ことアリが真紅に燃えたホーム開幕戦 無念の逆転負けから炙り出された成果と課題

前後半で明暗がくっきりと分かれた。フットサル最高峰のF1リーグを戦うボアルース長野。2025年6月15日にことぶきアリーナ千曲でホーム開幕戦を迎え、第1ピリオドを2-0とリードして折り返したものの、アクシデントにも見舞われて2-4で逆転負けとなった。1,118人の観衆を前に見せた成長の証と、今後の伸びしろとは――。

文:田中 紘夢/編集:大枝 令

ホームの声援を受けた紅き群れ
水を得た魚のように躍動する

「『勝ってほしい』という熱い気持ちが伝わってきた。自分たちが返すのは勝利しかなかった」

3シーズンぶりのF1に返り咲き、迎えたホーム開幕戦。バサジィ大分から加わった野口茅斗は、長野の地が持つ熱量に胸を打たれた。

推進力が持ち味のハードワーカー。立ち上がりからホームの声援に後押しされ、果敢にドリブルで仕掛けた。

7分にはフィールド最後方にいた野口が、田中智基と上林快人を経由して相手陣地へ。上林にワンツーの形でラストパスを届け、先制点を演出する。

9分にも左サイドの野口が岩本大輝とのワンツーから抜け出し、ゴール前に折り返して中村亮太の追加点をお膳立て。ホームで挨拶代わりの2アシストを見せた。

「この試合は推進力の部分が特に求められていたと思う。1週間やってきたことが試合に出せた」

持ち味を存分に発揮するニューフェイス。それは野口だけに限らない。ホームの声援を受けた紅き群れは、水を得た魚のように躍動した。

0-2と敗れた前節のシュライカー大阪戦では、トランジション(攻守の切り替え)やセカンドボールの回収が課題に挙がったが、その点においても相手を上回った。

2点を先取した後も、素早いカウンターから田中のシュートがポストを直撃。守備でもキャプテンの三笠貴史が球際で相手を吹き飛ばし、「立て」と言わんばかりのジェスチャーを見せる。 第1ピリオドは攻守にハードワークを完遂。理想的な展開で2-0と折り返した。

相手の反転攻勢に屈して逆転負け
負傷のアクシデントも乗り越えられず

しかし、第2ピリオドは厳しい戦いが待ち受けていた。

第1ピリオドとは対照的に、自陣に押し込まれる展開。「試合の空気だったり流れがどちらに傾くかというときに、チームとして踏ん張れる力がなかった」と三笠は振り返る。

サッカーではよく『2-0は危険なスコア』と言われるが、点の入りやすいフットサルにおいても当てはまるのかもしれない。

相手が反転攻勢に出てくる中で、いかに踏ん張れるか――。不運なアクシデントも重なり、力が及ばなかった。

25分、フィクソ(サッカーのセンターバックに相当)の松永翔が相手と接触して負傷交代。同ポジションは米村尚也が長期離脱中で、ここまでアラ(同サイドハーフに相当)を本職とする松永が穴を埋めてきた。

チーム最古参の支柱を欠くと、その直後に失点。代わって入った渡辺ロドリゴエイジがピヴォ(同FWに相当)の津田京一郎をマークしたが、巧みな反転からゴールを許す。

その後も30分にCKから同点とされ、32分にもパスミスから献上したFKで失点。セットプレー2発で逆転を許した。

終盤はパワープレー(GKをフィールドプレーヤーに代えての全員攻撃)で取り返しにかかったが、逆にパワープレー返しで無人のゴールに決められる。 「前後半でガラッと変わってしまった」と山蔦一弘監督。一度与えた流れを取り戻せず、2-4と敗れた。

フィクソは松永が負傷交代した中で、三笠の負担が増加。本職ではない野口をコンバートするなど、マネジメントに難しさが生まれた。

地元出身の中村亮太が今季初得点
成長の証と、今後の伸びしろと

ただ山蔦監督からすれば、「だから負けたというのは許されない」。キャプテンの三笠も「自分がやらないといけないし、それができなかった」と自身にベクトルを向ける。

若手の台頭も求められる。しながわシティから加わった21歳の渡辺ロドリゴは、本職のフィクソで初出場。1失点目に関与してしまったものの、随所にポテンシャルの高さを見せた。

「まだまだ若い選手だし、失敗もあると思う。この失敗を踏まえてどう取り組むか。我々は成長しないと試合には勝てない」

指揮官は今後の成長を促したが、それは何も彼だけの話だけではない。

立川アスレティックFCから加わった岩本大輝は、得意のドリブルで存在感を発揮。加入2年目の今野遼介も、ピヴォの位置で身体を張って奮闘した。24歳と若い2人も、成長速度を高めなければならない。

ただ得点シーンに目を向けると、光明も見られた。

第1ピリオドに挙げた2ゴールは、いずれも定位置攻撃(組織的に整った守備に対する攻撃)から。前回のF1在籍時には見られなかったような崩しで、F2での2年間の積み上げを感じさせた。

「自分自身もそうだけど、3年前とは違って良い形が多く作れている。チームとして良い連係からゴールも奪えているし、F1でも通用する強さを持っていると思う」

ホーム開幕戦で今季初ゴールを決めたピヴォの中村亮太。信州大サッカー部出身で、前回のF1在籍時はフットサルを初めて3年目だった。

当時に比べると相手に競り負ける回数は少なく、技術も向上。チーム唯一の地元出身選手として、「1点でも多く、一つでも多くの勝ちを届けられる選手になりたい」と力を込める。

開幕3連敗も、すべては自分たち次第
王者とのアウェイ戦で問われる真価

チームは開幕から3連敗。
ここまで唯一の未勝利で、最下位に転落した。
前回のF1在籍時は4シーズン連続最下位に終わっただけに、同じ轍を踏むわけにはいかない。

「勝ちながら修正できれば一番だけど、今は一つ一つ課題をクリアしていくしかない。勝つために何ができるかを突き詰めないと、このままズルズルと行ってしまう。『自分が勝たせる』という気持ちをみんなで持てるかが大事」

2アシストを決め、不慣れなポジションでも奔走した野口。F1の大分から「勝たせるために来た」中で、善戦だけで得られる満足感などない。

チームスポーツとはいえ、結局は個の集合体。若手の成長も含め、個々が変わらなければF1では生き残れない――。キャプテンの三笠はそう重く感じている。

「一人一人が何に満足して、どういう選手でいたいのか。もちろん自分はキャプテンとしてチームを良い方向に動かすけど、それぞれのマインドとか取り組み方に焦点を当てられれば、勝てない相手はいないと思う。『自分たち次第だよ』と伝えながら、良い準備をして必ず勝ちたい」

次節は王者・バルドラール浦安とのアウェイゲーム。ここまで唯一の3連勝で首位に立つ相手に、何ができるか。本当の意味での真価が問われる。


F1第3節 ボルクバレット北九州 試合結果
https://boaluz-nagano.com/result/%e3%83%a1%e3%83%83%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%95%e7%94%9f%e5%91%bd%ef%bd%86%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b02025-26-%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%93%e3%82%b8%e3%83%a7%e3%83%b3%ef%bc%91-%e3%83%9c%e3%83%ab/
チーム公式サイト
https://boaluz-nagano.com/
Fリーグ チーム紹介ページ
https://www.fleague.jp/club/nagano/

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