退団の三ツ井利也が語る“感謝と悔しさ” 去就は現役続行と引退の両にらみ

信州ブレイブウォリアーズに9シーズン在籍して退団する三ツ井利也が、現状を語った。サッカーJ3松本山雅FCのサンプロ アルウィンで2025年6月8日に行われた「ながぎんデー」のイベント出演のため来場し、信州スポーツキングダムの取材に応じた。新天地を模索しつつも、縁がなければユニフォームを脱ぐ覚悟も固めていた――。
文:芋川 史貴/編集:大枝 令
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青天の霹靂だった契約満了の通告
悔しさを噛み殺して感謝を示す
大卒ルーキーとして信州に入団してから早9年。
唯一の地元出身選手として活躍していた三ツ井がチームを去ることとなった。
それは自身にとっても、予想だにしていなかったことだったという。
「個人的にも昨季と比べたら良い状態でシーズンを過ごせた。悔しい結果に終わったので、Bリーグでの今のレギュレーションが最後となる中でしっかりB2優勝であったり、力をつけてBプレミアに行って――という気持ちではいた。それがかなわなかったのは悔しさも寂しさもある」
契約満了のリリースから多くを知ることはできない。選手自身から自由交渉選手リストへの公示を求める結果になったのか、所属チーム側から求められなくなったのか。発表の時点では定かではなかった。
「こういう世界なので、いくら長年いたとしても別れる日は来ると思っていた。もう1年絶対ウォリアーズの力になれると思ってはいたけれど、ひとまずお役御免なのかなと」
勝久マイケル・ヘッドコーチ(HC)との面談で、契約を更新されることはなかった。
しかし退団が発表されても、最後までスポンサーへの挨拶回りやイベント出演などを精力的に行う。
「当初は整理もできなかったし、正直動揺もしていたのは間違いなかったけれど、今は少し落ち着いて、イベントや挨拶回りに行かせてもらっている」
「9年間在籍している間ずっとサポートしていただいた企業様などに、ちゃんと感謝を伝える場があることはすごくありがたい」
感謝を噛み締めて前を向く。
この日もサンプロ アルウィンのキックインセレモニーに出席。見慣れたフォームでサッカーボールをピッチに投げ入れた。

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「求められるチームでプレーを」
心の隅にユニフォームを脱ぐ覚悟
そして注目が集まるのは今後の去就だ。
現時点では興味を示されているクラブはあるという。
「第一はやっぱり求められるチームでやるのがベスト。それがどのカテゴリーであろうと、まずはそのチームでやれることを自分はやりたいと思っている」
「それがもしB2であれば、対戦相手としてやり返すぐらいの気持ちではいるし、マイケルさんのバスケも知っているので丸裸にする自信もある」
「どのカテゴリーに行っても、自分の成長している姿を見せるのが一つの恩返し。地元のチームだろうと別のチームだろうと、『そのチームのために全力を注ぐ』という僕のアイデンティティは変わらない」
ただ、オファーがなければプロ選手を続けることはできない。ある程度の時期まで待ち、縁がなければキャリアから身を引く覚悟も心の隅で固めている。
その先には、信州への恩返しを思い描く。
「ここまで育ててもらった以上、別の形でウォリアーズや長野県のバスケに貢献するといった役割を担うことも考えている」
イメージするのは、松本山雅で「ガチャ」の愛称で親しまれている片山真人さんだ。あらゆるイベントに顔を出してMCを務めたりサッカーを教えたり。そうした象徴的なアイコンになりたい思いもあるという。
とはいえまずは、最後まで選手として生きる道を模索する。
「いつ呼ばれてもいいように、身体と心の準備はもう始めている」
地元で戦った9年間に感謝の念
三ツ井が残したい信州への愛
9年間選手の立場からクラブ全体にも目を向け続けた三ツ井。もちろん苦しい時期も知っているし、徐々に規模が拡大する成長曲線もともに描いてきた。
「かなり苦しい時期から入って、どんどん良くなってくウォリアーズを知ってるのは僕だけ。本当に地元の選手がルーキーから地元のチームでやれることがどれだけ幸運か、この9年でさらに感じた」
「本当にやりたくてもやれない選手がごまんといる中で、本当に幸運なことだったなと思う」と感謝を口にする。
最後に長く在籍していた三ツ井だからこそ、信州で戦う選手たちに伝えたいことがあるという。
「ある程度チームが良くなった状態の中で来てる選手も多いと思うけど、最初からそうだったわけじゃないことをちゃんと知ってほしい」
「その中でファンの人たちが、人数が少ない頃からずっと支えてくれて今がある。そういうことをちゃんと知ってもらって、もっとウォリアーズやファンのコミュニティを愛してほしいと思う」
「それを伝える選手はこれで誰もいなくなる。どういう形であれ、そういうことがみんなには伝わってほしいと思う」
信州のチーム内で、カルチャーの伝道師でもあった三ツ井。今後どのようなキャリアを描くかはわからない。それでも長野県に残してきた三ツ井の功績は変わらず、これからも多くの財産を残していくはずだ。