【Farewell-column】“恐れない心”秘めた大黒柱 VC長野・トレント・オデイ

バレーボールの季節が去って久しい。長野県内のSVリーグ男子/Vリーグ男女の計3チームからも、今季限りの退団者が発表された。本企画はチームを去る選手・スタッフに敬意を表し、その働きぶりやチームに遺した財産などを改めて記録するもの。第8回は、VC長野トライデンツのミドルブロッカー(MB)トレント・オデイにスポットを当てる。
文:大枝 史/編集:大枝 令
KINGDOM パートナー
揺るがぬ信念と冷静な判断力
安定したブロックでチームを牽引
高打点からのクイックでアタック決定率57.7%と高い数字を残し、1セット平均ブロック数も0.45とリーグ11位の成績を収めた。

「精神的、肉体的な能力を信じているというのが根本にある。プレッシャーが大きくスピードが速い試合展開であっても、落ち着いたプレーができる」
かつての取材で自身の強みを話していたように、シーズンを通して安定したプレーでチームの10勝に大きく貢献した。
特にブロック面での貢献は目を見張るものがあった。

例えば第12節の東レ戦GAME1ではブロック決定本数6本、1セット平均ブロック数も2.00と9試合ぶりの勝利に大きく貢献した。
同じくブロックを強みとしている樋口裕希も「今年は一番いいプレーをしている」「ブロックとスパイクは問題ない」と、そのパフォーマンスに目を見張っていた。

キルブロックができない場面でも、ワンタッチを取ってチャンスを作る。その読みの深さは対戦相手との駆け引きを重ねる中で発揮された。
積み上げた67本のブロックポイント。この数字以上に相手スパイカーにプレッシャーを与え続けた存在感こそが、チームのディフェンスを支えた。
粘り強く手を伸ばし、コースを限定する姿はまさに”大黒柱”だった。

KINGDOM パートナー
2シーズンが育んだ信頼関係
言葉を越えて繋がったチームワーク
「聞くのは単語がパッと入ってくるので、何のことを話しているのかは大体分かる」
プロキャリアで初めて同じチームで2シーズンを過ごしたトレント。

試合中に感情を多く出すタイプではないが、チームメイトとのコミュニケーションは大切にしてきた。
外国籍選手のオポジット(OP)ウルリック・ダールだけではなく、練習時には同じMBの安部翔大と笑い合う一幕も。言語の壁を越えた繋がりは、チーム全体の結束力向上に寄与していた。

「ミスを恐れず、自分たちのすべての行動を100%でやる必要がある」
シーズン中盤から変更したジャンプサーブはチームに新たな攻撃オプションを加えた。

201cmの長身から繰り出される安定したブロック、高い決定率を誇るクイック攻撃。そして何より、プレッシャーの中でも動じない冷静さ。
2シーズンにわたってVC長野の中軸を担い、チームの10勝を支えたトレント。プロキャリアで初めて同じチームで連続したシーズンを過ごした長野の地で、残したものは数字以上に大きい。
オーストラリア代表は7月5日、6日で行われる2025バレーボール男子日本代表国際親善試合で日本代表Bチームと対戦する。

引き続きオーストラリア代表に選出されたトレントと、日本代表Bチームにいる工藤有史との対戦が予想される。
そのステージでもまた、「大黒柱」として力強く安定したプレーを見せてくれるだろう。
トレントが体現してきた「恐れない心」と責任感は、これからも臙脂色のコートで受け継がれていく。

PROFILE
トレント・オデイ(Trent O’dea) 1994年5月11日生まれ、オーストラリア出身。12歳からバレーボールを始め、2014年にオーストラリア代表に選出。スウェーデンでプロデビューし、フィンランド、チェコ、イタリア、インドでプレー。2023-24シーズンからVC長野に加入した。MBとしてブロックやクイックなどでチームに大きく貢献した。201cm、95kg。最高到達点358cm。
トレント・オデイ 2024-25 SVリーグ男子 個人成績
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/recordn/player_detail/4918
豪代表キャプテンの大黒柱 トレント・オデイが狙う“躍進の2年目”(2024.10.28公開)
https://shinshu-sports.jp/articles/10299