競り負けた。3失点中2失点はPKで、自陣でのミスや軽率な守備対応が招いたものだ。文字通り、細部を突き詰めきれなかった。

3連勝を目指した前半戦ラストゲームも、ちふれACエルフェン埼玉に1-1のドロー。順位が一つ下回る相手に勝ちきれなかった。

「3強と戦うときはチャレンジャーというメンタルで挑めていたけど、(中位以下に対しては)『勝たないといけない』という見えないプレッシャーもあったと思う」と伊藤めぐみ。廣瀬監督も「勝敗を決めるところで強気になれるか。勝ち切るためには精神的にも肉体的にも強さが必要」とメンタル面を課題に置く。

スタイルは浸透してきた中で、より心技体を追求できるか。ウインターブレイクには県外でのミニキャンプも予定しており、鍛え直して後半戦に向かいたいところだ。

2人を精神的支柱に据えつつ
新戦力がチームを底上げ

廣瀬監督は前半戦のMVPを問われると、「メグか坂井かな…」とつぶやいた。

「メグ」とは、伊藤めぐみのことだ。昨季は当時21歳にしてキャプテンを任され、チームトップの7ゴールと結果で示した。今季は前半戦を終えてPKの1点にとどまるも、本人からすれば「そんなに気にしていない」という。

「もともと中盤の選手でもあるので、チームが勝てればいい」。ここまで11試合中9試合にフル出場。90分間にわたって足を止めないタフさは、チームの象徴とも言える。トップ下とボランチを並行するポリバレントさもあり、まさにMVP級の働きぶりだ。

そして、もう一人は新戦力の坂井優紀。チームが「コンパクト」というキーワードを掲げる中で、センターバックとしてハイラインを牽引し続けた。セットプレーでも171cmの長身を生かしてターゲットになり、N相模原戦ではCKから加入後初ゴール。彼女がいることによって、セットプレーの脅威は確実に増した。

大宮アルディージャVENTUSから加わった元日本代表。チーム最年長の35歳だが、持ち前の明るいキャラクターですぐさま溶け込んだ。若きキャプテンを支える意味でも、その存在は大きい。廣瀬監督が2人の精神的支柱の名を挙げたのは、ピッチ内外の振る舞いを見れば納得がいく。

坂井をはじめ、新戦力はいずれもプラスアルファをもたらした。「昨季にはない力を加えてくれて、攻撃できる時間も増えた」と伊藤めぐみは力を込める。

最前線ではポストプレーに長けた大内梨央が体を張り、右サイドでは髙橋がスピードに乗ったドリブルで切り裂く。ボランチの源間葉月と村上真帆も、守備強度の課題はありながらも、キックというスペシャリティは格別だ。

5人の新戦力がチームを底上げしつつ、ウインターブレイクには5人の新卒選手も加わる。佐久長聖高の鈴木こなつをはじめ、即戦力と評される選手もいる中で、競争はより活発化することだろう。

WEリーグは3月初旬に再開。昨季はウインターブレイク明けから苦戦が続いただけに、この時期の過ごし方は重要となる。厳しい冬を乗り越え、上位浮上に向けて春一番を吹かせたいところだ。


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