【Farewell-talk】古株2人のラスト・メッセージ 高井大輝×松下祐太

長野GaRonsで苦楽をともにした2選手が、一線から身を退く決断をした。松下祐太は在籍6シーズンでリベロからアウトサイドヒッターへのコンバートも経験し、2021-22シーズンはキャプテンも歴任。高井大輝は在籍5シーズンで、内定選手の時期からトスを上げ続けたセッターだ。臥竜が首をもたげるまでの時期を支えて引退する2人に、思い出などを語り合ってもらった。
取材:原田 寛子/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
“いつも通り”に迎えた最終戦
感謝を胸に脱いだユニフォーム
――最終戦、引退試合を振り返ってどんな時間でしたか。
松下 6シーズンやってきたのですが、本当にガロンズでは最後の試合だったので緊張するかと思っていました。アップしている朝は、結構感極まるものはありました。
親や会社の友人なども来てくれて「最後だね」と話もしたんです。でも試合が始まるといつも通りというか…高井とも「泣いちゃうね」と話していたんですけど。

PROFILE
松下 祐太(まつした・ゆうた)1997年4月26日生まれ、山梨県出身。甲府工業高から神奈川工科大を経て、2019年に長野GaRonsに入団。21-22シーズンはキャプテンを務めた。ケガに泣くシーズンがありながらも、選手のみならずスタッフとしてもチームを牽引し続けてきた。19年からの6シーズンでレギュラーシーズン通算73試合出場。リベロ、アウトサイドヒッター。180㎝、65㎏。最高到達点320㎝。
高井 そうですね。自分も泣くかなと思ったんですが、始まってみたら意外と普通でした。
松下 結構いつも通りでした。
高井 気付いたら終わってた…みたいな。自分も地元の岐阜県から友達や両親もきていたし、勝たなければいけないという気持ちや「いつも通り2枚替えで出られるかな」と気になっていました。
無事に最後のユニフォーム姿も見せられたし、満足して終われたかなと思います。

PROFILE
高井 大輝(たかい・だいき)1998年6月24日生まれ、岐阜県出身。岐南工業高から大東文化大を経て、2020年に長野GaRonsに入団。内定選手時代からセッターとしてチームを支えてきた。23-24シーズンは主力として20試合に出場し、V3リーグ準優勝の一翼を担った。20年からの5シーズンでレギュラーシーズン通算107試合に出場。178㎝、67㎏。最高到達点310㎝。
――「意外と平常心だった」とのことですが、スターティングメンバーコールの際、スタジアムDJのたろさんが「スターティングリベロ、1番!松下祐太!」とコールがあった時、何人ものファンの方が涙を流していました。歓声も大きかったですね。
松下 そうですよね。去年は完全にスタッフとしてやっていて、今年また選手登録したものの、体調不良やケガで結局あまり試合に出られませんでした。
たろさんに名前を呼んでもらえたのって2年越しで「久しぶりのこの感じだな」とうれしかったのと、昔から応援してくださるファンの方の顔が見えた時に「戻ってきたな」という感じがありました。

――高井選手も2枚替えで出た時の歓声が大きかったのは聞こえていましたよね。
高井 聞こえていました。今年は2枚替えで出ることがメインだったので、自分が出る時の歓声よりもマツさんが呼ばれた時の方が「あ、呼ばれた」みたいな。
松下 そんな感じ?
高井 泣いちゃいましたね。
松下 え??
高井 泣いてないね!でも、グッとくるものがありました。

――最終戦の後はセレモニーもありましたね。
松下 はい。泣くだろうと思っていたので、スピーチはある程度考えていました。でも意外と普通でいられたので、最初に考えていたよりもあっさりと終わりました。
――高井選手はご家族へのメッセージもありましたね。
高井 はい。言おうと決めていたので、親にも事前に許可を取っていました。母は少し泣いていたらしいです。

KINGDOM パートナー
“同志”の声を受けて走った先に
それぞれが迎えた区切りの時
――ご自身の中で引退という区切りをつけたポイントがありましたら教えてください。
松下 実はキャプテンをやった2021-22シーズンに引退しようと思っていたんです。その時は両足をねんざしていて、痛み止めを飲みながら試合に出たりしていました。
その翌シーズンから、自分の思うように力が入らないというか…明らかに身体が疲れやすいと感じることもあって、引退を考えたんです。

スピーチでも言いましたが、篠崎さん(篠崎寛監督)に「バレーをやりたくなるかもしれないよ」と声を掛けてもらって、1年、また1年と続けてこられた感じです。
「昨シーズンで区切り」と思った時、高井から「最後に一緒にやろう」と熱い言葉をもらって今シーズンは続けようと思いました。

