“長野のセミ”は水無月から鳴く ホーム開幕で必勝誓うキャプテン三笠貴史

3シーズンぶりにフットサル国内最高峰のF1リーグを戦うボアルース長野。キャプテンとしてチームを率いるのは、2年連続で重役を任された三笠貴史だ。チーム内では「セミ」の愛称で呼ばれており、かつてはFリーグ選抜のキャプテンも務めた30歳。フィクソというフィールドプレーヤー最後方のポジションで、堅固な守備力を発揮する。2025年6月12日のホーム開幕戦を前に、今季に懸ける思いを聞いた。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

守備力を生かしつつもう一歩先へ
フィクソとしてゲームを支配する

「キャリアハイのプレーを見せてほしい」

就任3年目の山蔦一弘監督は、そう願いを込めて三笠にキャプテンマークを委ねた。

かつてはフウガドールすみだとバルドラール浦安に在籍し、すみだのセカンドチーム(フウガドールすみだバッファローズ)時代にはFリーグ選抜(※2020年のFIFAフットサルワールドカップに向け、若手選手の育成を目的に創設。2018-19シーズンから2季限定でF1に参戦した)も経験。長らくF1の舞台で経験を重ね、ボアルース加入2年目の昨季はチームをF2優勝に導いた。

昨季は選手間投票でキャプテンを託され、今季も山蔦監督から指名を受けて継続。指揮官の信頼は揺るぎないものがある。

「シーズンが進むにつれてすごくキャプテンらしくなった。今季は僕からセミ(三笠の愛称)に任せたい思いがあった」

「昨シーズンよりもチームのことを考えて、本当によくやってくれている。F1でも対ピヴォ(サッカーのFWに相当)には自信を持っているし、確実に計算できるところがある」

三笠の特長はなんといっても守備力だ。フィールドプレーヤー最後方のフィクソとして、相手最前線のピヴォを封殺。昨季は1試合平均1.3失点という驚異的な成績にも貢献した。

自身4シーズンぶりのF1に帰ってきても、1対1で負けることはない。

開幕節の名古屋オーシャンズ戦では清水和也、第2節のシュライカー大阪戦では加藤翼と、体格で勝る相手に自由を与えず。名古屋戦、大阪戦とも2失点とロースコアに持ち込んだ。

ただ、それだけでは到底満足できない。

「ピヴォに対しては外国籍選手でも負けない自信はあるので、もう一個先。ピヴォに当てるボールを前でカットして、オフェンスのトランジション(切り替え)に入ることができれば、パサーはピヴォに当てたくなくなる」

「そうなればピヴォ以外の選手に対しても、自分の支配力が及ぶことになる。僕はそこまでいかないといけない」

三笠に求められるのは、あくまでキャリアハイのパフォーマンス。ピヴォを抑えるのは“最低限”であり、その先でゲームを支配しなければ“最高”には至らない。

30歳を迎えてもなお成長
長野の“セミ”は鳴り止まない

攻撃では定位置攻撃(組織的に整った守備に対する攻撃)の起点となり、セットプレーからのボレーシュートも武器とする。

「今シーズンは得点でどれだけ引っ張っていけるか。F2と違ってスカウティングもすごく入るので、セットプレーからのボレーが得意だったとしても塞がれてしまう。だったらその裏でもう一個何かをやらないといけない」

守備は当たり前にこなしながら、攻撃で目に見える数字を追い求める。それこそがキャリアハイへの道であり、チームを目標の残留に導く手段だ。

開幕戦ではパワープレーからチーム第1号のゴールを記録。今季への“決意表明”のようなものだった。

開幕直前には同じフィクソの米村尚也が負傷。左足第5中足骨骨折と診断され、秋頃の復帰が見込まれる。

米村は2023-24シーズンにキャプテンを務め、2桁ゴールを記録。得点源かつ精神的支柱を欠いたのは痛手だが、山蔦監督は「彼がいないことを良い意味で感じさせない」と前を向く。

フィクソは米村から腕章を引き継いだ三笠と、アラ(サッカーのサイドハーフに相当)を主戦場とする松永翔でローテーション。互いに対人能力が高く、経験値も長けており、三笠からすれば「チームとして唯一余裕があるところだと思う」。

とはいえ、「その余裕を攻撃に回していかないといけない」。後方から松永が得意のドリブルで仕掛けたり、三笠が前線まで駆け上がったり――。繰り返しになるが、守備は当たり前にこなしながら、攻撃で何ができるかどうかだ。

6月9日には30歳の誕生日を迎えた。

かつてはFリーグ選抜のキャプテンを担い、将来を嘱望された存在。思い描いたキャリアと異なるかもしれないが、道が閉ざされているわけではない。

「ここから日本代表に入りたいとして、30歳のフィクソと20歳のフィクソがいるとしたら、20歳を絶対に取ると思う。30歳で入るならもっとなんでもできないといけないし、15点は取らないといけない」

仏教には「蝉(せみ)は夏を知らない」という言葉があるという。地中で過ごした幼虫が羽化しても、地上で生きられるのは1週間ほど。あまりにも短命である。

ただ、長野の“セミ”は鳴り止むことを知らない。F2から這い上がり、4シーズンぶりに戦うF1の舞台。冬の夢を見て鳴き、羽を広げて飛び続ける構えだ。

連敗発進の北九州とホーム開幕戦
「100%を出せば必ず勝てる」

チームは開幕からアウェイ2連戦に臨んだ。名古屋に1-2、大阪に0-2と、優勝経験チームに対して接戦。いずれもロースコアに持ち込むことはできたが、なかなかゴールをこじ開けられなかった。

「大阪戦は『セカンドボールを拾おう』『トランジションで上回ろう』と言っていたけど、この2つで負けた。相手が僕らをリスペクトして割り切ってきた中で、僕らはそれを上回れなかった。まずは自分たちの100%を出さないと、勝負に争う土台には立てない」

前回のF1在籍時は4シーズン連続の最下位。山蔦監督はその最終年にヘッドコーチを務めていたが、当時は「力を出せば勝てると思われていた」と感じたという。

そこから比べれば、今季はスタートラインが異なる。開幕戦で“絶対王者”の名古屋を1点差に追い詰めると、大阪もリスペクトを込めて戦ってきた。ようやく相手と同じ目線に立ったと言えるだろう。

今週末の15日(日)にはホーム開幕戦を迎える。

相手のボルクバレット北九州は、ボアルースと同じく開幕から2連敗。まさに負けられない両雄の戦いだ。 「自分たちの100%を出せば必ず勝てる」と山蔦監督。キャプテンの三笠も「勝たないと意味がない。とにかくやるしかない」と力を込める。

真っ赤に染まるホームで血をたぎらせ、40分間走り抜くまでだ。


6/15(日)ホーム開幕戦 vsボルクバレット北九州 情報
https://boaluz-nagano.com/news/topics/【6-15日ホーム開幕戦情報】ボアルース長野vsボルク/
チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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