豪代表キャプテンの大黒柱 トレント・オデイが狙う“躍進の2年目”

スター集団に挑む時、揺るがない「経験」は欠かせない要素の一つだ。VC長野トライデンツのミドルブロッカー(MB)トレント・オデイは、それを備える選手の一人。自身のプロキャリアの中で、同じチームに2シーズン連続で在籍するのは初となる。オーストラリア代表のキャプテンも務める30歳は、どんな理由でVC長野での2シーズン目を迎えたのか――。チームへの思いと、日本文化への愛着を明かした。

文:松元 麻希/編集:大枝 令

若きチームをリードする
冷静なメンタリティの持ち主

チーム最年長30歳。
201cmの身長、ブレないメンタリティ――。

トレント・オデイには、「大黒柱」という表現にふさわしい要素がそろっている。

VC長野がシーズン初白星を挙げた第1節STINGS愛知戦のGAME2。新外国籍選手のウルリック・ボ・ダールや新戦力のセッター早坂心之介が注目を集めた中、在籍2シーズン目を迎えたオーストラリア人ミドルブロッカーも、自らの仕事を完遂した。

PROFILE
トレント オデイ(Trent O’dea) 1994年5月11日生まれ、オーストラリア出身。12歳からバレーボールを始めた。高校卒業後も趣味として続けていたが、2014年にトライアウトを受けてオーストラリア代表に選出。同年からスウェーデンのリーグに所属し、フィンランド、チェコ、イタリア、インドでプレー。2023-24シーズンからVC長野に加入し、ミドルブロッカーとしてチームを牽引。今シーズンは自身のキャリアで初めて、2年連続で同じチームに所属することになった。201cm、95kg。最高到達点358cm。

「精神的、肉体的な能力を信じているというのが根本にあるけれど、プレッシャーが大きくスピードが速い試合展開であっても、落ち着いたプレーができる」

自身の強みについて、トレントはこう分析する。どんな局面においても冷静さを保てる選手の存在は、とくに若手が多いチームには欠かせないだろう。このほか、来日1年目のウルリックをコート外の生活面で支えてもいる。

「もちろん、アタックやブロックの読みも得意。対戦するうちに相手の特徴を理解し始め、相手がどう攻めてくるかを読めるようになる」

「キルブロックが取れなくても、少なくともタッチはするつもり。そうすれば我々には取り戻すチャンスがある」

ブロックの位置を瞬時に判断してスパイクを打ち抜く。アタッカーの挙動を冷静に読んで壁を作る。この対応力は、明確なスタッツとして表れずともチームの強み。数値を見ても、1セット平均のブロック数はウルリックと並んでチームトップの0.47となっている。

広告

協賛企業様募集中
掲載のお問い合わせはこちら

代表コーチに見い出され
プロデビューして各国で転戦

この冷静なメンタリティは天賦の才に加え、経験に裏打ちされている部分も大きいだろう。

バレーボールに出合ったのは12歳の時。学校で、ある教師から「バレーボールチームを作りたい」と声をかけられたのがきっかけだった。すっかり夢中になり、以降の6年間はバレーボールに没頭。卒業後もクラブチームに所属して競技を続けた。

ただ、それはプロとしてではない。
あくまで“趣味”としてのバレーボールだった。
本人の言葉を借りれば、“All just for fun.”
バレーは楽しいし、好き。だから続けていた。

しかし2014年、20歳のときに転機が訪れる。オーストラリア代表コーチの一人がクラブを訪れ、その際に声をかけられたという。

「すごく上手だから、トライアウトを受けてみないか?」

トライアウトに合格し、バレーボール人生が大きく動き出す。

ナショナルトレーニングセンターで7カ月間のトレーニングに打ち込み、スウェーデンに渡ってプロデビュー。以降はフィンランド、チェコ、イタリア、インドと1年刻みで環境を変えてキャリアを重ねてきた。フィンランド時代はベストスパイカー賞を2回、ベストミドルブロッカー賞を1回受賞した。

代表選手としてもコートに立ちながら、201cmの身体に経験を蓄積してきた。現在はオーストラリア代表のキャプテンを任され、国際大会でもチームを牽引。こうした経緯があるからこそ、川村慎二監督も「今シーズンはもっとリーダーシップを発揮してほしい」と期待を寄せる。

格上からの勝利に必要な要素
“冷静”と“情熱”を両手に携えて

ウルリック同様、大の親日家でもある。

VC長野に加入する前から、オーストラリア代表として12回ほど来日経験があるという。その際に好印象を抱いた――だけでなく、以前から日本の文化を深く愛していた。

とりわけアニメだ。好きなタイトルを聞くと、立て板に水のごとく名前が湧き出てくる。

「日本のアニメの中で最も長く見てきたのは『ONE PIECE』。もちろん『ハイキュー‼』、『HUNTER×HUNTER』、『鬼滅の刃』、『僕のヒーローアカデミア』も好き。とにかく、たくさんのアニメを見てきた」

だからこそ日本でのプレーを熱望していたが、外国籍枠が1人だった旧V1リーグではMBにはチャンスが回ってきにくい。そんな中でも声をかけてきたチームが、VC長野だった。

「さまざまな国でプレーしてきたけど、日本のリーグは運営組織がとてもしっかりしていて、ここでプレーできるのはありがたい。非常にハイレベルで激しい競争が毎週あり、選手として成長できる環境だと思う」

2シーズン連続で同じチームと契約を交わすのは初めてだ。「去年戦ってVC長野というチームをすごく好きになったし、SVに上がってさらに強いプレイヤーが集うリーグにもなる」。

2シーズン目を迎えたトレントの目に、今季のチームはどう映っているのか。

「昨シーズンは経験の上で他のチームと比べると足りないものが多く、レベルの高いチームとの対戦は困難だった。でも今シーズンは格上のジェイテクト(STINGS愛知)に勝ったし、堺(日鉄堺BZ)とのGAME2でも1セットを奪えた。チームとしての実力を証明できていると思う」

選手の目から見ても、その前進は明らか。
あとはそれを、「白星」まで昇華させる挑戦が続く。

11月2-3日の第3節は再びホームゲームとなり、WD名古屋を迎える。世界最速137㎞/hのサーブを放つオランダ代表ニミル・アブデルアジズを擁する難敵。サーブは相手にかかわらず、自分たちでほぼ100%コントロールできる唯一のプレー。裏を返せばニミルの強烈なサーブを妨げることはできず、受け止めてから全てが始まる。

だからこそ、なのだ。

「勝利を得るために必要なのは、たとえエースを何本か取られたとしてもコントロールできる部分をコントロールすること。ミスを恐れず自分たちの100%の力を出し続けること」

そのマインドは、どれだけ強烈な世界的スターと対峙しても変わらない。まずは己に打ち克ち、劣勢でも攻めの姿勢を忘れない――というのが勝利への蜘蛛の糸。その強靭なマインドを若きチームへ伝播させながら、虎視眈々と勝利を狙う。


SVリーグ第2節 名古屋ウルフドッグス戦 試合情報
https://vcnagano.jp/information/15791
クラブ公式サイト
https://vcnagano.jp/
SVリーグ チーム紹介ページ
https://www.svleague.jp/ja/sv_men/team/detail/461

LINE友だち登録で
新着記事をいち早くチェック!

会員登録して
お気に入りチームをもっと見やすく