高井 自分は昨シーズンV3リーグで準優勝をすることができて、そこで少し考えたタイミングはありました。
ただその時レギュラーだった選手がほとんど退団してしまったので、「残った方がいいかな」という思いがありました。今年1年残ってプレーして、次のシーズンということを考えた時に「自分がいなくても大丈夫かな」と感じたところがあったので、そこが一区切りとなった感じです。
――これまで長野GaRonsでプレーをしてきて、原動力になった部分はありますか。
高井 やっぱりファンの皆さまの存在ですね。自分が入ったころは、まだ本当に見に来てくれる人も少なかったんです。
松下 そうだよね、少なかったよね。

高井 そういう時を知っているからこそ、だんだんファンの方が増えてくるのを感じているので、声を掛けてくださったりというのがうれしいです。
松下 そうですね。応援の声はすごく力になるのを実感していたので、「応援してくれる人のために頑張りたい」と思う気持ちがプラスされました。

高井 アウェイの試合では特に感じます。「自分たちのホームじゃないか?」と思うほど、見に来るだけでなく声を出して応援してくれるんです。それはものすごく原動力になりました。
松下 あとは純粋にバレーボールが好きだということはあります。ガロンズに入った時は「Vリーガーになったんだ!」という、うれしさのような感じもありました。
貴重な経験だと思って入ったんですが、チームメイトがまとまって退団したタイミングもあったし、そういう時に「ガロンズを今後も残していきたい」という気持ちは大きかったですね。みんなのために頑張ろうという思いがありました。

駆け抜けたGaRonsでのシーズン
次世代の選手にバトンを渡して
――ガロンズでの6年間、5年間はどうでしたか。
松下 昨シーズン戻ってきた酒井(駿)キャプテンと同期入団なんですが、ほんとに最初は5〜6人で練習というスタートでした。そういう辛い時期もあったな…というのは思い出します。
それから、人生で初めてスパイカーをやったんですよ。篠崎さんから「身長あるからスパイカーやってみろ」みたいに言われて。

その年がキャプテンをやったシーズンでもあるので「しっかり頑張らないと」と思った時期でした。メンタル的にもフィジカル的にも頑張りました。そういう経験があったから、成長できたと感じています。
スタッフとしての経験も、違う角度からチームに携われていい経験になったと思います。本当に濃い6年間でした。
高井 自分が入った年はコロナ真っただ中でした。練習はできていたけど、試合は無観客。最初は結果が全然伴わなくてつらかったですが、河野さん(現レーヴィス栃木・河野裕輔監督)がコーチで来てくれたこともあり、考えながらバレーをするようになりました。バレーに対する知識も増えて楽しくなったと思います。

ガロンズならではだと思いますが、スタッフが少ないから一緒にスタッフ業をやるということも他のチームでは経験できないものでした。自分にとっては今後に生かせるいい経験になったと思っています。
――チームメイトへのメッセージをいただけますか。
松下 プレーに関してはみんな頑張ってやっていると思います。なかなか結果がついてこないタイミングがあるかもしれないけれど、頑張ってほしいです。
それから、いろんな方に支えられて今のガロンズがある…ということを忘れずにいてほしいです。ガロンズでプレーできることが当たり前と思わずに、色々な方に感謝をして頑張ってほしいと思います。

高井 リーグ編成などで大変な時期が来る可能性はあります。それでも逃げ出さないで頑張ってほしいです。応援してくれる人がいるからチームが成り立っているということも大切に思ってほしいですね。
ポテンシャルが高い選手も増えたので、今までとはまた違った高いレベルのバレーができるんじゃないかと期待しているので、陰ながら応援しています。

――最後に、同志(ファン)の方へメッセージをいただけますか。
松下 日本各地さまざまな場所で試合がある中で遠方からも足を運んでくださり、 声援を送ってくれる皆さんの姿が、何度も僕の背中を押してくれました。
ガロンズの一員として過ごした6シーズンは、正直思うようにいかないことや、苦しい時期もたくさんありました。それでもそばにいて一緒に喜び、悔しがってくれる同志の存在があったからここまで走り続けられました。
どんな言葉を並べても足りませんが、心から感謝の気持ちでいっぱいです。 ガロンズと一緒に戦ってくれて、そして6シーズン僕を支え続けてくれて本当にありがとうございました。

高井 内定を含め5シーズンの応援、ありがとうございました。ガロンズでしか味わえない瞬間をともに過ごし支えてくださり、自分はプレーができていました。
選手にとっての応援は必要不可欠なものだと思います。ぜひ、これからも皆さまの応援する選手を支え、ともに戦って「バレーボール」を楽しんでいただきたいです。本当にありがとうございました。

チーム公式サイト
https://garons.jp/
Vリーグ チーム紹介ページ
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