2024年“バレー納め” 満員のホームで備一真が拾うボールと白星
2024年12月28-29日、ことぶきアリーナ千曲でVC長野トライデンツの年内ラストゲームが行われる。東京グレートベアーズを迎えるこの一戦はクラブとしても集客に力を入れており、2日間とも前売チケットは完売。観客が多く訪れるアリーナで白星を挙げ、笑顔で2024年を終えられるか。所属3シーズン目となるリベロ(L)備一真が、チームの現在地を解説しながらリベンジへの思いを語る。
取材:松元 麻希/編集:大枝 史
想定以上に好調なシーズン序盤
チームの「若さ」は諸刃の剣か
シーズンの出足は非常に好調だった。
アウェイの開幕節GAME2、STINGS愛知を3-1で下す“サプライズ”を演じてみせた。
相手はオポジット(OP)宮浦健人、ミドルブロッカー(MB)髙橋健太郎、セッター(S)関田誠大といったパリ五輪の日本代表選手に加えて、アメリカ代表のアウトサイドヒッター(OH)トリー・デファルコを擁する強豪。そして1カ月も経たないうちに、第5節の広島TH戦GAME1で2勝目を挙げる。
PROFILE
備 一真(そなえ・かずま) 1998年1月6日生まれ、鹿児島県出身。坂元中を経て名門・鹿児島商高へ進学。しかし公式戦の出場はほとんどなく、東海大学1部の大同大で頭角を現した。卒業後はV2大同特殊鋼レッドスターに入団。V1の大分三好ヴァイセアドラーを経て、2022-23シーズンからVC長野でプレーする。同年はV1男子のサーブレシーブ賞(72.2%)に輝いたほか、日本代表にも初選出された。168cm、67kg。ポジションはリベロ。
「だんだん“勝てる”チームになるための土台は作れてきていると思う」
備は手応えをにじませる。勝つことの難しさを痛感している――と前置きしながら、シーズン前半をそう振り返った。
攻撃の軸であるOPウルリック・ダールやOH工藤有史はまだ20代前半。チーム全体として勢いに乗ることができれば、タレントぞろいの格上チームとも互角に渡り合える。そのポテンシャルを秘めていることはすでに証明した。
ただ、若さゆえの不安定さが顔をのぞかせることもある。
「一つのミスから崩れていく試合もあった。勝った試合の翌日や、いい試合をした翌日に0-3で負けてしまうケースが多いので、そこは反省しないといけない」
若手が多いこのチームの弱点についても、備は危機感を覚えているようだ。自身のプレーについても、「勝負どころでミスを出してしまった。もっとシビアにやっていかなければ」と口元を引き締める。
とはいえその後も、ヴォレアスに2戦2勝を挙げてシーズン4勝目。苦しみ抜いた昨シーズンの成績を早々に上回り、目標の10勝に向けて着実に前進している。
ともにディフェンスの軸を担う
同郷のOH迫田が示す存在感
注目したいのは、第9節終了時点で備がサーブレシーブ成功率2位につけていることだ。成功率は53.4%。日鉄堺BZのOPシャロン・バーノンエバンズやWD名古屋のOPニミル・アブデルアジズなど、高さと強さを兼備する外国籍選手の強烈なサーブとアタックを受けながらもなお、この位置をキープしている。
「サーブレシーブの起点として、ファーストタッチは自分が中心になって取ることを意識している。質のいい球を返す、安定したサーブレシーブが僕の魅力であり強み」
「迫田選手や工藤選手と3人でコミュニケーションを取りながら、VC(長野)のサーブレシーブを一つの強みにしていければいいと思う」
じつはVC長野は、チーム全体としてもサーブレシーブ成功率2位をマークしている。さらにはOH迫田郭志も備に次いで3位(48.4%)をキープ。鹿児島商高時代の先輩である迫田が今シーズンから加入したことを、なにより心強く感じているだろう。
「迫田選手は僕の人間性や性格を知っているので、そこをうまく持ち上げながら『シーズン通して一緒に戦うぞ』と言ってくれている」
「ゲーム中も練習中も、僕だけでなくいろんな選手ともコミュニケーションを取っている。頼もしさもあるぶん、僕自身もプロ選手として見習わないといけないと感じる」
2人はオフの日にもカフェやランチへ出かけるなど、一緒にすごす時間が多いという。そしてそんなときでも、バレーの話は尽きない。本州最南端の地を遠く離れ、SVリーグの選手として多くの時間を共有する。
安定したレシーブから勝機つかみ
完敗した前回対戦のリベンジ期す
次節の相手は東京GB。前回アウェイで対戦した際の試合を振り返り、備は「(相手は)僕たちが目指したいバレーボールだった」と語る。
ブロックディフェンスが硬く、繋ぎの部分で落とさない。
セカンドタッチでネット際までボールを寄せ、意地でも得点に繋げる。
そうした相手の気持ちが、ネット越しにひしひしと伝わってきたという。
そして、同じポジションで東京GBの主将を務める元日本代表のベテラン・古賀太一郎からも多くを学んだ。
「チームの中心として指示力に長けていて、プレー以外のところでチームに気を配っていると試合中にも感じた。以前から古賀さんに対してはリスペクトがあるし、少しでも盗みながら試合の中で吸収したい」
第6節ではGAME1で1-3、GAME2で0-3と完敗。今回は雪辱を果たす機会でもある。10勝8敗と勝ち越して5位につける格上に対し、どう立ち向かうか。
「相手はすごく拾ってくるので、僕たちが拾い負けないこと。僕たちの強みはサーブレシーブなので、そこをしっかり返して、サイドアウト率を上げていく。サイドアウトを1点ずつ取っていけたら、必然的におもしろい試合にはなるはず」
拾う、つなぐ。泥くさく戦って勝機の糸を逃さない。
そもそもそれが、群雄割拠のSVリーグをサバイブする道筋でもある。その中でディフェンスを司るリベロ・備。冷静な眼差しで、前回のリベンジを狙う。
SVリーグ第10節 東京グレートベアーズ戦(12月28-29日)試合情報
https://vcnagano.jp/information/16344
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461